就業不能保険と所得補償保険の違いとは?同じだと思って加入しないように!

就業不能保険と収入保障保険、あるいは医療保険との違いについては他記事で解説したが、今回は所得補償保険との違いだ。

そして、就業不能保険と所得補償保険はかなり似た保険である。そこにある違いとは?

字が違う!

怒られるだろうから真面目に答えよう。

2つの保険で決定的な違いは給付金が支払われる期間が特に異なる。『なんだ・・・そんな程度か』と思われるかもしれないが、給付金や保険金の出方が違うということは当然保険に入る目的が異なるということだ。就業不能保険と所得補償保険を同じだと思って加入すると、『所得補償保険に入ったけど肝心なところで給付金が出なかった、就業不能保険だったら安心だったのに・・・』『就業不能保険に入ったけど保険金もらえなかった、所得補償保険なら対応できたのに・・・』ということになる。それほど2つの保険の保険金の支払われ方に違いがあるので、油断してはいけない!

そして悪いことに、就業不能保険と所得補償保険の保障内容や加入目的をきちんと理解している保険セールスやFPはほとんどいないのだ。

スキルのない保険会社の人間は『所得補償保険は損害保険会社が売っていて、就業不能保険は生命保険会社が売っている』とか言う。大学受験じゃないのだからクイズに出るような回答はいらない。消費者にとって重要なのは、『消費者にとってそれぞれどのように役に立つのか?』ということだ。

ああ、もし所得補償保険に加入しなければいけないなら損害保険会社から探さなれければならないし、就業不能保険であれば生命保険会社から探さなければならないのは事実だが、特別意識するようなことではない。

就業不能保険と所得補償保険の内容

就業不能保険と所得補償保険という似たような保険の違いを理解するために、当然2つの保険の概要くらいは知っておくべきだ。どちらかの加入を検討しているならなおさら!

就業不能保険の保障内容

就業不能保険は、『病気やケガ』などを原因として『所定の就業不能状態』となり、それが一定期間継続(60日・180日など)してから毎月給付金(10万円・20万円など)がもらえる。契約期間は『10年』、『20年』、『60歳まで』などと、比較的長期で契約する。『所定の就業不能状態』が一定期間継続(60日・180日など)してから給付金がおりるということは、言い換えれば、『所定の就業不能状態』になってから60日(180日)の間は給付金はもらえないということだ。この支払われない期間を免責期間と考えれば、免責期間を過ぎれば、就業不能状態が続きかつ保険契約が満了するまでは2年でも、20年でも給付金は受け取り続けることができる。

要するに、本当に長期間働けなくなり収入がずっともらえない場合に備える保険が就業不能保険だ。

所得補償保険の保障内容

一方で所得補償保険は、『病気やケガ』などを原因として『所定の就業不能状態』となり、それが一定期間継続(たいてい7日間)してから毎月保険金(契約時にその時の収入額の60%などと定める)がもらえる。そして、就業不能保険とは違い保険金がもらえる期間の限度が1年、または2年というのがほとんどだ。就業不能保険の場合と異なり、免責期間が7日と短く、そしてもらえる限度日数も短い点が所得補償保険の特徴だ。

就業不能保険と所得補償保険を一緒だと思って加入するとバカを見る?

就業不能保険と所得補償保険では保険金が支払われるまでの免責期間(いつから支払われ始めるか)と、支払われる限度日数(いつまで支払われるか)に大きな違いがあることが分かった。

このことは就業不能保険と所得補償保険の加入目的が全く異なることの理由となる。

『働けなくなった時に収入が無くなると困りますよね?』

生命保険セールスやFPにこのように言われたら?確かに困る。

だからと言って就業不能保険と所得補償保険からどちらか適当に選べばいいわけではない。

所得補償保険は比較的短期・就業不能保険は長期

所得補償保険は就業不能状態となってから、7日経過後から給付金が支払われ、支払限度日数はたいてい1年か2年だ。このような比較的短期間で収入の保障を必要とするのは、主に個人事業主や小規模法人の経営者だろう。個人事業主はもちろん、小規模法人の経営者は国民健康保険に加入していることが多い。サラリーマンやきちんと社会保険料を払う法人経営者は健康保険制度から『傷病手当金』が働けなくなった際に最長1年6カ月間、『過去12か月間の標準報酬月額の平均値×3分の2(わかりにくければこの1年の月給の平均+αくらいが目安と思っておけばよい)』が支払われる。しかし国民健康保険加入者はこの『傷病手当金』の制度がない。

