結婚したときに生命保険の加入を検討する必要はあるのか!
生命保険・医療保険などは結婚したときに保険営業から勧められるケースが多い。
売る側にとっては千載一遇のチャンスだ。
『結婚したのなら責任も増えて保険を考えなければいけませんね』
『ほとんどの人は結婚をいい機会に加入されますね』
などと言われる。
多くの人にとって、ない事もない普段は保険の話などただうっとうしいだけだろう。しかしこの時は耳を傾けてしまう。
『みんなが同じことをしている』という事実に、人はとにかく弱い。
親からも警告混じりで勧められたりする。様々な広告が『結婚したら保険にはいらなきゃ』などと煽ってくる。
かくして、『保険に入らなければならない!』と誤解したあなたは目の前の保険セールスの話を聞いてしまい、あるいはショッピングモールの保険ショップのカウンターに座ってしまうだろう。
結婚、出産、家の購入のようなライフイベントを迎えたときの、周囲からの保険加入のプレッシャーは非常に強い。あなたが責任感ある大人であれば自分からもプレッシャーをかけてしまうことだろう。
あなたには生命保険に加入する際の正しい知識を持ってもらい、たいていのプレッシャーは取るに足らないことだと理解してほしい。
必ずしも結婚したから生命保険に入らなければいけないわけではない!
必ずしも出産したから生命保険に入らなければいけないわけではない!
今の言葉を頭に叩き込み、大きくメモを取った紙を横に置きながら本記事を読み進めてもらいたい。
1, 結婚=生命保険加入のタイミングではない!
生命保険に限らず医療保険やがん保険でもそうだが、結婚したからといって保険に入らなければいけないわけではない。
また、タイミングとしては結婚時に限らず、出産時、退職時など重要なライフイベントを迎えたからといって、必ずしも保険に加入する必要はない。
『『結婚しても生命保険に入らない』と自信満々に言ってよい!』ただし、保険のことを考えるのにいい機会なのは確かだ。『考える』というのは、保険を減らすことも可能性として十分ありうるということを覚えておいてほしい。
2, 保険のことを考えるにあたって、大事な2つのこと。
2-1,すでに加入している保険がないかをすべて確認!
あなたは引越しをしたならば、電子レンジを持っているかいないか確認してから、ヤマダ電機、あるいはamazonで買い物をするだろう。もちろん持っていないなら、新しく電子レンジを買う必要があるかもしれない。持っていても、1998年製だったら買い替えるかもしれないだろう。スマホから遠隔操作可能で火事の心配などない、最新式の素晴らしいPANASONIC製電子レンジを持っているなら、おそらく買い替えたりはしないだろう。
同じことは生命保険でも考えなければならない。
あなたが知らなくても親が勝手に保険をかけている場合はよくある。県民共済などが典型的だ。既に親が保険を掛けてくれていて、しかも保険料まで払ってくれている。不要ならば、これ以上保険加入する必要はない。
当たり前のことなのだが、電子レンジとは違い、保険ではそんな当たり前のことができない人がたくさんいる。多くの人が2つも3つも保険契約をして、たくさんの保険料を払っているのだ。
仕方ないのだ。電子レンジは現物が日常生活の中にあるが、保険は5年に一度考えるか考えないかだからだ。
面倒くさいが、見直し、新規加入のときは必ず、すでに加入しているものを確認してほしい。
2-2, あなたが保険に加入しないと困る人がいるのかどうかを確認
実際に保険加入を検討する際のすべての入り口は、保険があなたやあなたの大切な人にとって本当に必要なのかどうかを把握することだ。
生命保険であれば、あなたがもし亡くなってしまっても、経済的に誰も困らないなら加入する必要はない。医療保険であれば、あなたが入院・手術しても、経済的に誰も困らないなら加入する必要はない。
