今回の話は私が実際に生命保険に関する相談を受けた際の実際の事例だ。
相談の生の現場に触れると、反面教師にするような入り方をしている人もいるし、すばらしい考えの持ち主もいる。
そうした事例に触れてあなたの生命保険選びの参考にしてほしい。
今回はとある新卒で社会人になったばかりの人(仮にAさんとする。女性)の事例だ。
きっかけは顧客の親からの相談
もともとAさんは、彼女の親からの相談が始まりだった。
Aさんが大学を卒業し勤め始めるというので、生命保険の見直しの相談を受けた。
とんでもないほど多くの保険料を支払い続けてきたAさん両親だったが、もう払ってしまった過去は変えられない。
掛け捨ての大きな死亡保障はもう完全に不要になったので、それを0にすることをアドバイスし、これ以上余計な生命保険に加入したりせず、生命保険以外で資産運用をするよう提案した。
話の流れで、Aさん本人の生命保険の話になった。もちろん社会人になったばかりで未婚の人に生命保険など不要だから『まだ新卒の時点で結婚したり子供がいないのに生命保険など必要ない』ことを言ったのだが、Aさん両親は『どうしても見てあげてほしい』などと言う。この両親は私の話を理解していなかったのか、私の伝え方が悪かったのか、それともAさんに『生命保険など不要という事実をしっかり教育しろ』という意味なのか。
ともあれ、後日Aさんとも会うことになった。
親(社会人28年目)よりしっかりした生命保険知識を持つAさん(新卒社会人)
実際に会うとAさんは実に面倒くさそうだった。『うるさい親がなんかセールスに会えって言ったから仕方なく』という雰囲気だ。実際、他人から見たら私などほとんど生命保険セールスと変わらない。まあ初対面の人がセールスと会えばこのような反応は日常的だから慣れたものだが。
とは言うものの、私としても『生命保険など新卒社会人が入るようなものではない』と思っているのだから、いったいなんの面談なのだろうかと奇妙な状況に困惑していた。
私は率直に聞くことにした。
私『おかしな話ですが、なんでAさんは私と面談しているんですか?』
Aさん『?親が生命保険の営業の人に会えって言ったから・・・です。』
こちらが率直なら向こうも率直だ。ちなみに私はあくまで生命保険を売るつもりのないFPなのだが、まあそれはいいか。
私『やっぱりそうなりますよね。私からも新卒入社したばかりの社会人に生命保険なんて不要だから会ってもあまり意味がないとご両親には伝えたのですが・・・』
Aさん『え?生命保険の営業の人がそんなのでいいんですか?』
Aさんは目の前の営業の人(営業ではないが)が物を売る気がまるでないことに困惑しているようだった。一応親の顔を立て生命保険の営業トークを聞く気ぐらいはあったようだった。
私『いいもなにも、不要な人に生命保険を売りつけたらあとあと苦情になったり面倒なことになるリスクもありますし。』
Aさん『やっぱり私には生命保険はいらないんですね?』
私『そうです。全く不要です。』
Aさん『そうだと思ってたんです。親に何百万円も何千万円もお金残したってしょうがないですよね!』
私が教えるまでもなかった。すでにAさんは分かっていたのだ。生命保険は入る必要がない人なら加入しなくてよいのだ。Aさんの反応に興味が出た私は医療保険についてどう思っているか聞いてみた。
私『ちなみに医療保険は必要だと思います?』
Aさん『医療保険って入院したときとかにお金もらえるやつですよね?まだそんなに病気とかする年じゃないし、健康保険があるからそんなに入院してもたくさん払ったりしないんですよね?それなら医療保険なんていらないんじゃないですか?』
医療保険についても完璧だった!Aさんは生命保険も医療保険も今の自分には不要だと完璧に理解していた。
私『その通りです。ところで、なんでそんなに生命保険がいらない理由を知っているんですか?』
Aさん『今日、セールスの人と会うって言うから断る理由を考えていて色々調べたんです。』
きちんと勉強している人だった。世間の人がみんなこうだったら、私のような生命保険相談業務を手掛けている人は絶滅してしまうだろう。よくよく考えると私にとっては自主的には勉強しない人が多いほうが都合がいいと思ってしまった。
結局、すでにAさんは彼女にとって完璧な生命保険(0円)に入っていた。
それでも世間の平均は気になる
Aさん『一応聞きたいんですけど、私みたいな新卒の人ってどれくらいの生命保険に入っているものなんですか?』
ああ・・・来た。NGワード『平均』!
