あなたは生命保険と医療保険の違いを正しく理解しているか?

あなたは、新しく生命保険に加入するため保険の情報について調べているかもしれないし、医療保険を見直すために、情報を集めているのかもしれない。しかし、あなたは結局のところどんな保険に入ればいいかよくわからないことだろう。そして、保険とはどんなものがあるのかもよくわからないだろう。

安心してほしい!たいていの人はそんなものだ。

そして、注意してほしい!そのままではマズイ!!

生命保険や医療保険はそもそも複雑になるように作られている。生命保険に特約という形で医療保険が付き、さらに他の特約でがんの保障がついたりする。これで、実際に15日入院したら、いったいいくらの保険金がおりるのか、計算するのは、慣れない人にとっては1000ピースのパズルを解くのに近いかもしれない。

あなたは正しく生命保険や医療保険の種類を理解する必要がある。

売り手のいいようにされたくなければ!!

ここでは一般的にどのような保険の種類があり、かつそれらをどのような時に加入の検討をすればよいか簡単に解説しよう。

1, 生命保険

生命保険のカテゴリの中に医療保険を混同する人がいるが、まったく関係ないので注意してほしい。

生命保険とは、命に関する保険。保険がかかっている人が、死亡したときに保険金が払われる仕組みだ。一般的に生命保険は死亡の理由が、事故死か病死かは問わない。

もちろん加入したからといって、死ににくくなるわけではないし、解約したからと言って死にやすくなるわけではない。当然のことを言ったが、生命保険を解約したり減らしたりすることをやたら不安がる人がいるのも事実だ。

曰く『生命保険を減らすと、そういう時に限って何か起こりそうで嫌だ!』

このようなことを言う人は、生命保険に加入するときには、きっと渋ったはずなのに・・・・

さらに、生命保険には概ね3つのタイプに分かれる。

1-1, 定期保険

保険の契約期間が定まっている。満期でも特にもらえるお金はない。

契約期間の間に、保険がかかっている人が死亡してしまったら、保険金がおりてくる仕組みだ。保険金の契約額も契約時に定める。

冷たい言い方をすれば、保険がかかっている人が死亡してしまったら、お金がもらえるが、何もなかったら保険料(保険会社に支払う毎月(毎年)の掛け金)は全て掛け損だ。

いわゆる掛け捨て型と言われる保険のことだ。

保険契約期間中に、保険金の契約金額が増えたり(逓増定期)減ったり(逓減定期)するタイプの保険もある。逓増定期は一般には利用されないが、逓減定期型は保険料の節約方法の一つとして広く利用されている。

私は、保険会社の存在意義はこの掛け捨て型の保険にあると言ってもいいと思っている。

保険とは、万が一の事態に、自分では対応することができないリスクを、代わりに保険会社が負担してくれるという機能が唯一・最も重要な機能だ。

あなたが亡くなってしまって経済的に困窮してしまう家族がいる場合は、生命保険の加入が必須だ。

どういうことが例を挙げよう。

あなたは住宅ローンを3000万円組んで家を買うとしよう。

家族の収入・そしてローンの返済の原資は、あなたが働いて得たお金が頼りだ。

ここで、あなたが突然の事故で死亡してしまったらどうなるか・・・

毎月のローンの返済であなたの家庭には貯蓄は200万円しかない・・・

稼ぎ頭であるあなたを失い、家族は家を維持するため、なんとかローンを払おうとするだろう。

しかし、貯蓄が200万円ではまったく焼石に水だ。

あなたの残された家族は、ほどなく家を手放すことになるだろう。

ところがここで3000万円の生命保険があなたにかかっていたらどうだろうか。

あなたが死亡してしまった事実は悲しいことだが、残された家族は生命保険3000万円の保険金でローンを完済することができる。

家を失うことはないのだ。

保険を入らずに万が一の場合のローンの返済原資を貯めておくのはかなり難しい。

なにせ金額が金額だ。

残された家族の生活費の問題もあるだろう。

とても貯蓄などという方法では、この大きなリスクに対応することはできないのだ。

一方、もし上記の例で、家族の中であなたの他に、毎月のローンの返済資金と生活費を稼ぐことができる人がいたらどうだろうか。酷な言い方になるが、あなたが亡くなってしまっても、家族は住む家や生活にすぐに困るわけではない。

