就業不能保険の保障内容の基礎知識を徹底解説!

『就業不能保険とは何?』

死亡保険や医療保険・がん保険と比べて、就業不能保険はまだ新しい種類の保険で一般的に知られたものではない。

しかし、一般的に知られた保障でないからと言って、重要度が低い保険というわけではない。というか重要度は高い。

私は常々『生命保険など必要最小限でいい!』『生命保険など死亡保険が必要になったときだけ入ればいい!』『医療保険?がん保険?何それ?おいしいの?』などと過激なことを言うほど『生命保険が必要になることなどあまりない』と言っている。しかし、就業不能保険はあなたにとって死亡保険以上に大事な保障になるかもしれない。

少なくとも知名度の高い『先進医療保障』とかまるで役に立たない保障を気にするよりかは、就業不能保険について悩んだ方が圧倒的に有益だ。

では、まだ知名度の低い就業不能保険についてどんな保険なのか解説しよう。

就業不能保険の保障内容はどんなもの?

就業不能保険は以下の条件の両方に該当した場合に給付金を出すものが一般的だ。

  1. 保険約款上の所定の就業不能状態に該当したこと
  2. 1の『所定の就業不能状態』が所定の日数継続したこと

何を言っているか分からない?

ざっくり言えば、医者に『あなたは働けるような状態ではなく、長期間の療養が必要な状態です』と診断され、それが60日だとか180日だとか1年6か月だとか継続すると、毎月給付金がもらえるようになる。

給付金の金額は『毎月10万円』とか『毎月20万円』といった具合で決められる。

もし『所定の就業不能状態に該当し、それが180日継続したら、それ以降、就業不能状態が継続している間・または保険期間満了まで、毎月20万円給付金を支払う』という契約なら、就業不能状態に該当して、ぞれが180日継続したら、毎月20万円もらえ、その後4か月後に就業不能状態に該当しなくなったら、そこで給付金の支払いは終わりだ。合計で80万円もらう計算になる。

もちろん就業不能状態が長引き、保険期間満了まで給付金をもらい続けることもありうる。例えば30歳で『保障期間65歳までの就業不能保険』に加入し、35歳の時に就業不能保険の給付金をもらい始めたとしよう。そのまま保険期間満了まで『所定の就業不能状態』のままであれば、給付金は35歳から65歳の保険の満了までもらい続けることになる。給付金総額は20万円×12か月×30年=7200万円となる。

まとめると就業不能保険の給付イメージは以下のようなものになる。

※就業不能保険の給付イメージ

ここまで見れば、それほど難しい保険ではないように思えるかもしれない。

しかし、就業不能保険の複雑なところは先に挙げた2つの条件の『所定の就業不能状態』と『就業不能状態の継続日数』がどのようなものかにより給付金の出やすさが変わるのだ。

特に『所定の就業不能状態』とはどのような状態を言うのかが保険商品によりまちまちだ。

ざっくり言えば『医師によりあなたは就業できるような状態にないです』と診断されることを言うが、あまりにもざっくりしすぎて説明不足なので、『所定の就業不能状態』が詳しくは何なのかは==を参照してほしい。

『就業不能状態の継続日数』に関しては、たいてい『60日型』と『180日型』が多い。『所定の就業不能状態』になってから、60日または180日経過しないと給付金がおり始めないというものだ。事実上免責期間なのだが、それは雇用保険だったり健康保険の補助がありうるのでそうした免責期間が設けてある。就業不能保険は長期間、下手をすれば一生働けない状態になったような状況を想定して保険が作られているので、短期間の給付は出さないとも考えられる。

それぞれの支払タイプには加入者の就業状況によって適したプランがある。ここでは給付金プランを紹介するにとどめるが、どの就業状況がどの支払タイプがよいかは==(就業不能保険の選び方)を参照してほしい。

※就業不能保険の給付イメージ(支払対象外60日)

※就業不能保険の給付イメージ(支払対象外180日)

