生命保険の逆ザヤの話、「お宝保険」などと呼ばれる話。
いずれもバブル以前の遺産、負債の話と思われているのが一般的だ。
しかし、時代は前代未聞のマイナス金利時代。
保険会社にとって、プラスの予定利率の契約はすべてが「逆ザヤ」契約といっても過言ではない。
少しでも古い契約があれば、それはもう現在の預金利息などでは考えられない「お宝保険」なのだ。
そのため、生命保険会社の建前や嘘に騙され「お宝保険」をなくさないためにも、「金利」という金融の基礎知識を身につける意味でも「逆ザヤ」について知ってほしい。
生命保険を管理する上で最も覚えておかなければならない言葉の一つ「逆ザヤ」
そもそも『逆ザヤ』という言葉をご存知だろうか?
生命保険業界においては、保険会社にとっては悪しき負債で、病原菌のように保険会社の財務を悪化させるものだ。
そのウイルスの正体はバブル期やそれ以前に契約した長期の終身保険、年金保険などだ。
そのウイルスは保険契約者により少ない保険料を負担させ、より多くの保険金を支払わせるよう保険会社に要求する。
総額100万円の保険料で加入したのに、総額300万円の年金を契約者が受け取れるように、年金保険に魔法をかけるウイルスだ。終身保険にも同様に魔法をかける。
バブル期以前はこのような無茶な保険でも、それを上回る資産運用収益を確保できていたので、今から考えれば有利すぎる予定利率の保険が存在していた。
銀行預金ですら利息が、6%とか7%の時代だ。
そしてバブルは崩壊し、預金利息はどんどん下がり、有望な資産運用先はどんどん収益率を悪くしていく。
銀行預金なら、市場金利に合わせてどんどん預金利息を下げればよい。
長期の定期預金でも10年を超えるようなものはない。
しかし、生命保険や年金保険は20年、30年、40年と契約が続く。それも契約者に約束した予定利率は契約時のままずっと固定だ。
資産運用の収益がどんどん下がる中、契約者には約束した高予定利率を保障しなければならない。
これは保険会社の財務体質を猛烈に痛める。
会計学を学び始めた、歴史を知らない大学生が生命保険会社の財務諸表を見たら、「この会社の経営者ってアホだろwww」と思われても仕方のないレベルだ。
バブル崩壊後、この「逆ザヤ」で何社も倒産したり、吸収合併されたりしている。
そして、バブル崩壊からもはや25年が経つが、この「逆ザヤ」はいまだに解消されず保険会社の経営を苦しめている。
「保険会社が苦しい=契約者はうれしい」を頭に叩き込め!
さて、「逆ザヤ」により保険会社は毎年、毎月、毎日、毎分毎秒、損失を垂れ流し続けている。
これは、毎年、毎月、毎日、毎分毎秒、契約者に利益をもたらす契約が存在していることに他ならない。
昨今のマイナス金利が叫ばれる運用環境では、おおむね2015年以前の貯蓄性の保険は、程度の差こそあるが軒並み「逆ザヤ」契約だ。
古ければ古いほど、あなたの貯蓄性保険は「お宝保険」と呼ばれる。
生命保険契約において「契約の相手方が苦しいときは、もう一方はうれしい状況だ」ということは基本として抑えてほしい。
「逆ザヤ」問題の解消こそ保険会社の最重要経営課題のひとつ
保険会社によって、この逆ザヤをすでに損失処理している会社もあれば、そうでない会社もある。
すでに損失処理している会社は「当社ではすでに逆ザヤ問題は解消されました」などと強がっている。
すでに損失処理してしまった以上、これ以上の損失は出さないのだが、高予定利率契約は現実として残っている。
保険会社としては高予定利率契約を減らせば損失が減り、利益が増えるのだ。
そのため保険会社は、新規契約の獲得並みに営業目標を設け、逆ザヤ契約の消滅を図っている。
方法は多い。
①契約転換
②契約者貸付
③解約
④年金受け取り
保険会社の様々な勧誘でうっかり「お宝保険」を無価値にしないよう、それぞれの手口を解説しよう。
①契約転換
高予定利率契約の転換はトラブルの温床だ。
そのため以下の記事で詳しく書いているのでそちらを参照してほしい。
②契約者貸付
年金や終身保険、養老保険など貯蓄性保険の機能の一つだ。
おおむね現在の解約返戻金相当額の範囲内で、保険会社から貸付を受けられる。
貸付利率は契約の予定利率にやや上乗せされたものだ。
高予定利率契約の契約者貸付であっても、『一般のカードローンよりは断然低い貸付利率なので、資金需要がある場合はまず契約者貸付を使いましょう』などと保険会社から勧められる。
確かにカードローンよりは有利な場合もあるが、無闇に借りることは自分のお宝保険の価値を損なっていることになるので注意しよう。
生命保険の契約者貸付は転換すると清算できるが本当にそれでいいのか?
③解約
保険会社が解約を勧めることはあまりないが、こと「逆ザヤ」契約に関しては別だ。
解約させてしまえば、それ以降、保険会社が「逆ザヤ」に苦しむことはなくなるのだ。
解約すると解約返戻金が契約者に入るため、保険会社は顧客に現在の解約返戻金額を伝え解約するよう仕向けたりする。
200万円も貯まっていたらうっかり解約して現金化し無駄遣いしてしまうかもしれない。
また、様々な理由により「お宝保険」の契約者が苦情を入れてくることがある。
『担当者が訪問しない』だの『キャンペーンがない』だの、「お宝保険」の効力に比べたらミジンコのようにどうでもいいことでクレームをつけてくることがある。
保険会社からすれば、毎日損失を垂れ流している契約なのに、なお苦情を入れられたらたまったものではない。
しかし、真の生命保険会社社員というものは、ここで一計を立てる。
クレームを入れてきた、「お宝保険」の契約者を敢えて挑発するようなぞんざいな扱いをし、怒らせ、解約するよう仕向けるのだ。
本当に頭の悪い顧客は、本当に解約してしまうから驚きだ。
このように金融リテラシーのない人は、遅かれ早かれ、保険会社でなくとも、銀行や証券会社に食い物にされてしまうだろう。
もちろん賢明なあなたは、そのように感情で考え愚かな行動をとってはならない。
基本的に生命保険の転換の取消しもできなければ、解約の取り消しもできない。
④年金受け取り
③の亜種だが、現在の解約返戻金相当額を年金受け取りにして、『老後の年金の上乗せにしましょう』などと勧められる。
高齢者の漠然とした老後の生活資金の不安につけこむやり方だ。
「お宝保険」を解約したり、年金受け取りしたりするのは、銀行預金やその他金融商品を取り崩してから最後に行うものだ。
まとめ
以上のように、古い終身保険や年金保険は、あなたにとっては「お宝保険」、保険会社にとっては「逆ザヤ」契約だ。
自社の損失をなくし、利益を増やすため、保険会社は躍起になって、あの手この手であなたの「お宝保険」をなくさせようとしている。しかし、ここまで読んだあなたは、そこまで保険会社が躍起になっている理由が良く理解できたはずだ。
少なくとも、少しでも古い終身保険、年金保険を契約していたら、容易に転換、解約せず、保険会社が苦しむのを尻目に、利益を長く得ていけばよいということが分かっただろう。
それらは、株や仮想通貨など比較にならないほど、有利で安全な投資だ。
安心して、傲慢に保険料を払い続けてよい。