このように、あなたが死亡した際のリスクに他の家族で十分に対応できる場合は、あなたが生命保険に加入する必要はないのだ。もっとも、残された新たな稼ぎ頭の人には生命保険をかける必要がでてくるかもしれないが・・・

実際には、住宅ローンを組む際には銀行から団体信用生命という生命保険を加入するようほぼ強制される。そうでないと、住宅ローンを組むのは非常に難しい。

1-2, 終身保険

契約期間が終身、つまり一生涯保障が続くという生命保険だ。

医療保険にも終身のものがあるが、終身保険という場合は、たいてい死亡に対する保障が終身続くという保険のことを指す。

保障が一生涯続くということは、人が必ずいつかは死ぬものである限り、必ず保険金の支払いは起こる。もちろん保険金をもらうのは、亡くなった人の遺族だが。

いつかは必ず保険金の支払いが起こるので、保険会社はあなたが支払った保険料を終身保険の契約に溜め込んでいる状態になる。終身保険を解約した場合、その契約にたまっている金額を解約返戻金として受け取れる。(それまで支払った保険料総額と同額ではない)そのため、終身保険は貯蓄替わりに使われることがある。

ただし、貯蓄替わりに使うのはあまり意味がないと言っておこう。

預金保険がある銀行に預けるほうが、よほど安全だ。

終身保険の場合、その解約返戻金の金額は常に保障されているわけではない。保険会社が倒産してしまった場合は、その解約返戻金は削減される。終身保険でたまる率と、預金でたまる利息にそれほど大差はない。また終身保険は、死亡保障のための保険料もかかっているので、よほど利率がよくないと、支払った保険料以上に解約返戻金が返ってくることは少ない。

しかし、終身保険にも利用価値はある。

終身保険を相続税対策に利用するのだ。

生命保険には相続税の非課税控除枠というものが存在している。

その控除枠は相続人の人数×500万円だ。

仮にあなたが5000万円の資産を持っていて、相続人が子供一人だったと仮定しよう。

なにも考えずに相続が発生すると、相続税の基礎控除は3600万円になる。

課税対象は1400万円となり、それに税金がかかってくるわけだ。

一方、終身保険を500万円契約していた場合はどうだろうか。

課税対象の相続財産はさらに500万円減らすことができ、課税対象が900万円となる。

ざっくりと70万円の相続税の節約になる。

これは、相続財産が大きいほど効果が高い。

とは言っても、たいていの人はそこまで相続財産があるわけではないので、終身保険に加入する理由などない。

葬儀代の準備として・・・などというFPもいるが、葬儀代など自分で貯蓄して用意しよう。

わざわざ保険に加入して、自分の資金の使い道を限定する必要はないのだ。

1-3, 養老保険

契約期間は一定期間だが、満期を迎えると、死亡保険金額と同額の満期保険金(契約期間が満了した際にもらえるお金)がもらえる。

これは死亡しても保険金、死亡しなくても保険金、という一見素晴らしい保険のように思える。

しかし、実質的に、定期保険を契約し、その保険金額と同額のお金が一定期間後に貯まっているよう貯蓄を同時にするのと変わりない。

当然保険料はとんでもなく高い。

しかも昨今の利率では、満期保険金が支払った保険料の総額を上回ることはないだろう。

30年ほど昔は流行った保険だが、今は加入する人はほとんどいない。

私としても全くオススメできない保険だ。

2, 医療保険

医療保険は基本的には病気やケガで入院したときに、入院1日あたり○○円もらえる・・・という保険だ。入院中に手術した場合は、手術したことに対する保険金も出る。一般的にはこの2つが主要な機能だ。がん保険や、特定疾病保険(がんや脳卒中、心筋梗塞になり所定の状態になった場合に保険金がおりる)も医療保険のカテゴリに含まれる場合もある。

おおむね、医療保険とは、入院保険と解釈してもらって問題ない。

医療保険は生命保険と違い、保険が掛けられている人が生きている間に、保険金(通常、医療保険の場合は給付金ということが多い)をもらうものだ。生きているために起こるリスク(病気・ケガ)に備えるものと言えよう。

