生命保険は必要かいらないのか。
『賃貸か持ち家か』という不動産の永遠の命題ほど、問題視されていないのが残念だ。
私の結論から言ってしまえば、『生命保険は根本的にはいらない』が答えだ。
『根本的には』と断っている裏には、『耐え難きを耐え、忍び難きを忍び、不本意ながら生命保険は必要なこともある』ということを示唆している。
その理由を説明していこう。
生命保険は必ず負けるギャンブル
生命保険は端的に言えば、保険料という掛金を払い、保険金という当選金をもらうという宝くじのようなものに近い。
株も、FXも、為替オプションも、預金も金融商品は全てギャンブルだ。
掛金と確率と当選金の程度が違うだけだ(例えば預金はほぼ100%の確率で賭けた金額の全額と金利分が戻ってくるが、ごく低い確率で賭けた金額を失うというギャンブル)。
そしてあらゆるギャンブルで重要なのが、胴元、すなわちギャンブルの運営者だ。
預金であれば銀行、株であれば証券会社、為替であれば為替銀行、生命保険であれば生命保険会社、といった具合だ。
そしてギャンブルに参加するためにはこの運営者たちに手数料を払わなくてはならない。
そして、この手数料分だけこれらのギャンブルは必ず負けるように仕組まれているのだ。そうでなければ運営者が儲けられないからだ。
もちろん、個々人で見ればギャンブルに勝つ人間もいる。少ない保険料で生命保険金という大金を手にする人間もいるだろう(保険料2000円で加入し、たまたま加入直後に亡くなり、3000万円もらうなど)。しかし、参加者全体で見れば、手数料分負ける。
いかなる金融商品を買う時もこの原則を忘れてはいけない。
数学的には生命保険はいらない!
手数料分必ず負けるならば、合理的に考えて、生命保険など入るべきではないのだ。
株式と違って生命保険は価値が成長する余地がないのでなおさらだ。
簡単な事例で確認してみよう。
30歳男性が10年間の間に亡くなったら100万円もらえる生命保険を考えてみる。
ここで30歳男性が10年間の間に亡くなる確率は10%とする。
あなたが保険会社の経営者なら、この生命保険の保険料はいくらにするだろうか。
十分に30歳男性の加入者がいれば(例えば1万人としよう)確率通りに亡くなるとすると、10年間に1000人が亡くなる計算となる。
つまり1000人分の保険金100万円を支払わなければならない。
10億円が保険金としてあなたの保険会社から出ていくことになる。
これを1万人の加入者に保険料として払ってもらえばよい。
つまり保険料は10億円÷1万人=10万円ということになる。
この生命保険は保険料が10万円となり、保険金が確率を考えて、平均いくらもらえるか(期待値という)を考えると、保険金額×死亡確率、つまり100万円×10%=10万円だ。
保険料とは原則的にもらえる保険金の期待値と一致する。
ところで、あなたは保険会社を運営するにあたって、人を雇わなければならないし、システムも必要かもしれない。保険金を支払うのとは別に経費を賄わなければならない。
その分を顧客が支払う保険料に乗せなければならない。
そうすれば、保険金を支払う分だけを考えたら10万円でよかった保険料が、11万円になるかもしれないし、12万円になるかもしれない。そのあたりはあなたがいかに効率的に保険会社を運営するかにかかっている。仮に12万円とすれば経費も賄えるものとしよう。
さて、これを顧客側から見たら、保険料を12万円払っているのに、もらえる保険金の期待値は10万円なのだ。
言い換えれば平均して2万円損をする計算になる。
これが、生命保険に加入すれば数学的には必ず損をするということだ。
数学的に生命保険が必ず損をするものだとして、いらないとは言えない理由
数学的には生命保険は必ず損をすると分かった。
しかし、これで短絡的に『生命保険はいらない』と結論つけてはならない。
『なんでだ?必ず損をするんだから、入る奴は頭の悪い奴か、親戚に頼まれて入る奴かくらいだろ?』
と思うかもしれない。
だが、それでも生命保険は必要な場面がある。
それは、『自分ではとても対応できない事態に備える』ときには生命保険が必要になるのだ。
『自分ではとても対応できない事態』とは何か。
生命保険が関わるところでは以下のようなものが考えられる。
一家の稼ぎ頭が亡くなり、収入が途絶え、生活費を賄えない
病気やケガ・その他障害で5年・10年と働けなくなり、収入が途絶え、生活費を賄えない
長生きしすぎで、生活費が足りなくなる
これらの事情で生活費が足りなくなる場合、その金額は軽く1000万円・2000万円を超えてくる。
月10万円で生活していたとしても、20年分ともなれば、2400万円もの金額となる。
このようなリスクに備えるため生命保険に損すると分かっていながら加入しなければならない。
なぜなら、1000万円・2000万円という金額は貯蓄などですぐ貯まる金額ではないからだ。
以下の2例を見てほしい。
生命保険に加入していない場合
結婚した若い夫婦に子供ができた。
まだ貯蓄は100万円しかない。
不幸にも旦那が亡くなった。
収入が途絶えた。
生命保険は加入していなかった。
さあどうする?