まあ、Aさんは分かっている人だから本当に知識として知りたいだけだったのだが。
私『新卒の人は、結婚していたり子供がいなかったりすれば基本的には生命保険は不要なんですが、入ってすぐ職場に張り付いている生命保険セールスの人に加入させられたりします』
Aさん『ああ!うちの会社にもいます!』
私『そういう人から不要な保障に加入させられて、毎月1万円近く払っているのが、新卒で加入している人では平均的ですかね。支払いが厳しいから加入しない場合もありますが。』
Aさん『不要なんだから入らなければいいのに』
私『全くその通り。不要だから入らなければいい。でも平均とか言う言葉に惑わされて入ってしまう人も多いんですよ。Aさんみたいにきちんと勉強していれば、生命保険の平均なんて何も考えていない人たちの平均だと分かるんですよ。』
Aさん『やっぱり、私は今後も自信を持って断っていいわけですね?』
私『そうです。さっき私に言った理由をそのままセールスにぶつければいい。「若いうちの方が保険料が安くて得」とか意味のわからないことを言ってきたりしますが、若いうちは保険金を支払う事態が少ないのだから安くて当たりまえなんです。それでもしつこいようだったら最強の断り文句をお教えしますので、これをセールスに言ってあげてください。』
Aさん『どんなのですか?』
私『「おばさんが生命保険の営業の仕事をやっていて、その人から入っているから他では入れない」です。生命保険セールスは親族から加入しているものをひっくり返そうとする人はほとんどいません。もしそれでも食い下がるようだと、苦情になるからです。実際苦情を言ってもいいくらい。どうせ親族の構成なんて他の人には確認しようがないのだから、この断り文句で上司とかから生命保険に入るよう仲介があっても大丈夫です。』
Aさん『そうなんですか!いつもしつこくて困ってたんで、今度それを言ってやりますね!』
新卒の社会人に生命保険など不要!
社会人になると職場に生命保険セールスが昼休みなどにまわってくる場合がある。新卒社会人はセールス達にとっては絶好のカモだ。生命保険など何も知らない人がほとんどだからだ。まあ年配の人でも生命保険のことなどよく知らないのだが。
しかし、Aさんのように自分で勉強して見事に余計な生命保険に入らないことに成功している人もいる。『なんとなくいらなそうだから入らない』ではなく『こういう理由で不要だから入らない』でなければならない。そうでなければ、『友人・知人が生命保険に加入した』などという話を聞くと自分も入らなければならないような気がして、うっかり無駄な生命保険に入ってしまうことが多い。
そうではなく、むしろ生命保険のことを勉強したあなたは周囲の友人・知人が無駄な生命保険に入らないよう助言してあげるくらいでなければならない。そうすればあなた自身も無駄な生命保険に加入することはないだろう。
幸い、生命保険セールスの営業トークに負けない鉄壁の断り文句があるわけだから、生命保険が不要な理由とともにセールスに叩きつけてあげるとよい。
逆に生命保険が(とても機会は少ないが)必要になるときもある。その時も選び方を間違えないようにしたい。少なくとも生命保険セールスを呼びつけて話を聞くなど最悪だ。やはり無駄な保険料を支払い続けることになるだろう。
生命保険が必要になったときもまずは勉強だ。当サイトではそのあたりも勉強できるコンテンツを作成している。
いつ生命保険が必要になるのか、どのくらい必要なのか、生命保険会社の選び方から、どのように申し込めば最も保険料負担を抑えられるのかまで。
今は必要ないと思っているあなたでも、最低限『いつ必要になるのか』は知っておいた方がよい。そうでなければ生命保険セールスのいいなりだ。