本質が見えない人が掛け捨てか貯蓄かで生命保険を比較する

あなたは『生命保険は掛け捨てと貯蓄型を比較してどちらが得か』などと一生懸命悩んでいるのかもしれない。

そして、あれこれ商品や保険料を比較し『結局どっちにすればいいのかわからない!』などと悩んでいるのかもしれない。

ここであなたに教えよう。

『貯蓄性保険など検討するだけ無駄。もし保険が必要なら掛け捨ての保険に必要最小限で加入すること!』

なぜ、あなたが『掛け捨てか貯蓄か』で悩んでいるのかはある程度想像がつく。

というのも世間には『貯蓄型の生命保険の方が得!』とかいう狂信的な考え方がある。

こうした『貯蓄型保険万歳!』は主に中高年以上の人に多い。

曰く『掛け捨ての生命保険で何もなかったら損でしょ?』だそうだ。

生命保険で『何か』あったときは死亡したり病気で入院したりがんにかかったりだ。

『掛け捨ての生命保険で何もなかったら損』とかいう人は、不幸が降りかかってほしいのだろうか。

まあ、幸せとか不幸とか感情的な話はおいておこう。純粋にお金のやり取りで考えれば、『掛け捨ての保険』とは単に『当たる確率は低いが大金が手に入る宝くじ』と同じだ。当たったら『生命保険に入ってよかった』なのにいざ外れると『何もなかったら損』とか言うのだ。要するに結果しか見ない短絡的な人が『掛け捨ての生命保険に入ると損』とか言うだけだ。

しかし、『人生の先輩』である中高年以上から若い年代に向け『掛け捨ては損、貯蓄性のある生命保険がいい』などと素人考えで受け継がれるのだから、若い人も掛け捨てと貯蓄性の生命保険を比較して悩んでしまう。

しかし、生命保険にしかできない役割がきちんと分かれば、貯蓄性の生命保険に入る人は『他人の意見に影響されやすい本質を見ない人』だと分かるだろう。もちろん生命保険セールスの『貯蓄性生命保険なら損はありません』とかいう言葉に騙されることもない。

本稿で主張したいことは次のことだ。

貯蓄性生命保険など入る理由はない!生命保険は掛け捨ての保険の役割こそ、生命保険の存在意義で、その役割があなたに必要ないなら入らなくてよい。貯蓄性生命保険に入る理由などないから、掛け捨てか貯蓄かを比較するのは無意味だ!

貯蓄と掛け捨てを比較した時の違い

まず、貯蓄性生命保険とはなにか、掛け捨ての生命保険とは何かを確認しよう。

貯蓄性生命保険とは、契約の満期でお金が戻ってきたり、解約返戻金が多いタイプの生命保険だ。一方で掛け捨ての生命保険とは契約の満期で戻ってくるお金が全く無いか少ないものであったり、解約返戻金もほとんどないタイプの生命保険を言う。

簡単に言えばお金の戻ってくる程度の問題であって、お金が多く戻ってくるのが貯蓄性の高い生命保険で、少ないのが掛け捨ての生命保険だ。

さて、生命保険契約にお金が貯まるという状態は保険会社がサービスしてくれているのだろうか?

もちろんそんなことはない。貯蓄性の生命保険で戻ってくるお金は加入者が余分に保険料を支払い積み立てるだけにすぎない。

貯蓄性の生命保険と掛け捨ての生命保険の関係は以下のような式で表せる。

貯蓄性保険の保険料 = 掛け捨ての生命保険の保険料 + 積み立てるための保険料

貯蓄か掛け捨てかを比較しても元は同じもので、加入者が余分にお金を出すか出さないかの違いしかない。

乱暴に言えば、貯蓄性の生命保険に入るのは、掛け捨ての生命保険に加入して、別途銀行預金するのと大差ない。

貯蓄性生命保険って存在意義ある?