がん保険や年金保険、自動車保険に火災保険、経営者賠償責任保険、為替ヘッジに至るまで、同じことだ。保険と名のつく物は、損失を被ってもだれも経済的に困らないなら加入する必要なないと覚えておいてほしい。
もちろん、人生には大小様々なリスクがある。どれくらいまでの経済的リスクをあなたは許容できるのかが保険を考えるポイントだ。
そのため、その人に合った保険というの、1人1人すべて異なる。
決して『平均的』とか『みなさんこういうのに入っています』などという言葉に踊らされてはいけない。
3 結婚したときの保険の考え方
ここまで読んでくれたあなたは、十分に保険に対する警戒心を持ったことだろう。ぜひそのまま警戒心を持って読み進めてもらいたい。『必要な場合』、『必要ではない場合』という2語を意識しながら読み進めてもらいたい。
さて、結婚したときの保険の考え方は主に以下のパターンに大別される。
①結婚後、まだ子供がいない場合で、共働きの場合。
②結婚後、まだ子供がいない場合で、一方のみ働きに出ている場合。
③結婚後、すでに子供がいる、あるいは妊娠中で、共働きの場合。
④結婚後、すでに子供がいる、あるいは妊娠中で、一方のみ働きに出ている場合。
子供がいるか、収入の状況がどうなのかは生命保険・医療保険を考える際の基本的な手がかりだ。
ただし、医療保険はどのパターンでも不要だ。
私が医療保険が不要だと考える理由は下記記事のほうにより詳しく書いているので参考にしてほしい。
3-1, 結婚後、まだ子供がいない場合で、共働きの場合の生命保険
この場合は、典型的にはセールスから下記のように勧められる。
子供がいないので大きな死亡保障は必要なく、葬儀費用の準備と貯蓄を兼ねて300万円程度の終身保険に加入しましょう。
低解約返戻金型の終身保険なら、保険料も抑えられて経済的です。
医療保険は入院日額1万円ほどの終身医療保険がおすすめです。保険料の払い込みは老後に負担がかからないように60歳までの払い込みがいいでしょう。
がん保険もいまの内から終身がん保険に加入しておいたほうが、保険料が安くオススメです。
ちなみにあなたのパートナーにもほぼ同様のものを勧められるだろう。
さて、上記のようなプランは果たして有用なのだろうか。
私の結論は『この状況で生命保険、医療保険など一切不要!』だ!
これはまだあなたが何も保険に加入していなくても結論は変わらない。
基本に立ち返ってみよう。
2-2で見た『あなたが保険に加入しないと困る人がいるのかどうかを確認』を見てみる。
果たして、子供はまだいない。どちらも収入がある。
この状態で葬儀費用も準備できないほどなのだろうか。
入院・手術をして健康保険の自己負担分を支払えないほどなのだろうか。
がん保険も同様だ。
夫婦のうち一方が、働いているといってもパート収入程度だったら考慮の余地はあるが、互いにしっかりとした収入がある状態で、今挙げた程度にそえる貯蓄もできていないのならば、それは保険を検討する以前にあなたたちの出費を見直さなくてはならない。
夫婦のうちどちらかが亡くなろうが、入院しようが、手術しようが、たいして困らないはずだ。互いに安定した収入があるのだから。
また、医療保険に加入するにしても、終身医療保険など論外だ。医療保険はとにかく環境変化に弱い商品だ。5年・10年したらその商品はかなり古臭くなっている。古く役に立ちにくくなるとわかりきっている商品を終身契約するなど、愚かな人のやることだ。
まったくあせる必要などない。今のあなたはまだ保険加入を検討する時期にないのだ!
3-2, 結婚後、まだ子供がいない場合で、一方のみ働きに出ている場合の生命保険。
どちらかが収入の大部分を担い、もう片方のパートナーは家事などを担っている場合だ。
いまどき、子供なしでこのような状況を許容する人がいるのかはここでは問題にしない。
この場合、セールスから勧められる典型的パターンは以下のようになる。
収入を稼ぐ大黒柱が亡くなってしまったら、残された人は困りますよね?
