警告!生命保険の転換は最もトラブルになりやすい見直し方法の一つだ!

あなたは、ここ最近生命保険のセールスから『今入っている保険を見直しましょう!』などという勧誘を受けただろうか。その中に『古い契約』を『転換して』『見直して』『下取りして』などというキーワードはなかっただろうか。これらは、あなたが生命保険の見直しの提案をされた際に、特に注意しなければならないキーワードだ!

それ以前の大前提として、保険会社から勧めてくるモノは全てについて疑ってかかるべきだ!

生命保険は買う側と売る側の情報格差があまりに激しい。

『今度予定利率が見直されて、純保険料部分の保険料率が高くなるので、契約年齢が上がる前に、対象の部分だけでも見直しをされた方が得ですよ!』

などと言われて、あなたは何が自分の得になるのか理解できただろうか。たぶん何を言っているかよくわからないだろう。

このような専門用語を理解するのは、一般の消費者にとってあまりにもハードルが高い。

そこで生命保険を含めた金融商品を買う際に役立つ金言をお教えしよう。

『ちょっとでもわけの分からないものは買わない!』

『私がわけがわからないと思ったら、あなたが私を騙そうとしていると判断します!』と一言添えて玄関のドアの表側にでも貼っておくと、『セールスお断り』の張り紙よりよほど効果的かもしれない。

生命保険の転換、見直しというのは特に、この『わけがわからない』が増幅される。新しい契約だけでなく、古い契約のことまで考えなくてはならない。そんな『わけがわからない』から『なんとなく分かった』という状況にして、転換契約をさせようとするのが売る側の手口だ。

悪意があれば、客を『なんとなく分かった』状態にさせた上で、売る側の自由に設計したプランを客に契約させることも可能なのだ。

『はいはい。転換ね。注意すればいいんでしょ。』程度の認識ではいけない!

転換契約とは、生命保険の契約にまつわる事の中で、最も裁判沙汰になりやすく、かつ消費者が負けやすい事例になるということを覚えておいてほしい。

本記事では、生命保険の転換とはそもそも何か、そのメリット・デメリットを見る。加えて実際にあった、消費者側の失敗事例を紹介する。そして、保険のセールス側がどのように罠を張っているかを解説する。最後に消費者として、転換などの見直し時にどう対応すればよいかをお教えしよう。

1, そもそも生命保険の転換とは何か。

始めに大前提として次の2つの用語を抑えてほしい。

・保険料(あなたが保険会社に払う、毎月(あるいは毎年)のお金)

・保険金(万が一の時(死亡や入院など)、あるいは満期時に保険会社からあなたに払われるお金)

生命保険の転換をするということは、古い契約を解約し、その解約で出たお金を利用して、新規の契約に入ることだ。

古くなったプリウスを下取りに出して、アクアを新車で買うようなものだ。

実際、セールス側も『下取り』というキーワードで説明する。

生命保険は長期間契約しているものには解約した際に、解約返戻金というお金がでてくる。解約返戻金はあなたの生命保険契約において、保険金の支払いのために存在していると見て概ね問題ない。

終身保険や養老保険などのように、将来的に確実に保険金の支払いが起こる契約は解約返戻金が高い。

逆に掛け捨て型のように保険金の支払いが起こらない可能性が高い契約は、解約返戻金が低い。

もっと簡単に言えば、貯蓄型は解約すると多くお金が戻ってくる。掛け捨て型は解約しても、あまりお金は戻ってこないということだ。

転換はこの解約返戻金を、新しい契約の保険料を軽減するために利用する。場合によっては新しい契約の保険料負担は『0円』ということもありうる。新しい契約は、その時点で保険会社が扱っている最新のもの中から選べる。