また、健康保険の傷病手当金の制度を考慮して180日型でも給付され始めてから1年の間は給付金が半分に抑えられたプランもある(その分保険料は安くなる)。

これは、サラリーマン向けに勧められるが、サラリーマンの健康保険制度には長期療養することになっても、一定期間『傷病手当金』として給与の一定の割合が給付される仕組みになっている。その期間まで就業不能保険がそのままの金額を給付すると傷病手当金がある分、給付が多すぎることになってしまう。傷病手当金の給付限度が1年6か月であるため、就業不能状態と判定されてから180日から540日の間は給付金額が半分に抑制されたプランがあるのだ。

※就業不能保険の給付イメージ(支払対象外180日、支払開始してから360日までは給付金が半分の場合)

これはあくまで代表的な就業不能保険の形だ。保険会社によって様々な亜種があるので最終的にはそれぞれの保険会社の商品を検討するときに詳細を確認したい。

特に『所定の就業不能状態とは何か』ということと『支払対象外の期間はどのようなものか』ということを確認しよう。

就業不能保険は収入を得られなくなったときの保険である!

何となく就業不能保険の保障内容は分かったと思う。

もっとも保障内容がわかったところで、これがあなたの何の役に立つかが分からなければ意味がない。というか加入を検討する理由が見いだせないだろう。

就業不能保険はその名の通り『働けなくなった時の保険』であるが、厳密に言うと違う。

人生で最も恐ろしいリスクの一つは『収入を得られなくなること』だ。

良くも悪くも現代はお金さえあれば、とりあえず生きていくことができる。しかし病気やケガなどにより収入が得られなくなると、ほとんどの人は生活していけなくなるだろう。保険と言えば真っ先に思い浮かぶのが、誰かが亡くなった時のリスクが思い浮かべられるが、実は現代では生きていることそれ自体がリスクとも言えるのだ。感情的には納得できない話だろうが、なんとなく生きていくだけでも経済的にはリスクなのだ(私は『生きるリスク』と呼んでいる)。老後に長生きすればそれだけ多くの生活費の心配をしなければならないのと同様に、若くても病気やケガなどにより長期間収入を得られなくなれば、それは重大な経済的リスクだ。

しかもこのような『なんとなく生きるだけでお金がかかるのに収入がなくなったらどうなる?』というリスクは既婚だろうが独身だろうが、赤ちゃんだろうが老人だろうが関係なく存在する。あなたやあなたの配偶者などが病気やケガで医者に『長期間働くことができなくなるでしょう・・・』と宣告されたことを想像してもらえば、そのリスクの重大さがわかるだろう。

ハッキリ言えば、子供が小さい家庭では死亡保険に入ると思うが、一家の大黒柱が亡くなって収入がなくなるよりも長期間働けなくなることは経済的には性質が悪い。亡くなってしまうと、その人の分の生活費は下がるし亡くなってしまったのだから治療費も介護も必要ない。しかし長期で働けなくなる場合は生活費はそのままかかるし治療費や場合によっては介護の負担もあるだろう。性格の悪い人なら『○んでしまったほうが楽なのに・・・』と思うのかもしれない。残酷だがそれが現実だ。

もちろん独身でも収入がなくなるリスクは恐ろしい。亡くなれば自分や誰かの生活費など心配ないのだから、独身の人が死亡保険が不要なのはたいていの場合合理的だ。しかし病気やケガで長期間収入を得られなくなればいったいどのように生きていけばいいのか。生活保護?未来が最も怪しい制度に賭けるというなら止めはしないが・・・

このように、収入を得られなくなっても生き続けるためにはお金が必要だ。そのために就業不能保険が存在しているのだ。

ハッキリ言って医療保険などよりよほど優先順位は高い。私は医療保険の不要性については、もしあなたが私の目の前にいたら私の唾であなたの顔がびっしょりになるくらいに主張できるし、常日頃から主張している。しかし、その分就業不能保険は保険料支払能力に余裕があるなら入っておくべき保険だ。今加入している医療保険を今すぐ解約して就業不能保険に加入することをお勧めしたいくらいだ。

ここではあくまで就業不能保険の保障内容の基礎と、就業不能保険に入るための目的を解説しただけだが、引き続き『就業不能保険(働けなくなった時の保険)に関するあなたの疑問はすべてここで解決できる!』より、就業不能保険とはなんなのか、なぜ必要なのかを学び、少なくとも医療保険よりはよっぽど役に立つ保険だという理解を得てほしい。