生命保険は結婚資金を貯める手段としては最悪!

結婚資金、教育資金、などなど、ライフプラン上重要な資金の話になると、なぜか『生命保険を活用しましょう』とおっしゃるファイナンシャルプランナーの方々は後を絶たない。YAHOOなど大手サイトの記事などでも頻繁に目にするから驚きだ。

老後のために年金保険?教育資金のために学資保険?結婚資金のために終身保険?挙句の果てには何の目的もない貯蓄まで生命保険を利用して貯蓄させようとする。

まず言っておこう!タイトルの通りだが、生命保険は結婚資金を貯めるのに向かない!

ここでは、なぜ向かないのか、それなのになぜ一部のファイナンシャルプランナーは『結婚資金を生命保険で貯めるとよい』などというのかを解説する。

生命保険ってそもそも何が特徴なの?

生命保険はその名の通り、生命に何かあったときのための保険だ。万が一、亡くなってしまった場合に、大金が保険金受取人に支払われる。緊急時の生活費のため、5000万円すぐに貯金するのは無理だが、毎月1万円払っておけば、万が一の事態に5000万円、遺族に保険金が支払われ、遺族の生活を保障できる。

この少ない負担で、とんでもない事態に備えられるという機能は保険以外にない特徴だ。逆に言うと、これ以外の理由でわざわざ保険を使う理由はない。例えば、貯金とか。

貯蓄できる金融商品って何があるの?

銀行預金はもちろん、証券口座だってお金を入れて放置しておけば多少の利息はつく。国債を買っても実態はほぼ貯金に近い。世間には貯金代わりに使える金融商品などたくさんある。

当然、保険より先にこれらの金融商品が貯金に使われてもよいのだ。

生命保険は他の金融商品に比べ有利なの?

貯蓄性の生命保険を検討する場合、当然他の金融商品も検討すべきだ。そこで問題になるのが、どの商品が一番有利か!だ。

一番気になる利率の面では、どの商品も似たりよったりである。それでも貯蓄性保険のほうが、銀行預金などに比べ利息面で有利なのは確かだ。0.1%とかそういうレベルで。ちなみに100万円を預けた際の年率0.1%の利息というと、1,000円である。これを他の多くのデメリットを受けてまで狙うメリットなのかどうかをよく考えてほしい。

これらの貯蓄性商品の利率は市場金利にほぼ連動する。保険商品は連動するまで、すこし時間がかかる程度か。ただし、生命保険は銀行預金などに比べてかなり不利な点がある。

生命保険は解約を自由にできない?

生命保険は他の貯蓄性商品に比べ、資金の移動について自由度が低い。

まず解約した際の目減り(解約控除という)が大きい。

生命保険の解約は契約直後からいつでもできるが、この解約控除のせいで顧客は『もったいない』という意識が働き解約しづらくなってしまうのだ。意識だけでなく、実際、もったいない。年金保険など契約して毎月1万円払ったのち1年後に解約すると、それまでで12万円貯まったはずなのに、6万円くらいしか返ってこない、ということがあり得る。それほど短期での解約での解約控除はきつい。また長期間契約していても、近頃の低金利のせいで10年、20年後に解約しても、解約控除のせいで『元本割れ』ということもあり得る。

このように、解約控除があなたの自由な資金の引き出しを妨げるのだ。

結婚資金っていつまでにいくら貯めるの?

さて、この短期の解約控除があるうえで、結婚資金を貯めることを考えてみよう。
結婚資金を貯めるということは、結婚する予定が近々あるか、それが想定される人だ。『付き合って5年もたつからいつかは結婚するだろう』という人など。結婚が想定できない人(容姿とかの問題でなく、現状パートナーがいない人)に結婚資金を貯める意思は、多くの場合ないだろう。結婚を意識できる人といっても、一般的に5年後、10年後、ということはないだろう。5年という期間であったとしても貯蓄性商品の契約期間としては、ひよっこに過ぎない。

仮に契約5年後の貯蓄性商品を解約すれば、ほぼ間違いなく元本割れだろう。

1年、2年などで解約すればなおさらだ。1年後から5年後というそれほど遠くない未来の資金の備えとして、生命保険を利用すれば、見事に元本割れするのだ。あなたはただ保険会社に貢いだだけで終わる。