ざっくり言えばまさに下取りそのものだ。

最近では、下取りした解約返戻金を、新しい契約の保険料軽減に使わず、客側が自由に使えるお金として出す場合もある。

最終的な転換の結果としては、古い契約を解約して、新しい契約を新規で加入するのとほぼ変わらない。

2, 生命保険の転換のメリット

上で見たように、実質的に、古い生命保険を解約して、新規で契約するのと変わらない、転換という手続き。わざわざ転換という形態をとることに意味はあるのだろうか。

生命保険の転換には限定的な状況では非常に強力なメリットがある。

とても重要なことだが、世間に数多あふれる『転換は悪だ!』という情報を鵜呑みにしないでほしい。

2-1, 既得権

生命保険には加入時、健康状態、職業などの審査がある。これは新規加入・転換を問わない。持病の状況によっては、生命保険に入ることができない。

ただし、転換時には『既得権』という加入者側にとって有利な点がある。(『既得権』の用語は生命保険会社の社内用語に近い)。どんな権利かというと、下取りされる古い契約の保険金の契約金額内なら、格段にやさしい条件で健康状態・職業の審査を受けられることだ。

例えば、あなたは今、下記のような生命保険・医療保険に入っていたとしよう。

死亡保険金 5千万円 入院日額1万円 期間はいずれも10年。

あなたは、転換を検討するにあたり、上記の契約を下取りに出す。新しい契約は、死亡保険金5千万円、入院日額1万円までの契約なら、健康状態の審査の基準はかなり緩くなる。

どれくらい緩くなるのかは各保険会社の基準によるが、私が保険会社に勤めていた頃の一つの基準を出そう。(必ずしも審査に通るわけではないし、今は基準が変わっていることもあり得るのであくまで参考として。)

全く新規で生命保険に加入する人は、新規で契約する際、過去10年以内に胃がんを発症・再発などしていたらまず審査は通らない。

それが、転換で先に述べた既得権を利用するとどうなるか。過去5年以内に胃がんを発症・再発していなければ、死亡保険は無条件で加入できるかもしれない。医療保険も『保険料割増』や『胃の病気は保障しません』などの条件は付くが、加入できる可能性はある。

2-2, 健康状態が悪い人には転換は有力な生命保険の見直し方法

このことが、加入者側にどのように役立つのか。

先の契約の例で考えると、古い契約は期間が10年で効力が切れる。

すでに胃がんなどの大病を患ってしまった人は、残念ながら死亡リスクや入院するリスクは非常に高い。このような人は、逆に保険を可能な限り長く続けたいし、保険金も落としたくないだろう。

ここで転換を利用し、契約期間10年の契約を終身保険の契約などに変更するのだ。

非情かつ残酷に言ってしまえば、胃がんを患った人は、高い保険料を払ってでも終身保険にすれば、おそらく払った以上の保険金がいずれ返ってくるだろう。(本人には返ってこないが・・・)

健康に不安があればあるほど、なるべく多くの保険に入りたいものだ。これが、解約してから新規で入り直すという手続きだと、既得権は消滅しているので、保険加入の審査はより厳しいものになるだろう。すでに大病を患ったことがある人、持病がある人などにとって、転換手続きは生命保険の重要な見直し方法の一つとなる。

がんなど明らかな大病だけではない。うつ病などの場合にも見直しを検討する際に効果的な方法である。

うつ病でも生命保険の転換を利用すれば見直しができる!

2-3, 安易な『生命保険の転換=悪』の判断は危険

生命保険会社の内部に勤めたことのない、保険代理店やフィナンシャルプランナー(FP)などはこういうだろう。

『転換にメリットなどない!実質、解約してから新規で入るだけなのだから!』

一部にはメリットはある!という解説をしているFPも見かけるが、詳しく解説しているところはほぼない。既得権という規定は、保険会社の、それも契約を審査する部署のみが保有する表に出てこない内部情報だ。
保険を売るためだけの教育を受けている保険代理店などが詳しくわかる類の情報ではない。

もし、あなたが健康に不安があり、保険代理店に相談していて以下のようなことを言われたら、FPの能力に疑問を持った方がいい。

『転換するのはやめて、古い保険会社の契約は解約して、こちらで新しく契約したほうが保険料がかなり安くなりますよ』

賢明なあなたは、保険の見直しは必ずしも、保険料の安さだけで決まるものではないということを覚えておいてほしい。

3, 生命保険の転換のデメリット

注意してほしいが、ここで語る生命保険の転換のデメリットとは、実はデメリットとは言い切れない。メリットでもあればデメリットでもあると言える。『昨今の経済情勢下ではデメリットになりがちだ!』という風に抑えてほしい。

明確なデメリットは下の記事で解説している。

生命保険の転換における1つしかないデメリット!ただし非常に強力!

