あなたが出会う、生命保険のセールス。
その人の生命保険の専門家としての質は本当にピンキリである。大多数は低レベルな方に固まっている。
今、あなたの目の前で生命保険の担当者が何かを説明している場面を想像してみてほしい。
目の前にいるセールスは、生命保険について何かもっともらしいことを言っているように見える。
あなたは、医療保険の内容について気になった。
そして質問をする。
『出産のときの保障が気になるんだけど、帝王切開なんかの手術でも保険はおりるの?』
きちんとしたセールスなら即答だ。
自社商品で帝王切開の際に保険がおりるのかおりないのかなど即答できないならば問題だ。
しかし、あなたの目の前のセールスは一瞬考える。
そして言う。
『おりると思います・・・』
契約事において、『思う』などという表現は論外だ。
そのセールスはまったく信用ならない。セールスの名刺にはなにやら多くの資格が書いてあるにもかかわらずだ。
残念ながら、生命保険の営業現場にはこのような事例はいくらでもある。
あなたはセールスが保持している資格など、こけおどしにもならないということを知っておいてほしい。そして、生命保険のセールスでまともにコンサルティングができる人など、1割もいないということを知っておいてほしい。
ここでは、生命保険の営業に関わる資格について解説し、特に役に立つ代物でないということをお教えしよう。そして、本当に信頼できる専門家とはどうすれば見つかるのか、そんな人がいなかったらどうすればよいのかを解説する。最後には、本論とはずれるが、これから生命保険の資格試験を受けようという人にとても伝えたいことを書く。
生命保険を売るために必要な資格
生命保険を売るためには、業界団体が実施する『一般課程試験』というものに合格しなければならない。
試験などというと仰々しいが、多少学歴がある人ならば一夜漬けで十分受かる。生命保険会社に新卒・総合職で入るような人なら、ほぼ一夜漬け、2日かければ完璧に受かる。その程度の資格試験だ。人によっては1夜漬けで受かるようなレベルの試験が、実際の営業現場で役に立つわけがない。実際、役に立たない。
さらに、上級の試験として『専門課程試験』『応用課程試験』『生命保険講座』『大学課程試験』などがある。『専門課程試験』『応用課程試験』はやはり一夜漬けでなんとかなる。一夜漬けでなんとかならない人も3日かければ十分受かる。
このような試験もやはりセールスの生命保険に対する専門性を証明するものにはならない。
『生命保険講座』『大学課程試験』などはさすがに一夜漬けでは合格できないが、内容がもはや学問で、営業現場で客に説明して理解をもらう類の知識ではない。
生命保険のコンサルティングができそうな資格、フィナンシャルプランナー
より、世間に一般的に知られている資格としてフィナンシャルプランナーの資格がある。
これは、生命保険だけに限らず、損害保険、税金、不動産、投資など、お金にまつわる様々な知識を習得していることを示す資格だ。1級から3級まで存在している。
さてこの資格の権威はどうか。
フィナンシャルプランナー3級の試験は1夜漬でなんとかなる。2級に関しても5日勉強すればなんとかなる。1夜漬でなんとかなったよ?という友人もいたが、私には無理だった。
その程度のレベルの2級も3級もあまり資格として信頼性があるとは言えない。
1級になると、実技試験(実際に試験官の質問にたいして、金融知識を答えることになる)があるし、学科試験もレベルがあがる。1級の資格がある人はそれなりに、能力があると考えてよいだろう。
生命保険の専門家として、顧客の信頼を得るには結局のところ実務経験が必須。
上でみたフィナンシャルプランナーも、1級を持っていたとしても、顧客に専門的なアドバイスをするには実務経験が必要だ。
実務経験とは何か?
まさに生命保険を売った経験だ。不動産について専門的なアドバイスをするには、不動産を売った経験が必要だし、税金のアドバイスをするには税理士での活動経験が必要だ。
何が言いたいのかというと、フィナンシャルプランナーの資格だけではなにも役に立たない。テレビで無責任にコメントする自称評論家と大差ない。
私の例で言うと、売ったことある金融商品は、生命保険、損害保険、投資信託だ。株、債券、為替なども投資信託を売る際に必須の知識だし、自らの投資経験も長いのでアドバイスが可能だ。しかし、不動産はあまり自信がない。住宅ローンの返済や、ローンの組み方ならば大丈夫だが、実際に土地や住宅の売買で何を気を付けるのかは勉強しなければならない。
私もこのように、苦手な分野、知識が少ない分野がある。
フィナンシャルプランナーとかいう一見、耳触りのよい言葉に惑わされて、相手を金融の専門家などと思うととんでもないことになる可能性があるということだ。
『フィナンシャルプランナーです』などと偉そうに言う人が目の前にいたら質問するとよい。
『あなたが売ったことのある商品はなんですか?』と!
たいていは生命保険、または損害保険に限定される。
そもそも、不動産の売買をする人や、税理士などは自らをフィナンシャルプランナーなどと名乗らない。『不動産屋です』『税理士です』と言ったほうが、一般的には専門家だと認識してもらえるからだ。
『フィナンシャルプランナーです!』と名乗る人は、たいてい保険屋さんだと思ってよい。
結局、生命保険の専門家として信頼できる人ってどんな人?