また、さしあたって結婚の予定もないのに、結婚資金を貯めるために生命保険に加入すれば、いつ解約して現金化するのもわからないのに、突然1年後に結婚することになった、という場合、泣く泣く元本割れを飲んで解約、ということにもなり得る。

このように、解約控除のせいで、特に短期(20年以内)の貯蓄として生命保険商品を利用するのはまったくお勧めできない。多少の利率の有利さなどふっとばされるのが解約控除だ。

契約者貸付で貯めた資金を使えるが、意味不明な制度

解約ができないなら、別の方法がある。貯蓄性の保険商品のパンフレットを見ると、たいてい『契約者貸付がご利用いただけます』などと記載されている。契約者貸付とは、今まで自分が支払った保険料のうちから解約返戻金の一定範囲内で保険会社から資金を借りられる制度だ。例えば、その時点の解約返戻金が50万円だった場合、40万円まで保険会社から資金を借りられる。契約している貯蓄性商品の解約返戻金を担保にしていると言ってもよい。

さて、この契約者貸付制度だが、もともと自分の資金なのにもかかわらず、市場金利に若干の金利を上乗せされた金利で貸し付けを受けることになる。もともと自分の資金にもかかわらず、金利が上乗せされて借りるとはこれいかに?解約しなくとも資金を使えるのは、どうしても保険契約を存続させなければいけない事情がある場合には利点となる。例えば体調に問題があり、生命保険を解約するともはや新しい契約には加入できないと想定される場合だ。ただし大きな保障がない年金保険など純粋な貯蓄性商品の場合はこの利点はあってないようなものだ。

契約の保護制度が預金等に比べ貧弱

生命保険会社が万が一倒産してしまった場合に貯蓄性商品の契約はどうなるのか。

これは破たんの状況に応じて、責任準備金が削減される。分かりやすく言えば、年金50万円の契約が、40万円になったり、25万円になったりする。削減の幅は倒産時の保険会社の財務状況、救済保険会社の有無、契約の利率などに影響をうける。貯蓄性保険は30年、40年と契約すれば解約控除もほぼなくなり、元本割れすることも少ないが、その30年、40年の間に保険会社が破たんするリスクは考えなければならない。

一方、定期預金などはどうか。

定期預金や利息のつく普通預金は預金保険制度により、1000万円までの預金ならば元本と破たん日までの利息が保障される。しかも実質政府保証に近い。さらに1金融機関につき1000万円までなので、預金がある程度ある人は、多数の銀行に分散して1000万円ずつ預け、それぞれの預金に対し保障を受けることも可能だ。

かなりの大金持ちでは1000万円の預金をいくら分散させようが、対応しきれないだろうが、私たち一般消費者では十分すぎる保障だ。

生命保険で貯蓄するのははっきりと不利!

これまで見てきたように、貯蓄性の生命保険は解約控除のせいで、特に短期の現金化に躊躇してしまう。これを投資の用語で『流動性に欠ける』という。ちなみにリーマンショックは流動性の欠如により、被害が拡大した。

『いつでも現金化できる』という保証は資産運用の大原則である。

また、保険商品の安全性も銀行預金に比べれば圧倒的に不利だ。一般消費者レベルでは十分すぎる安全性がある預金保険制度と比べると、保険商品は破たん時に不安が残る。

わずか0.1%の利息の有利さを追い求めたばかりに、流動性、安全性を犠牲にするといざというときに困る。保険会社が破たんすることは、それほど起こらないとしても、現金化するために保険を解約するのはいつ起こるかわからない。安全でいつでも使える貯金をするなら、無難に銀行預金や郵貯を利用するのが一番よい。

生命保険セールスたちのトークに乗せられて貯蓄性商品を買ってはいけない。

『結婚資金も終身保険を利用すれば効率よく貯められます』

何も効率よくない。結局彼らはあなたが払う保険料から収入を得るためになるべく高額の貯蓄性商品を買わせようとしているのだ。5年後結婚するから、解約しようとしたら、元本割れすることになり、泣きを見るのは顧客側である。

そして、『もっと長期間契約すれば、元本割れもなくなりますから』などと言われ、さらに長期間、保険会社の肥やしとなるのだ。

このようなシナリオが見えているので、『結婚資金』を貯めるなどという目的のために、生命保険を利用してはいけない。

生命保険は生命保険にしか実現できない機能を目的に加入するものだ。