主に生命保険には免責期間(『めんせききかん』と読む)というものがある。
この免責期間について理解がないと、いざというときに『保険金・給付金が支払われなかった』ということがあるので注意したい。
そもそも保険の免責期間とは何か
保険に関する免責期間とは
免責事由のうち、保険期間内であっても保険金や給付金の支払がされない期間のことを免責期間と呼ぶ
この免責期間のうちに、特定の免責事由に該当した場合は、病気だろうが死亡しようが保険金が支払われない。
生命保険や医療保険は契約期間が長く、しかも加入後どのような内容だったかは忘れてしまいがちになるので、免責期間のことなどは定期的に確認するようにしたい。
保険の免責期間中は保険料は支払うのか
免責期間は特定の場合のみ保険金や給付金の支払を制限するものであるので、保障として有効になっている部分も、契約内にある。
そのような免責期間中保険金は支払われないことを加味して保険商品の保険料は計算されているので、がん保険など90日間の免責期間がある保険でも保険料はきちんと払わなければならない。
どのような場合に免責期間が設定されているのか
生命保険にはいろいろな免責期間が設定されている。
主なものは以下のとおりだ。
- 死亡保険に関する自殺の免責期間
- 医療保険に関する入院給付金の免責期間
- がん保険に関する加入後の免責期間
- 就業不能保険に関する給付金の免責期間
- 引受基準緩和型保険に関する免責期間
- 健康状態の審査で特別条件に該当した場合の免責期間
順番に解説していこう。
死亡保険に関する自殺の免責期間
死亡保険金に関する自殺免責期間の基本
被保険者が自殺により亡くなった場合には、責任開始日または復活日(保障が開始になる日、場合によっては契約日ではないことに注意)を含んで1年から3年以内の場合、死亡保険金が支払われないのが通常だ。
例えば、日本生命の約款によると死亡保険金を支払わない場合として、
責任開始の日からその日を含めて3年以内の被保険者の自殺
としている。(出典:https://www.nissay.co.jp/kojin/shohin/seiho/mirainokatachi/shiori/02.pdf)
私が保険会社に勤めていたころ、被保険者の自殺による保険金の請求事例で、この免責期間に該当し『保険金はおりません』と伝えなければならない事例が2例あった。
遺族にとってはつらいことだが、自殺免責期間に該当した場合は容赦なく保険金は支払われないことになる。
死亡保険の復活手続きには注意
注意しなければならないのは、保険契約が一度失効し、復活手続きをした場合だ。
復活手続きは事実上新規契約をしたものに近い。
よって、それまで3年以上保険契約を続けていたとしても、一度失効してしまうと、復活日からまた3年など自殺による免責期間が設定されることに注意したい。
生命保険を更新した場合は免責期間はどうなるの?
また特殊な例だが、生命保険を更新した場合は、更新前の契約の保険金額以内の部分については更新から再度免責期間が設定されることはない。
例えば更新前は保険金額が1000万円で更新後は1500万円だったとしよう。
この場合、更新直後に自殺したとしても1000万円の部分は、更新前の契約の免責期間を過ぎていれば、保険金が支払われる。
増額した500万円の部分は更新時に増額したものなので、更新後から免責期間が過ぎないと支払対象外となる。
似たようなパターンとして、生命保険を見直した場合の免責期間の扱いもあるので注意したい。
免責期間中に自殺したら解約返戻金はあるの?
死亡保険の免責期間中に被保険者が自殺した場合は保険金がおりないことは解説した。
被保険者が亡くなるということは保険契約の消滅を意味するので、契約に解約返戻金がある場合は、契約者に解約返戻金が支払われる。
契約者と被保険者が同一人だった場合は、被保険者の自殺=契約者の死亡となるので、その場合は契約者の相続人に対して解約返戻金が支払われる。
解約返戻金は死亡保険金ではないので、死亡保険金受取人に直接支払われるとは限らない。
あくまで相続財産の一部として遺産分割の対象となる。
契約者と被保険者が別人であれば、契約者に解約返戻金が支払われ、一時所得の対象となる。
医療保険に関する入院給付金の免責期間
医療保険の入院給付金に関する免責期間の基本
医療保険は、特に古い契約に多いが、『入院後○日以上』の入院でないと給付金が払われないという保険がある。
これは『契約後の免責期間』ではない。
極端な話、保険の責任開始直後に入院しても『入院後○日以上』に該当すれば給付金はきちんと支払われる。
何日以上入院すれば給付金の支払対象になるのかは、保険会社や商品によって異なる。
古い契約ほど免責期間が長いものがあるので、定期的に確認しておきたい。
入院給付金の免責期間のタイプ
医療保険の免責期間はいろいろなタイプがある。
私がざっと思いつくだけで以下のようなものがある。
- 20日以上入院した場合、1日目の分から給付金を支払う
- 5日以上入院した場合、5日目の分から給付金を支払う
- 2日以上入院した場合、1日目の分から給付金を支払う
- 1日以上入院した場合、1日目の分から給付金を支払う
①のタイプはかなり古い契約の特約として存在している。
このタイプの保険は19日以下の入院期間では一切入院給付金は支払われない。
仮に20日入院したら、20日分の入院給付金が支払われる。
20日入院したら、そこから1日分というわけではない。
②のタイプは、免責期間は4日になるわけだが、①のタイプと違い、5日入院した場合は、1日分の入院給付金しかおりない。
10日の入院であれば、6日分の入院給付金となる。
③のタイプは存在意義がよくわからないが、①のタイプの免責期間が短くなっただけだ。
④のタイプは日帰り入院から保障するという、現在売られている医療保険の主要なタイプだ。
事実上免責期間がないといえる。
免責期間中に手術したら給付金は出ないの?