3-1, 生命保険の予定利率とは?

生命保険には契約毎に予定利率というものが設定されている。これは、加入者が支払った保険料を、保険会社がいくらのリターンで運用するかをあらかじめ定めたものである。予定利率は、生命保険を加入した瞬間に定まり、その契約が消滅するまで変わらない。

保険会社は大量の加入者から、大量のお金を預かる。保険金の支払いが起こるまで、ただ資金を寝かせておくわけではない。株や国債、貸付や不動産投資などを行い、資産運用しているのだ。その資産運用から得られるリターンを考慮して、加入者が支払う保険料を割り引く。
この割引率が予定利率だ。

保険会社が実際に資産運用をした結果、リターンがこの予定利率を上回れば、保険会社の利益となる。下回れば保険会社の損失だ。

予定利率は高ければ高いほど、保険会社は資産運用で好成績をあげなければならないので、苦しい。逆に加入者側にとっては予定利率は高いほうが有利だ。

まとめると以下2点だ。

保険会社にとっては予定利率は低いほうが有利だ!!
加入者にとっては予定利率は高いほうが有利だ!!

3-2, 予定利率の決まり方

予定利率は経済情勢に応じて保険会社が決める。資産運用で成績が出せないような経済情勢では、予定利率は低くなる。

ちょっとでも、経済情勢に詳しければこう思うだろう。

『今(2017年3月)は結構株価も高いし、運用成績はよさそうだから、予定利率も上がってよさそうじゃないか!』

残念ながら、予定利率は国債の利率に強く影響を受ける。保険会社の運用は多くの割合が国債に頼っているからだ。マイナス金利などという国債の状況では、予定利率はどうしても低下してしまう。

参考に過去の予定利率の推移を挙げてみよう。

適用期間 予定利率
1946.3 ~ 1952.2 3%
1952.3 ~ 1976.2 4%
1976.3 ~ 1981.3 5% ~ 5.5%
1981.4 ~ 1985.3 5% ~ 6%
1985.4 ~ 1990.3 5.5% ~ 6.25%
1990.4 ~ 1993.3 5.5% ~ 5.75%
1993.4 ~ 1994.3 4.75%
1994.4 ~ 1996.3 3.75%
1996.4 ~ 1999.3 2.75%
1999.4 ~ 2001.3 2%
2001.4 ~ 2013.3 1.5%
2013.4 ~ 2017.3 1%
2017.4 ~ 0.25%

もうかれこれ30年近く予定利率は下がりっぱなしだということを抑えてほしい。

転換によって予定利率はどうなるのか。

先ほども少し触れた通り、予定利率は一度生命保険を契約してしまえば、その契約が消滅しない限りは変わらない。

しかし、生命保険を転換することにより、古い契約は消滅する。つまり、予定利率は古い契約の利率から、新しいものに変わる。

ここ30年の予定利率の傾向を考えれば、転換することでどうなるのか。古い契約の予定利率に比べ、新しい契約の予定利率は下がってしまうことだろう。

これは、保険の内容が全く同じで契約年齢すら同じであったと仮定しても、転換することで加入者側に不利になる。

古い契約なら、1000万円の終身保険は保険料を総額で300万円払えばよかったのが、転換後は900万円払わなければならなくなったということもあり得る。

普通、終身保険を転換して、終身保険にする無意味なことはセールス側もしないと思うが、予定利率が変わることでこれくらいの差が出るのだ。

3-3, まさにバブルの遺産!高予定利率の『お宝保険』

バブル期以前に契約された、終身保険や年金保険などは『お宝保険』などと呼ばれる。

これらは予定利率が6%前後だった時代のものだ。

私の母などは、『バブルのちょっと前に契約した年金保険が総額で200万円払うのだったかな?それが年金額70万円で10年間もらえるはずだった』と言っていた。じつに払った金額の3.5倍が返ってくる計算だ!(『はずだった』と言ったのは、母が契約した保険会社が倒産して、年金額を一気に削減されたが、それでも払った総額の1.2倍くらいにはなったそうだ。)

