生命保険の加入のタイミングを見極めるのは実に簡単だ。結論から言ってしまえば、生命保険に加入するのは、養うべき人ができたときからだ。
さて、世の中には生命保険の加入のタイミングを誤った人がたくさんいる。
あなたもいずれかのパターンではないだろうか。
①自分が子供の頃、親が勝手に加入していた。
②就職したタイミングでセールスに勧められなんとなく。
③親戚、友人等がセールスで勧められて、なんとなく断るのが悪いから。
④結婚したタイミングでセールスに勧められなんとなく。
⑤子供ができたタイミングでセールスに勧められなんとなく。
⑥保険の更新時期にセールスに勧められなんとなく。
たいていこうしたパターンだ。
実際、生命保険を売る側としてもこのタイミングはよく狙う。
さて①~⑥の中で正解は⑤だけだ。事情によっては④もありうるが、正解じゃない。
あなたは、この記事を読んだあと、もう一度答え合わせをしてほしい。不正解の理由がよくわかるはずだ。
生命保険は若いうちに入るのが有利って言われるけど・・・
始めに言っておく。
加入年齢は、保険の必要性に一切関係がない!!
さて、生命保険の加入をいつするか・・・これを考えるために、一般的に言われることがある。
生命保険を加入するときの年齢を考えろ。
一般に生命保険は若いうちに加入したときのほうが有利と言われる。とくに終身保険など、保障の期間が長いほど差がでる。月当たりの保険料も、全期間で払う総額保険料も実際に若いほうが有利に見える。
ただあまり惑わされないほうがよい。
はっきり言って、年齢で有利不利などない。若いほうが亡くなったり、病気になったりするリスクが低いのだから、保険料が安くなるのは当たり前だ。保険料とは、リスクと等価で値段が決まっている。保険料が安いということは、保険金をもらえる可能性が低いということを意味する。保険料が高いということは、それだけ保険金をもらえる可能性が高い。
もし、若いほうが保険加入に有利ならば、保険会社は若い人が加入すると、損になるし、加入者は若い人ばかりになってしまうだろう。結果、保険会社は損失ばかりだすことになり最悪つぶれてしまう。もちろん、保険料を計算する人は最先端の数学を駆使する人の集団なので、年齢によって保険料の有利不利など作らない。
つまり、若いうちに、保険料が安いうちに・・・などと焦って加入する必要などないのだ。
まあ、契約年齢があがるかあがらないか微妙な時期に加入を検討する場合は、ちょっと焦ったほうがいいかもしれない。1日の違いで総額の払込保険料に結構な差がでるからだ。
しかし、必要もないのに若いうちから入っておけば有利!などというものではない。たいていの生命保険にかかわる人は若さを理由にやたら勧めてくるが、100%売る側の都合と思ってよい。
生命保険を損得で考える思考がそもそも論外?
保険は損得で考える商品ではない。
必要性でのみ考える商品だ!
生命保険は金融商品の一種だ。銀行預金も、株も、投資信託も金融商品だ。
生命保険を含む保険という商品が決定的に他とことなるのが、『お金が返ってくるか返ってこないかわからない』ということだ。
はっきり言って宝くじと仕組みは一緒だ。宝くじは番号に当選すればお金がもらえる。生命保険は亡くなってしまったらお金がもらえる。(本人はもらえないが・・・)
基本的にはただお金が出ていくだけの商品だ。ただコストをかけるだけの商品だ。
あなたはコストをかける商品を買うときに何を考えるだろうか。プリウスでもPANASONIC製冷蔵庫でも、子供のスイミングスクールでも、プレイステーションでも必要だから買うはずだ。必要じゃなかったら買わないはずだ。電気料金だって水道料金だって、もし必要じゃなかったら払わないはずだ。
保険も同じだ。
必要じゃないなら、入らない!必要なら、入る!
この意識を強く持ってほしい。
ここまでで、あなたは、保険は必要性のみで判断してよいと大分わかってきたかと思う。そして以下では、あなたが保険が必要かどうか、どうやって判断すればいいのかを解説していく。
生命保険の必要性を判断する4つの基準
4つの基準と書いたが、番号が小さいほど重要性が高いと思ってほしい。
①あなたが養うべき人がいるかどうか。
②あなたが持つ預貯金など金融資産の金額。
③あなたの世帯の収入の入り口の数。
④あなたの世帯のそれぞれの人の収入金額。
4つ書いたが、特に①がぶっちぎりで重要だ。ぶっちぎりというくだけた表現で書いてしまうほど重要だ。
では、順番に詳しくみていこう。
①あなたが養うべき人がいるかどうか
生命保険とは、加入者に万が一の事態があった際にお金がもらえる商品だ。これは、加入者が亡くなってしまった場合に、残された人が経済的に困ってしまう場合にのみ、強力な力となる。
困ってしまう残された人とは?