生命保険に加入していた場合
結婚した若い夫婦に子供ができた。
まだ貯蓄は100万円しかない。
不幸にも旦那が亡くなった。
収入が途絶えた。
3000万円の保険金がもらえた。
なんとかやっていけそうだ。
もちろん、旦那が亡くならない可能性のほうが圧倒的に高い。たいていの人は保険料は払い損になることは間違いない。
しかし、旦那が亡くなり収入が途絶えるというのは、万が一発生すると巨大なリスクである。
家族の生活を破壊するのに十分なインパクトだ。
生命保険とは損することは明らかなのだが、このように万が一を考えると生活に必要な経費であると思わなければならない。自動車保険に入らずに車を運転する人はあまりいないのと同様だ。
このように、損をするのは確定的に明らかだが、生命保険に入らなければならない場合もあるというのが私の考えだ。
生命保険が必要かいらないのかを判断するポイント
しかし、どんなリスクにでも保険で備えることにはもちろん反対だ。保険は加入すれば損をするのだから、なるべくなら入らない方がよい。
入るべきか入らないべきかを分けるポイントはたった一つだ。
リスクが実際に起こったとき、あなただけで対応できるか
一般的に100円のコカコーラを買って中身が入っていないリスクを心配する人はいないだろうし、仮に起こったとしても、その程度の損失は許容できるだろう。あるいは巨大隕石が降って地球まるごとあなたの生活が壊滅するリスクを日々の生活で心配する人もいない。
余計なことまで心配する必要はないし、そんなものにいちいち保険で対応していたら、あなたの支出の70%を保険料が占めるようになるだろう。
生命保険で言えばどういうことか。
例えば医療保険など最たる例だ。
長期的に入院すれば家計にそれなりの負担を与えるだろうが、1日2日入院したところで、負担はせいぜい数万円程度だろう。『日帰り入院から保障します』などと医療保険は宣伝しているが、そんな小さいリスクはわざわざ保険で備えるほどのものでもないのだ。
同様のことががん保険にも言える。『上皮内癌から保障します』というのも過剰な心配だ。部位にもよるが上皮内癌という最初期の癌など発見されれば当たり前のように治るのだ。治療も短期で済むだろう。生活にインパクトを与えるほどの影響もないはずだ。(がん保険がこのような無駄に手厚い保障になっているのは、上皮内癌でも癌なのに昔は払われない保障が中心で、苦情になったことによる。)
保険のわかりやすさを優先して、近頃の医療保険やがん保険はやたら手厚いのだ。
保険は役に立たない確率のほうが圧倒的に高いのだから、無駄に手厚い保障など手数料がその分とられるだけでいいことなどないのだ。
生命保険は必要な分を最小限で!
当サイトでは色々なところで言及しているのが『保険は必要な分を最小限で加入する』ということだ。
冒頭述べた通り、『生命保険は必ず負けるギャンブル』なのだ。必要ない部分は可能な限り削減しなければならない。
一方で、『自分では対応できないリスク』に備えるために、生命保険が必要な場面がある。その場合は必要な分だけ加入するというのが必要だ。
このような態度で生命保険を検討すれば、たいていの人は支払う保険料が月1万円を超えることなどない。
1万円を超えているようでは、無駄な保障に入っているか、間違った保障に入っているかどちらかだ。
支払う保険料が1万円を超えているような人は、必ずチェックする必要がある。
現在は、様々な保険会社の商品を取り扱い、比較しながら最適なものを選んでくれる保険ショップなど生命保険に詳しいFPがあなたの保険選びを手伝ってくれる。もちろん彼らも手数料で商売していることには注意を払わなければならないが、10年も前は、保険は保険会社のセールスから加入するしかなかったことを思えば雲泥の差である。
以下の記事を参考に、あなたの生命保険にいらない部分がないかどうかチェックしてもらうことをおすすめする。
『保険の見直しどうすべきか分からない人はFPの無料相談をまず受ければ解決する』