もっとも信頼性が高い人のは、フィナンシャルプランナーとして、有料相談を行っている人だ。
彼らは保険を売らずに、自分のアドバイスを売っているのだ。
彼らは自らの豊富な知識を、顧客に、論理的にわかりやすく納得させ、顧客の課題を解決し、顧客の役に立つことでお金をもらっている。
お金をもらうには、顧客に信頼されることが絶対条件だからだ。
有料相談のFPの知識の深さ、抑えるべきポイントの認識は、私もいつも勉強させてもらっている。
『本当に消費者に必要な保険ってそんなものだよな!』などと納得している。
一方、保険会社のセールスは生命保険の専門家かもしれないが、信頼できる人ではない。
彼らは、自社の保険を売ることで給料を得ている。
極端な話、『保険が売れれば客のことなどどうなろうと知ったことではない!』という生命保険のセールスもいる。
仕事をする目的が保険を売る、ということにある以上、消費者とは常に対立関係にあると思ってよい。
信頼できそうな風を装うのも、すべては売るためだ。
以下は生命保険業界へ足を踏み入れようとしている人向けだ。
これから、生命保険の一般課程試験などを受けようという人へ
生命保険のセールスになるという人
今、ここを読んでいるあなたは、生命保険会社に入ったばかりで、これから何をするのかわからない人かもしれない。
なんとなく生命保険のセールスに連れてこられ、なし崩し的に自分がセールスになろうとしているのかもしれない。
そして、件の一般課程試験を合格するために勉強しているかもしれない。
本当に生命保険のセールスになって生計を立てようと言う人は止めはしない。
読むのはここまででよい。
だが、そこまでの決意でない方、例えば、
『パートをやめてしまったから、代わりに少しの収入になればいい。』
『生命保険の営業の人に熱心に誘われたから来た。』
『生命保険会社の事務の求人に応募したはずなのに、説得されて営業をやろうと思っている』
という気持ちの人。
最大限に強く言う!!やめた方が良い!!
生命保険のセールスというのは、生半可な気持ちでできる仕事ではない!
生命保険のセールスというのは、世の中で最も顧客に、鬱陶しがられるセールスの一つだ。
なぜなら、人が普段必要と思っていないものを売り込むからだ。
また、大手の生命保険会社、日本生命や第一生命、その他大手でなくともよい。
俗に言うところの生命保険のセールスレディになろうとしている人。
他の仕事を探したほうがよい。
セールスレディが未だに保険を売っている会社の保険商品は、著しく商品の価格競争力が低い。
端的に言えば保険の値段が高いのだ。
あなたは、まったく同じ品質、同じ銘柄であるお米5kgが、A店では2,000円、B店で1,000円で売っていたとしたらどちらで買うだろうか。
まったく同じ冷蔵庫がA店では10万円、B店では5万円で売っていたら?
生命保険というのは一番安い会社と一番高い会社でそれくらい価格の差がある。(一般の人は意識すらしていないが・・・)
そして、今あなたがセールスレディとして入社し、セールスになろうとしている会社は、たいてい価格の高い生命保険会社だ。
あなたは、無意味に値段だけ高い生命保険を、安い他社と対抗し、いったいどうやって顧客に売るのだろうか。
たいていは親戚、友人など縁故を頼ることになるだろうが、そんな高いとわかっている商品を勧められた人はあなたのことをどう思うだろうか。
ましてや、あなたと全く面識がない新規の顧客だったら?
売る自信がないなら今すぐ!やめた方がよい。
今すぐ会社に『一般課程試験を受けるのをやめます』というのだ。
気に病む必要などない。
生命保険会社はある程度、試験直前になってセールスになるのをやめる人がいるのは考慮に入れてある。
『他にいい仕事が見つかった』などとでも言っても良い。
そこまでの覚悟がないまま生命保険の営業の仕事をすると、ヘタをすると、あなたの生活は将来的に壊れると思ってもよい。
生命保険会社に総合職で入社する新卒の方たちへ
今、あなたは新社会人生活を始めるにあたって、自分が生命保険会社で何の仕事をしていくのだろうと期待と不安でいっぱいだろう。
さしあたってあなたがやるべきことは、まず真っ先に一般課程試験の合格だ。
いや・・・一般課程試験に限らず、専門課程、応用課程、FP資格をとりなさい!などと会社から今後言われるだろう。
とっても大事なことを言う。
全ての試験は一発合格しなさい。
なぜなら、人事評価に影響するからだ。
いくらいい点を取ってもプラス評価されることはないが、試験に落ちると直ちにマイナスだ。
本社部門で人事部はいつもあなたたちの仕事ぶりを見ているわけではない。
人事の立場になって考えてみればわかる。
同じ程度の人事評価のAさんとBさんがいて、Aさんは試験をすべて一発合格している、Bさんはちょくちょく再試験を受けている。
あなたは、どちらの人を人事評価として高評価をつけるだろうか。
特に、いつまでに合格しなさい、と言われている試験を期限までにできないと、昇格(また昇給に)影響する。
会社からとらなければならないと指定されている試験など、たいして難易度は高くない。
生命保険関連の資格で言えば冒頭の通りだ。
生命保険会社に勤めたことのある先達として、アドバイスする。
試験はかならず一発合格!
生命保険業界に関わる上でどんな資格があるかは『生命保険の資格の種類は何がある?役にたつものから役に立たないものまで徹底解説』を参照してほしい。