あなたは2つ、2社以上の生命保険に加入しようかと検討しているかもしれない。
すでに加入している複数の保険の心配をしているのかもしれない。
そのときあなたの心配はたいてい以下の2点だ。
・2つ以上保険を契約して、何かあったら、どの保険からもちゃんと保険金がおりるの?
・そもそも同じような保険を2つ以上契約するのって意味あるの?
私の考える結論から言おう!
似たような生命保険・医療保険に複数入るのはやめなさい!
なぜか?メリットがほぼないばかりか、デメリットが際立つからだ。
場合によっては役に立たない場合すらある。
ここでは、同種の複数の生命保険に加入することが、あなたの役に立つのか立たないのかを見ていく。
あなたは気づかぬうちに、現在進行形で損をし、未来のいつか、書類や手続きの煩雑さに右往左往するかもしれない。
1. そもそも複数の保険に加入することは可能?
複数の保険に加入すること自体は可能だ。
お金がある限り、自動車保険を3つ、生命保険を5つ、火災保険を4つ加入することはできる。
ただし、注意点が2点ある。
1つ目は保険の対象1つにつき、かけられる金額が決まっていること。(保険の対象とは、例えば生命保険なら人1人、自動車保険なら車1台だ。)
2つ目は保険の種類により、保険金がおりる限度が決まっていることだ。
1-1. 保険をかけられる金額の上限
特に生命保険や医療保険にこの上限が設定されている。職業や健康状態、収入で上限が設けられる場合もある。
生命保険の場合そうした制限がない人でも総額で○億円などと上限がある。保険会社によって若干の差異はあるが2億円~3億円などという具合だ。医療保険でも、入院日額1万5千円が限度、などと決まっている。
このような上限が設けられている理由はそれほど難しくない。
保険金詐欺などの事件を思い浮かべてもらえばよい。世の中には悪い人間はいるもので、契約の上限がなければ、可能な限りたくさん保険金をかけて・・・・
それを防ぐために、契約額の上限が存在している。
通常はこの制限にかかるほど、多額の契約をする人はいない。
契約額が高くなれば、当然支払う保険料も高額になるからだ。
また、注意しなければならないのが、保険会社を分ければそれぞれの引受限度額まで加入できそうな気もする。
しかし、契約内容照会制度というものにより、加入者の情報は保険会社間で共有されているので、保険会社をまたいでたくさん加入しようと思ってもできない。
1-2. 保険金がおりる限度額
賢明なあなたは保険金がおりる限度額についてはより、注意を払う必要がある。
下記のような質問は、複数の保険にまつわる疑問として典型的な疑問だ。
『損害保険と生命保険に加入していてどっちからも保険金出るの?』
『火災保険2つ入ってるんだけど、どちらからも保険金出るの?』
自動車保険や火災保険など、損害保険分野の保険は実際の損害額を上限に保険金を支払う。生命保険や医療保険などは定額で支払われる場合が多い。
火災保険に2つ入っている場合は例として、下記のように支払われる。
建物の価額が2千万円で、火事で全損した。
A社の火災保険で1000万円、B社の火災保険で1500万円加入している。
この場合、受け取れる保険金は2000万円だ。家の価値以上に保険金を受け取れることはない。
万が一の場合、定額で払われる生命保険と大きく異なる。
生命保険と損害保険で保険金をもらう場合はどうなのだろうか。
例として交通事故に会い、5日入院し実費で2万円かかったとしよう。医療保険で入院日額1万円のものに加入していたとする。
このとき、事故の加害者側の自動車保険から実費分2万円もらえるだろう。(慰謝料は無視している)また、自分が加入している医療保険から5日分、5万円もらえる。
このように定額型の保険は、実損で補償するタイプの保険から独立して支払われる。もし定額型で入院日額5000円と1万円のものに1つずつ加入していたら、きちんと15000円×日数分もらえる。
2. 同種の複数の生命保険に加入することのメリット
同種の複数の生命保険に加入することで、リスク分散になる
何にたいするリスク分散か。
保険会社がつぶれてしまった場合のリスクだ。保険会社が倒産した場合、契約している保険契約は契約金額が削減される場合がある。
その削減度合いは、掛け捨て型か貯蓄型かで異なる。一般的に貯蓄型は削減幅が大きく、掛け捨て型は小さい。
そのため掛け捨て型は多くの保険会社で分散して契約しても、分散するべきリスクが小さいのであまり意味がない。
