結婚時に生命保険を見直したり、新たに加入したりする人は多いだろう。
そして、いったい何から手を付けていいか分からない人がほとんどだろう。結婚するまでに生命保険のことを真面目に考えたことがある人など、生命保険会社の社員くらいだ。
何をしていいか分からない人は、真っ先に生命保険が必要かどうかを考えてほしい。どの生命保険を選ぶかなど後回しだ。
本記事はあなたが『生命保険がどうやら必要そうだ』と感じたということを前提に話を進める。
結婚時に考慮するべき(させられる)生命保険の種類
生命保険の必要性を認識したうえであなた自身が独自で生命保険について調べ始めたのなら幸運だ。しかし、たいていの人は生命保険セールスなどに『結婚時にはこんな生命保険がお勧めですよ!』などと言われて、本当のところどうなのか、というセカンドオピニオン的に本記事を見ている人だろう。
あなたがこれからやることは、色々な種類の生命保険から『あれはいらない』『これは必要だ』と取捨選択していくことだ。
死亡保障
あなたが本当に生命保険が必要になったのなら、その理由は『自分や配偶者が亡くなったとき、遺族の生活の保障をしなければならないので』『死亡保障が必要になったから』のはずだ。というかそれ以外に生命保険に入る明確な理由などないはずだ。死亡保障こそ生命保険の存在意義と言ってもよい。
死亡保障にはまず2タイプに分かれる。
保障期間の短い保険と、保障期間が長い保険だ。
まず保障期間が長い保険については、終身保険や90歳や100歳満了の定期保険がある。これらの保障は貯蓄性が高く、掛け捨てを嫌がる人が検討したりする。これらの保障は大きな保障を設定するととんでもない保険料になるし、保険料を抑えると保障額が下がり、生命保険が必要になった当初の理由に合わなくなる。これらの期間が長いタイプの保障は選択肢から外されるべきだ。
期間が短い死亡保障はいわゆる掛け捨ての保険とよばれる。これらは比較的安い保険料で大きな保障を得られるが、支払った保険料は保障期間が終わり満期を迎えようが、途中で解約しようが、お金は戻ってこない。大きな資金が必要な『生活保障』のためにコストを払うということだ。電気料金を払っているようなものと思えばよい。期間の短い保障は当初の生命保険が必要になった理由に合致するので、当然検討の対象になる。
所得保障
死亡保険の亜種ともいえるが、所得保障の保険は比較的新しいタイプの保障だ。医療保険とも似ているが、あのような存在意義自体が疑われる保険よりも考慮の対象となり得る。
所得保障保険は、加入者が病気、ケガなどにより長期間(半年以上とか1年以上とか)働けなくなった場合に、毎月、月額○円(例えば月額10万円など)受け取れる保険だ。家
族の生活が脅かされるのは一家の収入の柱が亡くなった時だけではない。亡くなると当然『働けなくなるから収入が減る』わけだが、『働けなくなるから収入が減る』のはなにも亡くなった時だけの話ではなく、病気やケガで長期間動けなくなったりしても同様だ。感情的には残酷な話だが、経済的には亡くなった場合より、生きているほうが家計の負担は大きくなる。よって、このような保険は収入が途絶えたときの保障として役にたつ。実は独身であっても自分が動けなくなれば、収入が得られないので、所得保障保険に加入することには大いに意味があるがここでは本論から外れるので詳しくは書かない。
いずれにせよ、死亡保障と同じくらい大切な保障なのが、所得保障保険だ。加入するかどうかは保険料の負担と相談しながらだ。
医療保障
医療保険などと呼ばれているものだ。結論から『強く』言おう。
この保険は不要であると!
