生命保険会社は次から次へと新たな役に立たないことを考える。
顧客にメリットがあることのように見せて、デメリット満載な制度を作ることにかけては一流だ。
最近は『ご家族登録制度』などというものが出ている。
『指定代理請求特約』の焼き直しのようなものだ。
ご家族登録制度とはどのような制度か
ご家族登録制度とは生命保険会社によって呼び名が多少異なる。
『ご家族情報登録制度』『家族登録制度』などと・・・まあ呼び名はよいだろう。
この制度は以下のようなものを意識して作られたものだ。
- 保険契約に関する詳細(契約内容・解約返戻金の内容など色々)は、いかなる事情であろうと保険契約者本人にしか伝えられない
- もし保険契約者が連絡がとれない事態(行方不明・災害など緊急時・昏睡状態など)となったとき、家族が契約内容を確認できない
- これでは家族が困る!
- 保険契約者の家族の連絡先をあらかじめ登録しておく
- 登録した家族は以下のことが可能
契約内容の照会、保険金等請求手続きに関する問い合わせ
生命保険契約は原則として契約者本人しか契約に関する手続きはできない。
保険金がないと資金繰りに困るような場合もあるだろう。
家族にとっては契約内容が分かったほうが助かる場面もあるのは確かだ。
登録できる家族の範囲
たいてい3親等以内の親族と規定されているのが多い。(生命保険会社ごとに異なる可能性はあるので要確認)
3親等以内の親族というと、曾祖父、ひ孫、叔父叔母、甥名あたりまでが範囲となる。
配偶者側も、同様の範囲が含まれる。
指定代理請求特約とご家族登録制度の違い
ご家族登録制度はできることは、契約内容の照会と、各種請求書を取り寄せるだけで、実際の請求手続きは行えない。
この点で、限定的ながら保険金等請求手続きを行える指定代理請求特約とは異なる。
逆に、指定代理請求特約は、保険金等請求を代理でできるだけなので、契約内容の照会等は行えない。
ご家族登録制度に大したメリットはない
見ればわかる通り、ご家族登録制度なるものに大したメリットがないのがわかるだろう。
請求書を取り寄せるだけなどということに意味など全くない。手続きできないことは変わらないのだ。
契約内容の照会も知っただけでは意味がないのだ。
メリットらしいメリットは、保険会社が契約者と連絡が取れない場合に、家族に連絡が行き、保険会社として安否確認をスムーズにできるということだろう。
ただし、それも契約者と登録した家族の連絡先(住所・電話番号・メールアドレス等)の内容全てが異なる場合に限られる。
連絡先に共通のものを使っていたらそこに連絡すれば足りることだ。
生命保険会社の真の狙いは訪問ネタと家族の生年月日と連絡先
生命保険会社は常に顧客にどのようにアプローチしたらいいか考えている。
もちろん生命保険を売るためのアプローチだ。
このご家族登録制度もその一環とみて間違いない。
ご家族登録制度の登録勧奨をきっかけに生命保険の販売
ご家族登録制度を利用するためには、契約者から手続きをしてもらわなければならない。
このようなメリットの薄い制度への登録を、わざわざ契約者が自発的に生命保険会社にするとは考えにくい。
よって、基本的に保険会社側から契約者へアプローチすることになる。
生命保険セールスなど契約担当者は次のように言うだろう。
『現在、当社ではご家族情報登録制度に登録してもらうよう契約者の方にお願いしております。』
『ご家族の情報を登録しておきますと、契約者様の緊急時などにご家族が契約内容の確認などができ、より生命保険がお役にたちやすいようにすることができます。』
『無料で、簡単な手続きで登録いただけますので、一度ご自宅に伺って手続きのご案内をしたいのですが、来週の火曜日はご都合いかがでしょうか?』
ちなみに、このような話法は生命保険会社内部できちんと用意してある。
そして、生命保険会社内部では『ご家族登録制度をきっかけにした生命保険の提案話法』などというものも用意されているだろう。
要するに、手続きを了承すると、うっとおしいセールストークがもれなくついてくるのだ。
そして、このような手続きをきっかけに生命保険に加入・見直しをする人はそこそこいるのだ。
以前に、指定代理請求特約ができたときも、指定代理請求特約の付加をネタに訪問アポイントを取り、きちんと生命保険のセールスをしたものだ。
要するに、生命保険会社がなんとか顧客にアプローチするために作ったのが真の狙いなのだ。
ご家族情報を登録するということは生命保険会社に個人情報を渡すこと
指定代理請求特約より今回のご家族登録制度が(生命保険会社にとって)優れている点は、家族の情報が取れることだ。
指定代理請求特約は、名前しかとれなかったので有益な個人情報とはならなかった。
しかし、ご家族登録制度は、名前・性別・生年月日・連絡先・住所を登録させるという念の入れようだ。
制度の趣旨から言って、確実に家族に連絡が取れるようにこれらの情報は必要なのは確かだ。
しかし、これだけの情報があれば、生命保険設計書を作成の上、登録された家族にも生命保険の提案ができる。
例え生命保険に加入しなくとも、見込み客情報として、生命保険会社のデータベースに残るのだ。
私ならば嬉々として登録された家族に対して設計書を持っていくだろう。
そして、また提案された家族も一定数、生命保険に加入し、または見直しを行うだろう。
全ては生命保険セールスが保険を売るため
生命保険会社は保険を売ることしか考えていない。
ご家族登録制度も確かに契約者やその家族にとって役にたつこともあるかもしれない。
無料の制度であるし損はないように見えるだろう。
しかし、もれなく生命保険のセールスがついてきて、必要のない生命保険に加入させられるリスクもあるのだ。
あなたが私のように生命保険の知識が深く、提案されても『こんな無駄な生命保険いらん!』と確信を持って断れるならよい。
しかし、たいていの人は生命保険セールスの言っていることの何が真実で、何が誇張で、何が嘘なのか見抜くことはできない。
ゆえに、ご家族登録制度なるものの案内があったら、『絶対に生命保険のセールスをするな!セールスしたら会社に苦情を入れた上で解約するからな!』と釘を刺しておけばよい。
そんなに強く言う自信がないなら、最初の案内があった時点で『手続き書類だけ自宅に送ってほしい』と言えばよい。登録しておいたほうがよいと思えば、セールスの心配がないコールセンターにでも電話すれば丁寧に教えてくれるだろう。
このように生命保険セールスの話をまともに聞くのはデメリットばかりだ。
そもそも、生命保険セールスから加入した契約があるのなら、無駄が多い契約な可能性が高い。
ご家族登録制度の話を聞く前に、解約してもっとよい生命保険に加入することが先決だ。
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