恐れ知らずなことに、このような年金契約に対しても転換を進めてくるセールスはいる。

生命保険の転換で超高利率の契約を無価値にされた

私は保険会社に勤めている頃、この手の転換のセールスは一切しなかった。

まともに勧めたら、説得できる気がしないからだ。

3-4, 保険会社が熱心に終身保険の転換を勧めてくる理由

保険会社の内部では、このような『お宝保険』を転換するよう、営業ノルマまで設定している。

理由は簡単だ。

『お宝保険』は保険会社にとって損失の源でしかない。速やかに『お宝保険』の残高を減らしたいのだ。

当然、『お宝保険』の転換に成功したセールスには高い報酬が支払われる。客の方など全く見ていない。

私は保険の営業現場にいたころよく抗議した。

『こんな客に不利と分かっている保険を売れる気がしない。』

上司・同僚の反応は・・・

『予定利率の高低ではなく、お客様のニーズが第一だ。医療保険にニーズがあるかもしれないし、差し迫った資金ニーズがあるかもしれないだろ?だからおすすめするんだ。』

これは、実際あった本当の話だ。

保険を買う側に、医療保険の強いニーズなどほぼない。いつだって、保険というものは、無理やり売り込むものなのだ。また、放っておけば、解約返戻金が今では考えられない高利率で増えていく『お宝保険』をわざわざ現金化するほど、差し迫った資金ニーズがある人など、倒産寸前で資金繰りに四苦八苦している企業の社長くらいだ。

4, 転換で失敗した例

営業で客回りをしていると、転換にまつわる阿鼻叫喚はところどころで目にする。自社商品、他社商品問わずだ。

自社の場合は当然、顧客にきついお叱りを受ける。

例えば以下のような例だ。

①『終身保険が1千万あったはずなのに、気づいたら医療保険だけの契約にさせられていた。解約返戻金もほとんどない!』

②『医療保険が保険料を払わずに入れると聞いたから転換したのに、終身保険がなくなるとは聞いていない!しかも80歳から医療保険の保険料を払わなくちゃいけないってどういうこと?』

①の例は非常に多い。契約明細を見ればその手の転換をしたことはすぐわかる。

転換した後の契約に、まだ下取り価格が残っているからだ。

いったいどういう説明をすればこういう事態になるのか。

客側が忘れていたということもあるが、こちらの説明がおかしかった場合のほうが多い。

②の例に至ってはさらに意味不明だ。

80歳から再び保険料がかかるとは・・・だが、契約明細を見ると確かにそのようになっている。

残念ながら予定利率が低くなったことはほとんど理解されていない。

本当に客側に不利になった点は予定利率の件なのだが・・・

他にもとんでもないトラブル事例が多くある。

詳しくは下記の記事を参照してほしい。

もはや詐欺!生命保険の転換をすることは裸で地雷原を歩くようなもの!

生命保険の転換におけるトラブル事例!

生命保険を転換したら騙された!

生命保険の転換についてもっと多く知りたい人はこちらに戻る

5, あなたができる対策!転換を勧めてくるセールスの話を真に受けてはいけない!

転換を勧める側のセールスは、悪意を持って勧めてくる場合から、セールス自身よくわかっていないまま勧めてくる場合まで幅広い。

恐ろしいことに、生命保険のセールスというのは、非常に知識レベルが低い。これは、最近流行りのショッピングセンターに入っているような保険代理店でも同様だ。中には保険金と保険料の用語の使い分けすら怪しい人間もいる。

本当に保険に詳しい人間など5%くらいだと思ったほうがよい。

また保険に詳しい人間でも、善意ある人間ばかりではない。

客側が何も知らないことをいいことに、平気で嘘をついて売りつける人間もいる。嘘をつけば、保険は本当に簡単に売れる。また保険というのは嘘を覆い隠すのに適して作ったかのように複雑だ。

あなたができる唯一の対策は、保険を勧められたら必ず、違う保険会社の人間やFPなどに意見を聞くことだ。

『保険の見直しどうすべきか分からない人はFPの無料相談をまず受ければ解決する』