あなたが、配偶者・小さい子供を持っている場合、一番困る人は小さい子供だ。小さい子供は、自分でお金を稼ぐ術を持たないことが普通だ。何らかの事情であなたの配偶者に稼ぐ力がない場合は、配偶者も困る。
加入者が亡くなってしまった場合、残された人がお金を稼げない、稼げても生活をするに十分でない場合にのみ、生命保険は必要だ。残された家族、特にあなたの配偶者が十分に収入を得ているならば、別に生命保険に加入する必要はない。
まとめると、あなたが亡くなってしまった場合に、経済的に困ってしまう家族などがいるかどうかが、生命保険の必要性を判断する一番のポイントだ。
②あなたが持つ預貯金・株など金融資産の金額
いかに養うべき人がいたとしても、あなたがお金持ちなら生命保険に入る必要はない。お金持ちは相続関係で、生命保険の検討の必要はあるが、ここでは関係ない。あなたがすでに貯金を5000万円も持っているような、お金持ちであれば平均年収レベルの生活をすれば、生命保険の必要はない。
貯蓄の金額に応じて、生命保険の金額を考える必要があるのだ。
③あなたの世帯の収入の入り口の数。
簡単に言えば、あなたの世帯はお金を稼ぐ人がどれだけいるかということだ。『夫婦共働きで、実は不動産収入もある』という場合など、収入の入り口が多い場合、夫婦のうちどちらかに不幸があっても、生活していくだけならすぐに影響はないかもしれない。
一方、稼ぐ人が一人だけの場合、その人が亡くなってしまうと、生活の危機だ。このような場合、生命保険の検討が必要である。
④それぞれの収入金額
いかに、収入の入り口が多くとも、当然1つに偏っている場合は注意が必要だ。
夫の年収500万円、妻の年収100万円、不動産収入、年20万円では、収入が夫に偏りすぎている。夫に生命保険をかける必要があるだろう。
生命保険を検討する場合、収入の金額は当然考慮されてしかるべきだ。
モデルケースで生命保険が必要か不必要か、考えてみよう
ここまで、生命保険の必要性を判断するポイントを書いてきた。
最後にモデルケースをいくつか考え、生命保険の必要性を、私が判断してみる。参考にしてほしい。
ケース①
夫・年収500万円 妻・年収500万円 子・3歳 預貯金300万円
共働きのケースだ。
一見すると夫婦ともに十分な年収があり、どちらかが亡くなっても問題ないように思える。
生命保険はいらないと判断してよさそうだが、注意点がある。子供がまだ小さく、夫婦どちらかがいなくなると、子供の世話の関係で、それまでの年収が落ちる可能性があることだ。子供の世話を、それまでと同様にできる環境にあって、年収が落ちないなら、生命保険はいらない。
だが、年収が落ちるリスクがあるなら、夫婦ともに、減収分を支えられるよう、少し生命保険に入っておいてもいいかもしれない。
ケース②
未婚・独身 年収400万円
必要ない。養うべき人がいないからだ。
ケース③
夫・年収100万円 妻・年収700万円 子供・5歳 預貯金500万円
妻が亡くなるとアウトなケースだ。妻は必ず生命保険に入っていなければならない。
夫はすぐ就業できるような人ならよいが、そうでない場合は大きい保証が必要だ。
ケース④
夫・年収800万円 妻・年収0円 子供・20歳 預貯金1500万円
生命保険はもうほとんどいらなくなっている。未だに大きな保障がある場合は大きく削ってよいだろう。
もっとも、子供が就業できる見込みがない場合はその限りではない。
ケース⑤
夫・年収400万円 妻・年収0円 子供0歳
やや世帯収入が低いが、なんとか生命保険に加入するお金をねん出しなくてはならない。
0歳の子供をかかえたまま、妻が就業するのは難しいケースが多い。
夫が亡くなれば、生活はただちに危機になるだろう。
ケース⑥
夫・年収500万円 妻・年収400万円 預貯金400万円
生命保険、まったく不要!!どちらが亡くなっても経済的にまったく困らない。
今後、子供ができたら加入の検討余地がある。その場合はケース①と同様だ。
ケース⑦
夫・年収500万円 妻・年収100万円 預貯金5000万円
宝くじでも当たったのだろうか・・・
十分な金融資産があるため生命保険は不要だ。
どちらかというと、収入と支出の管理をきちんとしなければならない。
上記の7つのケースで、夫婦の年齢は敢えて書いていない。
面倒なのではなく、必要性を判断するにおいてあまり関係ないからだ。個別に相談を受ければ、当然年齢も考慮してプランを組むが、生命保険が必要かどうかにはあまり関係ない。必要なら60歳でも加入しなければならないし、必要がなければ25歳でも不要だ。
保険はコストだ。金食い虫だ。
必要ないなら加入しないで、他のことにお金を使おう。