そのため、大きな死亡保障が必要です。
入院手術も家計に大きな負担をかけるのできちんと備えましょう。がん保険も(略)
結局、医療保険・がん保険はどのような人でも勧められるだろう。
この場合でも、収入が高い方のパートナーが亡くなった場合に備える必要があるかと言われれば、そうとも限らない。
子供がいない場合、パートナーが亡くなってしまっても、残された人は働けばよい。
医療保険も不要だ。入院・手術で費用がかかることは、ただちに家計に影響を及ぼすほどのリスクではない。
問題は稼ぎ頭が何らかの障害により、長期間にわたって就業不能になってしまった場合だ。私はこのようなリスクを『生きるリスク』と呼んでいる。死亡してしまうのも経済的にはリスクだが、収入がない状態で生き続けるのも経済的には多大なリスクだ。
重篤な精神疾患にかかったり、要介護状態になった場合をイメージするとわかりやすい。このような状態になってしまうと、収入はなくなり、介護費用がかさんでしまう。介護する人は、体力的にも精神的にも経済的にも追い詰められる。
このような、就業不能のリスクに備えるため、所得補償保険という分野がある。
ある程度長期間就業不能になってしまった場合に、年金形式、あるいは月額で保険金がもらえる。医療保険などより、所得補償保険のほうが万が一に備える保険としてはまっとうだし、必要な保障だ。
死亡保障の金額は夫婦で要相談かもしれないが、私は『不要です』とアドバイスする。所得保障保険は一考の余地がある。少なくとも医療保険に入るよりは大分マシだ。
3-3, 結婚後、すでに子供がいる、あるいは妊娠中で、共働きの場合の生命保険。
共働きでも、妊娠したら女性はほどなく休職しなければならないが、出産後、職場復帰して共働きをすることをイメージしてほしい。
子供がいる場合は、子供は自活できないため、万が一の備えは必要だ。共働きで収入に余裕があると言っても、夫婦どちらかが亡くなれば、残されたパートナーは家事・育児を一人で担わなければならない。
この場合、残されたパートナーの収入も下がるだろう。あるいは支出が増えるだろう。共働きの場合は死亡保障はそれほどいらないと言われる場合もあるが、収入減に備える程度の死亡保障は必要になる場合がある。このようなケースは最適なプランを組もうと思うと、詳細なヒアリングが必要だ。
明確に子供に対して責任があるので、慎重に検討してほしい。
一方医療保険は不要だ。
収入に直ちに影響がないなら、入院・手術に備える必要などない。長期間の就業不能には備える必要がある。これは医療保険では対応できない。先ほども出た、所得補償保険という別分野の保険になる。
盲点だが、長期の就業不能は家族にとって、死亡以上に大きなリスクだ。生きることにもお金はかかるのだ。
3-4, 結婚後、すでに子供がいる、あるいは妊娠中で、一方のみ働きに出ている場合の生命保険。
この場合は、1人に収入が偏っているので、その人が亡くなると、家計は直ちに危機となる。
最も手厚い死亡保障が必要なパターンだ。
残された人が生活できるだけの貯蓄があればいいが、一般家庭ではそのような家はほとんどないだろう。
必ず生命保険の検討が必要だ。
医療保険や所得補償保険の考え方は3-3と変わりない。
医療保険にムダ金を払うのだけはやめよう。
4, まとめ
結婚した!というだけでは保険加入の理由にはならない。
ヒモみたいなパートナーの面倒まできちんと見る!というなら、子供の有無によらず、保険に入る必要があるのかもしれない。
しかし、いまどきそのような夫婦は一部の金持ちくらいだろう。
そして金持ちなら、生命保険などそもそも不要だ。
よって、結婚時よりは、子供がいるかいないかで、真剣に加入を検討すべきだ。
経済的に、冷酷に言ってしまえば、子供は収入を稼がず、支出を増やす存在だ。
厳しいことをいうが、これは家計の現実である。
そのため、子供がいる場合に万が一、家計の大黒柱が亡くなったりすると、家計は直ちにピンチになる。
そのための生命保険だ。
『結婚したから保険に入ろうね!』などという周囲の声に惑わされてはいけない。
本当に必要なのかよく吟味してから、加入を検討しよう。