就業不能保険と収入保障保険の違いとは?2つは全く別物なので注意!

まったく!どうして生命保険会社はこう紛らわしい名前を付けるのか!

私が保険会社勤務の頃初めて『収入保障保険』と聞いたときは、働けなくなった時の収入の保障だと思ったものだ。

『思ったものだ』ということは、収入保障保険は働けなくなった時の収入の保障ではないのだ。

収入保障保険は死亡保険の一種であり、被保険者が亡くならないと保険金はもらえない。働けなくなった時の収入の保障は就業不能保険が提供するものだ。

この違いをきちんと知っておかないと、特に大手生命保険会社の様々な保障がパッケージ化された保険に加入して、いざというときに『思っていた保障と違った・・・』などという事態になる。

さらにややこしいことに、世の中には死亡保障と就業不能状態のどちらも保障するという保険がある。そしてそのような保険は通常の就業不能保険とは保険金の支払対象になる『就業不能状態』の定義が異なったりする。

この記事では就業不能保険と収入保障保険の違いについて詳しく解説しよう。

就業不能保険と収入保障保険の違い

就業不能保険の保障内容

就業不能保険は、『病気やケガ』などを原因として『所定の就業不能状態』となり、それが一定期間継続(60日・180日など)してから毎月給付金(10万円・20万円など)がもらえる。『病気やケガ』などを原因とする、ということで医療保険と似ているが、医療保険は医療保険で就業不能保険とは違いが大きいので注意だ。

さて、就業不能保険は基本的に加入者(被保険者)が生きている間に給付金をもらう保険である。働けなくなり収入が途絶えた時には生活費に困るから、その保障として就業不能保険に加入するのだ。就業不能保険の給付金をもらっている間に加入者(被保険者)が亡くなったら、そこで就業不能保険の給付金は打ち切りだ。ゆえに死亡した時にもらえる保険金はない。
就業不能保険について詳しくは『就業不能保険の保障内容の基礎知識を徹底解説!』を参考にするとよい。

収入保障保険の保障内容

収入保障保険は、加入者(被保険者)が死亡したときにあらかじめ定められた期間の間、死亡保険金受取人に毎月(または毎年)死亡保険金が支払われる。加入者(被保険者)が死亡しないと保険金が支払われないので、加入者(被保険者)本人が保険金をもらうわけではない。死亡保険金受取人となる遺族の生活保障のために収入保障保険に加入するのだ。

このように、就業不能保険と収入保障保険では名前の意味するところこそ似ているが、『自分が生きている間の保障』と『自分が死亡した後の保障』という明確すぎる違いがある。まずはこれが基本だ。

就業不能保険と収入保障保険の違いに潜むやっかいすぎる生命保険会社の罠

ここまで書いてきたような就業不能保険と収入保障保険の違いは説明されれば明確に保障内容が異なることが分かる。『死亡する前』か『死亡した後』かで分かれているのだから。

しかしやっかいなことに世の中にはこれらの保険の機能が合わさった保険が存在する。

いや・・・単純に双方の機能を足し算しただけならまだいい。この『就業不能保障』が付いたタイプの収入保障保険や死亡保険は、対象となる就業不能状態が限られているものがほとんどだ。

例えば『がん・脳卒中・心臓病を原因とした就業不能状態』のときのみ給付金が支払わられる、といった具合に保障対象となる病気の種類が限られていたりする。

純粋な単品の就業不能保険は通常『就業不能状態の原因となる病気・ケガの種類は問わない』のが基本だ(ただしうつ病など精神系の疾患の場合は対象にならない場合がある)。複雑骨折して就業不能状態になろうと、必要なのは『医師に就業不能状態と診断されそれが一定期間続くこと』だ。極端な話、インフルエンザで医師に『就業不能状態』と診断され、それが60日なり180日なり続けば給付金は支払われるのだ(まあインフルエンザが60日・180日続くかは別として・・・)。

しかし、死亡保険とセットになった就業不能保障は支払対象となるのが特定の疾病を原因とする『就業不能状態』に限定される。このような保険に加入し、対象外の病気だったら給付金はもらえないのだ。

しかも性質の悪いことに、生命保険セールスがこのような支払条件が厳しい保険についてまともな知識がなく、おまけ効果のように『長期間働けなくなった場合にも給付金が支払われる場合があります』などと説明するものだから、顧客が勘違いするのだ。『この保険は働けなくなっても保険金があるんだ!』と・・・。そして対象外の疾病で就業不能状態で保険金請求をして『対象外です』と言われ苦情になるのだ。

私はこのような曖昧な支払条件の就業不能保険を就業不能保険とは認めていない。分かりにくさ・混乱の元となるので顧客にも勧めない。

生命保険は『必要なものを最小限で』とは常々言っているが、わかりにくさを一切排除することも重要だ。支払条件の理解で曖昧な部分を一切作ってはいけない。

就業不能保険と収入保障保険は別物!加入する際は対象となる病気の種類をよく見て!

就業不能保険と収入保障保険は、『生きている間の保障』か『死亡した後の保障か』で明確な違いがあった。

それだけならよい。

しかし、収入保障保険や死亡保険と機能がセットになった就業不能保険の場合、単品の就業不能保険とは違い、『対象となる病気』が限定されている場合がある。

要するに就業不能保険には『対象となる病気が広いタイプ』の就業不能保険と、『対象となる病気が狭いタイプ』の就業不能保険が存在するのだ。対象となる病気が狭いタイプの就業不能保険はたいてい死亡保険とセットになっている。『特定の病気を原因として・・・』などとパンフレット等に書かれていたら注意だ。

就業不能保険はこのほかにも知っておくべきことが多くある。損をしない選び方であるとか、給付金が支払われた事例など、もっと就業不能保険について知りたい人は

の記事を参考にしてほしい。