公的保険の関係上、個人事業主等は『働けなくなった時』の保障が不利な立場にあるので、比較的短期間の『就業不能による収入の保障』を必要とする。この時所得補償保険は頼りになるだろう。生活のためだけでなく事業の運転資金の関係もあり、個人事業主にとっては短期間の『就業不能状態』であっても重大なリスクとなり得るだろう。
あるいはサラリーマンと違い健康保険の加入対象となっていない場合があるパート・アルバイトの人も所得補償保険は検討しておく価値があるかもしれない。

逆に言えば正社員のサラリーマンは健康保険に加入しているはずなので『傷病手当金』の関係上、所得補償保険に加入すると『短期の就業不能状態』で2重で給付を受けることになるので、所得補償保険に加入することはあまりお勧めできない。

そして所得補償保険は支払限度日数が1年または2年と限られているので、『就業不能となってもその後仕事に復帰できる』という状況しか役に立たない。就業不能状態になり1年・2年以上働けないままであれば、所得補償保険は給付が打ち切られてしまう。健康保険の『傷病手当金』があったとしても、やはり最長1年6カ月の給付なので、所得補償保険と同様に長期の就業不能状態には役に立たない。

このような長期間・あるいは半永久的に『就業不能状態』が続く場合は就業不能保険でないと対応ができない。

これまでの話を図にすると以下のようになる。

※所得補償保険と就業不能保険の給付金支払期間の違い

もし、あなたが個人事業主であり就業不能保険だけに加入していたら、50日程度ケガで働けなくなったとしたら、給付は何もない。

※個人事業主(国民健康保険加入者)が所得補償保険に加入しない場合

あるいはサラリーマンが所得補償保険に加入すると保障がかなり重複するのがわかる。

※サラリーマン(健康保険加入者)が所得補償保険にも加入する場合

以上のように、ひとまとめに『働けない時の保障』とは言っても、所得補償保険は状況に違いに合わせて選ばなければならないのが分かるだろう。一方、就業不能保険は代替が効かない機能なので多くの人に共通して必要になることが分かるだろう。

就業不能保険と所得補償保険をきちんと使い分けて説明できるセールスやFPは少ない

冒頭少し触れた通り、就業不能保険と所得補償保険の保障内容と加入目的の違いをきちんと理解しているセールスやFPはあまりいない。就業不能保険は生命保険会社の商品で、所得補償保険は損害保険会社の商品だ。当然、生命保険会社専属のセールスは所得補償保険など売らないし(取り扱っている場合もあるが、手数料が安いので普通は医療保険でも売ったほうが実入りがいい)、当然所得補償保険の販売経験もない。まともに知識すらないことが多い。

損害保険代理店も同様だ。

彼らは自動車保険や火災保険、賠償責任保険などが主力であって所得補償保険などという『生命保険もどき』を売ろうとはしない。知識もないことがほとんどだ。

残る望みは損害保険も生命保険も扱う保険代理店やFPだが、これらもまともに所得補償保険など売ったことはない。多数の保険会社や商品を扱う代理店やFPはそれだけ多くの保険会社の研修を受けなければならない。所得補償保険は昔『保険金支払い漏れ』の主要商品となった経緯があり、代理店が取り扱うハードルが高い。

要するに、ほとんどの保険セールスやFPはまともに就業不能保険と所得補償保険の違いを語ることなどできないのだ。

保険の販売経験すらない自称FP様がしたり顔で、所得補償保険と就業不能保険について語っていることがあるが、たいてい間違っているか、大事なことが抜けているか、そもそもそれらの保険を提案しないかのどれかだ。

よって、あなたは正確な知識を有するFPに相談するか、あるいは自分で所得補償保険や就業不能保険を選ばなければならない。もちろん相談するFPが違いが分かっているかどうかなど判断しようがない。よって事実上自分自身で所得補償保険と就業不能保険について学んでおく必要があるだろう。

心配する必要はない。あなたはここでどのような人に所得補償保険が必要な人と不要な人がいることを学んだ。一方、就業不能保険は多くの人に共通して必要な保障になることも学んだ。

もしあなたがこれらの保険への加入を検討するなら、当サイトで加入の仕方・保険料の安い会社や注意すべき点に関するコンテンツを勉強してほしい。『就業不能保険(働けなくなった時の保険)に関するあなたの疑問はすべてここで解決できる!』の記事を参考にさらに『就業不能状態に関する知識』を深めていこう。