保険とは何かを理解すれば無駄な保険に入らずに済むという話

どうして世間の人は無駄な生命保険に入るのか?

私は保険セールスをしている頃から、今に至るまでこの問題について考えてきた。

あるときは、無駄な生命保険とわかりながら顧客に生命保険を売りつけ、あるときは無駄な生命保険であると伝え解約させてきた。

一様に消費者は『無駄な生命保険』とは何かをまるで理解していないかった。

『保険と言う金融商品・制度をきちんと理解していないからではないか?』

と思い立ってこの記事を書くことにした。

安心してほしい。

『金融商品』『制度』などとおおげさな言葉を使っているが、大したことは書かない。

『負債デュレーションと資産デュレーションが~』とか『トラッキングエラーが~』とか専門用語を使うつもりもない。

トランプ米大統領が使用する『あいつは下品だ!(日本語訳)』『アメリカファースト』とかその程度の言葉が理解できればよい。

結論から言ってしまえば『無駄な生命保険』かどうかを知るには以下の2つの条件を同時に満たしたときに、生命保険に加入すればよく、そうでなければ生命保険加入の必要はない。

『ある損害が起きると生活が破たんしてしまう』

『保険でしかできない』

保険とは何か

保険とは本来は多くの人がお金を少額ずつ出し合い、まとまったお金を作り出し、困った人、損害を負った人にお金を給付するものだ。

古くは中世ヨーロッパの職人ギルドの間で、ギルド員がお金を少額ずつ積み立て、病気やケガで困ったギルド員を助けるという制度が保険の原型とも言われる。日本でも江戸時代には同様のものがあったと言われている。

おそらく当時は病気やケガで働けなくなるということは生活の破たんを意味したのかもしれない。現代のように年金も健康保険もなかったのだろうから。働けなくなった人の莫大な生活にかかるコストをそうした、保険の原型となった制度が助けていたのだろう。

このように保険とは少額ずつ多くの人が負担し、大きな損害を負った人にお金を出すということだ。

『負担の少額で、いざもらえた時は大金』という機能が大事だ。

保険で備えるべきものと保険で備えるべきでないもの

『1万円積み立て、ごく低い確率だが1000万円もらえる』くらいのインパクトがあって初めて保険として意味がでてくる。

なぜか。

たいていの人にとっては、『生活が破たんする』ような出来事(働けなくなる、死亡する、自動車事故で損害賠償をする、家が火事で焼失するなど)が起きた場合、その損害を自己資金で対応することはできない。

働けなくなれば、収入が途絶えその後の生活費(何千万、場合によっては億)を補てんしなければならない。亡くなった時に遺族の生活費を考える場合も同様だ。自動車事故で相手を死亡させてば、賠償額は億を超える場合もある。家が焼失すれば、建て替えにまた千万単位でお金がかかるだろう。

そのため、少ない負担で大きな保険金がもらえる、生命保険・自動車保険・火災保険に加入するのだ。

逆に、以下のような場合はどうだろうか。

  • 入院して、15万円かかった。
  • ちょっと車をへこませてしまい板金代で8万円かかった。
  • 買った冷蔵庫が1年で壊れて、再購入に9万円かかった。

いずれも確率は低いが起こり得る事態だ。しかし、直ちに『生活を破たんさせる』ようなインパクトはないだろう(感情的には悔しいだろうが)。

このようなものに備えて、医療保険や車両保険、製品保障などに加入する必要性は薄い。

なぜなら、このような事象は起こる確率より起きない確率のほうが圧倒的に高いからだ。自分の資産で対応できる余地があるなら、保険料というコストがかかる以上、安易に保険で備えるべきではないのだ。

『保険がないと生活が破たんするかどうか』という観点は一つ覚えておいてほしい。

保険でしかできないこと

保険を買う際は、『保険でしかできないこと』をあなたが必要としているから買う、ということが鉄則だ。

例外は認めない!さもなくば保険料の無駄払いだ!

あなたは、アップルパイを作るために鉄パイプは買わないだろう。

リンゴを買うはずだ。

アップルパイを作るには必ずリンゴが必要だ(リンゴを使わないアップルパイがあるなら謝罪しよう)。

もしオレンジを使ってもアップルパイができるのならば、リンゴを買う必然性はかなり落ちる。ましてリンゴを使うよりオレンジを使ったほうが美味しく正確なアップルパイが作れるなら、もはやアップルパイを作るためにリンゴを買う意味はない。

アップルパイの例と同様に、保険でなくともできることならば保険を買う必要は無い。

最たる例が貯蓄だ。

貯蓄手段は非常にたくさんの方法がある。銀行預金から、国債、MMF、公社債投資信託、安全性の高いものだけでもたくさんの選択肢がある。

オレンジでアップルパイはできないが、銀行預金で貯蓄を行うことはできる。

ゆえに、貯蓄を保険で行う必要性はない。

ああ・・わかっている。

『保険の方が銀行預金より利率が高くて有利じゃないか』と言いたいのだろう?

たしかに、利率は有利かもしれない。

ほんの少しだけ。

しかし、貯蓄性保険は加入後しばらくは、解約したさい払った保険料の全額が戻ってくるわけではない。これは保険の販売時に手数料がかかり過ぎていることによる。

一方、銀行預金はそのようなことはない。預けたら翌日にでも全額引き出せるだろう。定期預金だと多少制限はあるかもしれないが、保険ほど露骨に返ってくるお金が減ったりしない。

このことで保険の貯蓄は『いつでも引き出せるわけではない』というリスクを負うのだ。もし、資金が必要になって解約しようと思った際に、元本割れを承知で解約しなければならない。

ほんのわずかな利率の違いのためにそのようなリスクを負うことはあまり良い方法とは思えない。

このように、『保険じゃなくてもできること』のためにわざわざ保険で対応する必要はない。

2つのポイントを抑えるだけで大半の生命保険はいらないと分かる

このように、冒頭示した通り下記2点が生命保険の必要性を判断する上で重要だと解説した。

『ある損害が起きると生活が破たんしてしまう』

『保険でしかできない』

これらのポイントを抑えれば、生命保険分野において、医療保険など不要だとすぐにわかるし、がん保険あたりも怪しくなる。終身保険や学資保険、年金保険は軒並み選択肢から外れ、残るのは死亡保険と、就業不能保険、介護保険くらいだ。

保険種類ごとの必要・不要の詳しい理由の解説はそれぞれ下記リンク先の記事を見てほしい。

以上により、あなたも『無駄な生命保険に加入しているかもしれない』とわかったはずだ。

もし、無駄な保険があると分かったら、今すぐ見直しをすべきである。

無駄なお金など1銭でも垂れ流すべきではない。

見直しをする際は必ずFPなど専門家に見積もりをとってもらうことが必要だ。

なぜなら、保険会社間で同条件のものを並べて比較してもらえるからだ。FPに一括で価格コンペをしてもらえると思えばよい。これを自分で全て調べて行うのは大変だ。何が同条件の保険か判断できないからだ。

以下の記事を参考に早速FPに相談し、無駄な保険を削減しよう。

『生命保険を見直し保険料を10,000円節約したい人は他にいますか?それも簡単に!』