では貯蓄型はいろんな会社で契約してリスク分散したほうがいいのだろうか。
実際そこまでするなら、保険で貯蓄しようなどということをする前に、もっと安全、かつコストが低い投資先で貯蓄するべきだ。預金なら預金保険があるし、個人向け国債でも買っておいたほうが保険で貯蓄するよりよほど安全かつ効率的だ。
保険会社はその資産の多くを国債で運用しているため、個人向け国債が破綻するということは保険会社も破綻しているだろう。
しかし、特定の保険会社が破たんしても、直ちに国債が破綻するわけではない。
3. 同種の複数の生命保険に加入することのデメリット
複数加入することのデメリットはおもに3つある。
それも、メリットよりかなり強力な理由で。
3-1. 保険金を請求する際、面倒が増える
さあ!想像してみてほしい。
あなたは先頃、盲腸の手術で4日入院した。
あなたはA社、B社、C社と3社の医療保険に加入している。
合計すると入院日額1万円だ。
手術もしたから、もろもろ合計で14万円の給付金がおりるとほくそ笑んでいるかもしれない。
看護師の見送りを背に帰宅したあなたは、早速、保険給付金の請求をする。
まずは保険会社に問い合わせだ。
3社も電話するのか・・・
慣れない用語に戸惑いながら、なんとか3社分の請求方法が分かった。
後日担当者がそれぞれ来るらしい。
それらと会うスケジュールの調整も必要だ・・・なんて面倒な!
なんとか担当者と面談にこぎつけて、給付金の請求書を預かった。
まて、B社とC社は医者の診断書がいるらしい・・・
A社の分の保険証券はどこにあったっけ?
家の中をひっくり返す・・・・
どうだろうか?
ただでさえ慣れない保険金請求という作業に3社分あったとしたら・・・14万円のためならやるかもしれないが、2万円程度だったら?
診断書の請求を病院にしたら、黒字はほとんどないかもしれない。
契約が一つにまとめられていたならこんな苦労はない。
3-2. 生命保険の契約毎にコストがかかる
保険会社に支払う毎月の保険料とは下記のように決まる。
保険金を支払う準備に必要な保険料+保険会社の事務・人件費・契約にかかるコスト
1契約あたりにかかるコストというのは、保険契約の大きさに関わらず定額な部分がある。
例えば、ネット保険で有名なライフネット生命は、1契約の生命保険で250円程度の固定コストがかかっている。(2017/3/13現在)
気になる人は実際にライフネット生命のホームページで計算してみるとよい。
30歳・男性・10年契約の死亡保険という条件は変えず、契約金額を500万、1千万、2千万などと変え連立方程式を解けばよい。
ライフネット生命はかなり保障以外のコストを圧縮しているが、それでも毎月250円の保障とは関係ない固定コストがあるのだ。
これを2契約、3契約と複数契約すれば、保障と関係ないコストを無駄に支払う必要がでてくるのはお分かりだろう。
無意味に保険会社の利益になるようなことはするべきではない。
3-3. たくさんの生命保険のセールスがこんにちは!
こちらは理屈でなく、感情的にデメリットが大きい。私も生命保険を売る側の人間だったため、理解はするが・・・
生命保険を売る人間というのは、とにかく顧客と少しでもアクセスできる道があれば積極的に連絡してくる。
複数の保険、保険会社に加入するということはそれだけ、多くのセールスからアプローチを受けることになる。消費者側としてはうっとうしいことこの上ない。
必要な時だけ客から連絡する・・などという理屈は彼らには通用しない。アフターフォローの名の元、実に積極的に売り込みをかけてくる。
1社だけならまだしも、これが2社、3社と増えることが何を意味するか言うまでもないだろう。
気の弱い人なら、いちいち断るだけでもかなりの労力になるだろう。
まとめ. 複数の生命保険には極力加入しない!
ここまで、複数の生命保険に加入することのメリット・デメリットを挙げてきた。
全部読んでしまったあなたは、きっとデメリットのほうが圧倒的だということに気づいただろう。
すでに複数の保険会社に加入してしまっている人は、可能な範囲で見直しを考えた方がよい。請求の面倒さに目をつむるとしても、無駄にコストがかかる点は注意してもらいたい。
『保険の見直しどうすべきか分からない人はFPの無料相談をまず受ければ解決する』まだ、複数加入していない人はそのままでよい。
少なくとも、保険を増やさなければならないという事態になったら、上記のようなメリット・デメリットを勘案してほしい。