わたしはこの医療保険に加入することは断固反対している。入院1日いくらという保険はあまりにもナンセンスだ。わずかでも加入する必要などない。

そもそも日本国民は、健康保険という世界最強レベルの医療保険にほぼ強制加入させられるのだ。その強制加入の保険に、安くても月3000円。収入が何百万円とあればあっという間に毎月1万円の大台を突破する。これだけすでに強力な医療保険に加入しているのだから、民間保険会社の医療保険など加入する必要はない。

医療保険が必要ない詳しい理由は、以下の記事で解説している。興味があったらぜひ見てほしい。

さてこの医療保険には非常にたくさんの種類がある。

死亡したらいくら?の生命保険と違い、商品が非常に複雑だ。

当然トラブルも生命保険に比べ圧倒的に多い。

以下で、よくある医療保険の類型をまとめている。

2-1, 入院保障

入院したら、1日入院につき1万円の給付金を支払うという契約。

入院したら定額で5万円支払うというような保険もある。

2-2, 手術保障

入院中に手術したら、手術の種類により給付金を支払う。入院保障にセットで付いているのがほとんどだ。

2-3, 通院保障

入院したあとの通院でないと給付金がおりなかったり、入院は条件ではない保険もある。通院治療に対し、1日通院で○○円支払うという保険。がん保険での通院特約は役に立つ。

2-4, 特定疾病保障

3大疾病(商品によって5大疾病だったり7大疾病だったりする)を保障する商品。

がんを含めた生活習慣病(高血圧や脳卒中、糖尿病など)で入院すると、通常の入院給付金とは別枠で給付金が出る。非常にクセの強い保障で、初期のがんは対象外だったり、脳卒中になっても、手術をすることが条件だったり、さらには長期間治療を行って初めて給付金がおりるというものもある。この分かりづらさにより、かなりトラブルが多い保障なので、加入はとても慎重に。

2-5, 女性特定疾病保障

女性に多い病気、あるいは女性特有の病気(甲状腺異常だったり、乳がんや子宮筋腫など)で入院した場合、通常の入院給付金とは別枠で給付金が出る。保険会社が女性マーケットにアクセスするため作った保険という性格が強い。『女性がなるべく加入したほうがよい』という類のものではない。

2-6, 先進医療保障

保険会社によるCMの罠。

『指定の』先進医療を受けた場合、何百万円という給付金が、数十円、数百円という非常に安い保険料で入れるというもの。特約扱いが一般的なので、先進医療保障単独では加入できない。

しかも、この特約、役に立つことはほとんどない。

『指定の』というのがミソで、この『指定の』先進医療を実施している医療機関は国内にほとんどない。いざそこで受けようと思っても、かなり強力な医師の紹介状などないとそんな治療は受けることができないのだ。コネがある人はいいのだろうが・・・

考えてみてほしい。もしあなたの意思で、先進医療を受けたいといって、受けられるなら、こんなに保険料が安いわけがない。

つまり、この特約は保険会社による撒き餌に等しい。

残念なことに、消費者はかなりの人がこのようなものに釣られている。医療保険には詳しくない人が、CMの影響により先進医療特約の存在は有名になっているのだ。消費者としては、数十円、数百円の保険が大々的にCMを打たれている理由を考えなくてはならない。保険会社はこの先進医療特約で儲けようなどと思っておらず、客を引き寄せる宣伝として使っているのだ。よくよく注意してほしい。

2-7, 健康祝い金

健康で医療保険を使わなかった場合、一定期間ごと(5年ごとなど)に健康祝い金という名目で、給付金がもらえる。もちろん、この保障に加入した場合は、健康祝い金を払うための保険料はしっかり徴収されている。非常に無意味なので、このようなものはつけないようにしよう。

まとめ, 生命保険と医療保険の知識についてまとめ

生命保険は保険がかかっている人が死亡したときに保険金がおりる商品。非常に単純な商品で、生命保険会社の唯一の存在意義。あなたが亡くなったら経済的に困ってしまう家族がいる場合は加入必須!

医療保険は保険がかかっている人が入院。手術などしたときに保険金がおりる商品。非常に複雑かつ多岐に渡って商品が存在している、わかりづらい商品。加入は基本的に不要。保険料の無駄!あなたは世界最高レベルの医療保険にすでに入っているはずだ。