この、『貯蓄性生命保険は掛け捨ての生命保険+銀行預金とほとんど差がない』という事実は重要だ。

貯蓄性生命保険はわざわざ選んで入る意味がないのだ。『掛け捨ての生命保険に入り銀行預金すればいい』という代替手段があるのだから。この時点で『貯蓄性か掛け捨てか』という比較は無意味になる。

『終身保険とかは相続対策で使えるだろ?貯蓄性保険にもそれしかできない機能があるじゃないか!』

ああ・・・おっしゃる通り。相続対策に使えるのは確かだ。もはやあなたが相続対策を意識しなければならないほど高齢者でかつ相続財産がたくさんあるなら、おっしゃる通り。え?違う?じゃあ相続対策で貯蓄性保険が使えるというメリットは関係ないのでは?

『銀行預金より貯蓄性保険のほうが利率がいいだろ?この低金利の時代、少しでも利率がいいところに入れるのが賢い資産運用だ!』

この言葉を言う人は『代替手段がある』という日本語が難しかったのだろうか?難しかったならその点は詫びたい。いや別に『掛け捨ての生命保険 + 銀行預金』の式の『銀行預金』の部分を『国債』に変えてもいいし『株式』でもよい。ああ『投資信託』でももちろんいいし『不動産投資』でもよい。リスクが少ない貯蓄を求めるなら『銀行預金』や『国債』、『公社債投資信託』でよいし、リスクを求めるなら『株式』や『不動産』でもよい。

貯蓄性生命保険程度のリターンとリスクは他の投資商品で代替できるのだ。

貯蓄性保険が『唯一発揮する特殊な効果』というのは存在していない。

掛け捨ての生命保険の唯一無二の役割とは?

貯蓄性生命保険に『わざわざ』加入する意味がないのなら、『貯蓄性か掛け捨てか』で生命保険を比較する必要は無くなった。と言うより比較する機会すらない。貯蓄性生命保険は選択肢からはずされるべきものだ。

しかし、『掛け捨ての生命保険』という金融商品は非常に特殊だ。何もなければお金はもらえないが、万が一の事態には大金がもらえるのだ。これを少ない負担で実現することができる。

この『何かあったら大金!』という機能は、株式にも債券にも投資信託にもない。貯蓄しても株式を買っても、『明日急に大金がある!』という事態はまずないが、保険にはそれがあり得るのだ。

人は生活する上で様々なリスクに直面している。車や自転車で他人を死亡させることもあれば、家が火事になるかもしれない。突然難病になり働けなくなり、それ以降の収入が途絶えたり、一家の大黒柱な人が突然亡くなり、生活費に困るかもしれない。このような、大金(○千万円、○億円)を支払うリスクは到底、貯蓄や株式、投資信託では確実に対処することは困難だろう。

しかし、保険はそれを可能にする。何もなければ役に立たないが、いざ何かあって、自分の力では到底対処できない事件に遭っても、保険が助けてくれるのだ。

この『普段は役に立たないが、自分の力ではどうしようもないリスクを肩代りする』というのが保険と言う商品の本質だ。生命保険はそれが『亡くなった際の生活費(総額何千万単位)』だったり『働けなくなった時の収入(同じく総額何千万単位)』を保障してくれる。

もしあなたがこのような巨額の費用がかかるリスクに直面しているなら、あなたは生命保険に加入する必要がある。逆に、大きなリスクに直面していないなら、生命保険の加入の必要は無い。

貯蓄か掛け捨てかで生命保険の比較はナンセンス

ここまでの話を総合しよう。

貯蓄性生命保険はそもそもわざわざ加入する意味のない商品だ。代替手段がいくらでもあることを明らかにした。

わざわざ加入する意味のない商品なら貯蓄性生命保険は検討の選択肢にすら入れる必要がなく、つまり掛け捨ての保険との比較の必要もない。『貯蓄性生命保険が特別な意味のあるものではない』と分かっている人は『掛け捨てか貯蓄か』の比較で悩むこともないのだ。

しかし掛け捨ての生命保険は他の商品では実現できない機能がある。万が一の時大金を一度に準備できる機能だ。

大きなリスクを背負う人は保険がそのリスクを肩代りしてくれる。

逆に言えば大きなリスクを背負っていない人や、リスクはあっても大きくないリスクの場合はわざわざ保険で準備する必要はない。

このあたりがきちんと理解できれば、無駄な生命保険に加入することもなく保険料の払い過ぎで貧乏になるということもないだろう。