もはや何度語っても語りきれないほど、医療保険が不要な理由がある。そもそも医療保険が必要になる明確な理由がない。たいていはなんとなく加入させられているのが現状だ。生命保険に限らないが、必要になってないのになんとなく買うものなどないはずだ。野球をする人がサッカーボールは買わないはずだ。
語っても語りつくせないほどの理由がある、『医療保険が不要である理由』は下記を参照してもらいたい。長すぎて驚く。それほど理由がてんこ盛りだ。
そもそも生命保険会社が医療保険のCMばかりしている時点で不要であることがわかる。
『CMをうつ』→『保険会社はCMの費用がかかる』→『費用がかかってでも宣伝したい』→『医療保険は儲かるから』→『保険会社が儲かるということは加入者は損をするということ』
年金
生命保険について真面目に考えると、普段は考えない老後保障のことを『考えさせられる』ことがある。きっかけはたいてい生命保険セールスだ。この保険は生命保険会社にとってはほとんど旨みがないので加入を検討してもよい。ただし長期間資金が拘束されるので(解約すると元本割れする場合があるから)大きく加入するのはお勧めできない。加入しても月7,000円程度が上限だ。なぜ7,000円なのかは、概ねこのあたりが、所得控除を受けられる上限の金額だからだ。年金保険に加入するなど、所得控除目当て以外に特段理由がない。
外貨建て保険
世の中には恐ろしいことを考える人がいるもので、保険を外貨建てで加入しようなどという人がいる。
保険とは本来、金額が保障されているから保険になる。『何かあったとき100万ドル払います』などという保険であっても、ドルが紙くずになっていた、価値が半減していたでは危なくて保障にならない。保障とは『商品の安定性』が第一だ。よって、あまりいないとは思うが『保障目的』で外貨建ての保険に加入するべきではない。
この手の保険は投資目的で加入させられる。セールスに『将来の資産運用のためにこのような保険は有効です』などと勧誘される。もちろんこの種の保険は販売手数料がとても高いので、保険会社にとって旨みがある保険だ。つまり加入者には損な保険だ。米国債やオーストラリア債に投資する、投資信託でも買ったほうがよっぽど良心的な手数料である。他に代々手段などいくらでもあるので、外貨建て保険に加入するのは意味が全くない。
投資が危ないとかそういうことを言っているのではなく、投資信託でもFXでも他に手数料が安い投資方法があるのに、わざわざ外貨建て保険でやる意味がないということだ。相続対策などやるなら、普通のの終身保険でよい。
変額保険
外貨建て保険と似ているが、これは支払った保険料を原資に保険会社が資産運用し、その成績によって保険金が変動するという保険だ。外貨建て保険と同じく不安定なので、保障としては役に立たない。投資目的で加入する場合がある。もちろん外貨建て保険と同様、手数料が高く、保険会社に旨みがあるので、加入者にとっては損だ。外貨建て保険と同様に、加入する理由はない。
介護保険
まだあなた自身の介護について考える段階ではないかもしれない。しかし結婚した年齢では、あなたの親世代がそろそろ介護のことも考え始める年代かもしれない。介護保険は、要介護状態と認定された場合に、一時金で○百万円、年金で○十万円、などと介護生活の資金面を保障してくれる商品だ。医療保険の亜種みたいなものだ。しかも医療保険と違い、歴史が浅く積極的に商品開発がなされておらず、効率面で未熟な商品である。保険料もまだまだ高いので、コンセプトは良い保険なのだが、まだまだ選択肢に入れるべき商品ではない。
結婚時に検討余地がある生命保険の種類は死亡保険と所得保障保険だけ
これまで見てきたように、死亡保険と所得保障保険は検討価値がある。死亡保障と所得保障保険はどちらも家計の収入面の保障をするものだが、どちらも貯金で対応するにはなかなか難しい。そうしたところにこそ、生命保険の存在価値がある。その他の商品は加入する意味がないものだ。
結婚時は生命保険を自発的に考える数少ない機会だ。どうしても生命保険セールスの意見を鵜呑みにしてしまいがちだ。医療保障もあったほうが安心・・・だとか。役に立たない、余計な保障を加入して無意味に家計支出を圧迫すると、長期間に渡り不幸になる。必要最小限でいい、むしろ必要最小限でなければならない。どうやって必要最小限にしていくのかは、FPに相談することが有効だ。そして最低限の知識は当サイトのメインコンテンツで勉強すればよい。少しの努力によって、何百万円、何千万円の差が出ると思えば安いものだ。