医療保険には入院給付金とは別に手術給付金が支払われるものが多い。
手術給付金が出る医療保険で入院給付金の免責期間中に手術した場合はどうなるのか。
たいていの医療保険は手術給付金に関しては免責期間は設定されていないので、その場合は手術給付金は出る。
ただし、一部には『入院中の手術でないとダメ』などと免責期間とは別の免責事由が設けられている保険があるので注意しよう。
がん保険に関する加入後の免責期間
がん保険独特の免責期間
がん保険は『保険期間開始からその日を含めて90日経過した日の翌日以降に診断確定されたがん』に関する入院や手術などが給付金支払の対象となる保険が多い。
この90日の免責期間は始まりと終わりがいつなのかわかりにくいのできちんと確認しよう。
なぜ90日の免責期間ががん保険にはあるのか
がん保険に関して待機期間があるのは、簡単に言えば保険会社の収支悪化を防ぐためである。
がん保険は比較的給付金が大きい保険であると同時に、病変の前兆が自分でわかる場合がある。
がん保険は『がんと診断確定されたら100万円』などと高額な給付金を設定できるが、例えば皮膚にできものがあり、医者にはまだかかっていないが、『なんだかネットで調べるとがんかもしれない』などと医者にかかる前にある程度病気の可能性が推測できてしまう。
このような人にがん保険に加入され免責期間がないとがん保険の給付金ばかり保険会社は払うことになり、保険会社の収支は悪化するだろう。
90日も免責期間を設けておけば、がんの疑いがあるまま90日も医者にかからない人はそれほど多くないだろうから、がんの可能性を抱えた人のがん保険の加入は減るだろう。
90日間の免責期間中にがんになったらどうなるのか
実際に免責期間中にがんと診断確定されたとしたら、保険会社や保険商品よって扱いが異なる場合があるが、たいていの場合保険契約は無効になる。
この90日の免責期間中にがんになったことによる無効の場合は、すでに払いこんだ保険料が変換されることになる。
一方で、がん保険とは異なる、後述するような成人病保険や生活習慣病保険の場合に、がんにかんする90日の免責期間中にがんとなっても、ほかの成人病に関する保障もあるので無効にならない場合もあるので注意しよう。
がん保険だけではない90日の免責期間
がん保険は一般的に知名度も高く、90日の免責期間はきちんと説明される。
しかし、『がん保険』という名前でないがん保険も世の中には多くある。
『成人病保険』『生活習慣病保険』『特定疾病保険』などという名前で、『脳卒中』『心臓病』『糖尿病』などの特別な病気の際に手術給付金であったり入院給付金の上乗せ保障をする保険があるのだ。
そしてこれらの保険は『がん』に関しても支払対象となっているのだが、この『がん』に関しても90日の免責期間が設定されていることがほとんどなので、『がん保険』という名前でなかったとしても油断はできない。
免責期間のないがん保険はあるのか
がん保険には免責期間があることで、がんの疑いがある人の保険加入が妨げられている部分がある。
すると加入者側としては『免責期間のないがん保険』がほしいところだろう。
しかし免責期間のないがん保険は一般的ではない。
少ない例ではアクサ生命が、そうしたがん保険を発売しているが、一般的ながん保険に比べて給付内容が制限されていたりと制約が多い。
役に立つかどうかは、内容をよく確認して判断してほしい。
就業不能保険に関する免責期間
就業不能保険は所定の理由により就業不能状態が続くと毎月の収入の変わりとなるように給付金がおりてくる保険だ。病気で何年も働けなくなったらその間の収入は就業不能保険が助けてくれる。
この保険は基本的に長期間働けなくなった場合の保障を想定しているので、短期間の就業不能状態は保障の対象外となっている。
医療保険の免責期間と理屈は同じだが、その面積期間が60日や180日などと長期間で設定されている。
これは、サラリーマンが加入する公的健康保険に傷病手当金という制度があり、4日以上の就業不能状態に関して給付があるからだ。
自営業者の場合はそうした保障が健康保険にないので60日型の就業不能保険が選択されることが多い。
引受基準緩和型保険の免責期間
厳密には免責期間とは呼ばないが、昨今人気の『病気でも入りやすい保険』は給付内容に一部制限がされた期間があるので注意したい。
例えば、加入後1年以内の病気に対しては入院給付金の額が削減されるなどの条件がある。
中には加入直後から満額保障されるものもあるが、そうしたものはその分保険料が高くなるので注意したい。
健康状態の審査で特別条件に該当した場合の免責期間
最後にややマニアックな内容となるが、生命保険や医療保険、がん保険加入時には健康状態の審査があるが、この結果次第では
、商品ごとの免責事由によらず特別な条件が付されることがある。
特別条件が付されるのは、無条件では加入できないが、加入を断るほどでもない申込者に付けられる。
保険料の割増、保険金の削減支払、特定部位不担保といった条件が付けられる場合がある。
保険料の割増は保険期間中ずっとなので、加入後いくら期間が経過しても割増保険料だが、ほかの2つについては異なる。
保険金の削減支払いは、加入後1年後は8割の削減、2年後は6割削減・・・などと時間がたつほど削減割合が減っていく。
たいてい5年たつと、削減条件はなくなることが多い。
特定部位不担保は、加入後数年間、体の特定の器官に関する病気を原因とする給付金支払が免責となる。
例えば妊娠中の女性が医療保険に加入する場合は、子宮に関する病気(もちろん流産・帝王切開など異常分娩を含む)に関しては1年間給付金の支払対象外となる、といった例がある。
特別条件が付された場合は、いつ正常な契約に戻るのかきちんと確認しよう。