生命保険のアフターフォローと引き換えに失うものとは

大手の生命保険会社はたくさんのセールスを抱えている。

営業職員チャネルなどと呼ばれているが、この形態は非常にコストがかかる形態であり、大手生命保険会社の保険料が割高となっている一因となっている。(別に大手でなくとも、セールスをたくさん抱えている会社はどこも割高だ)

生命保険会社は定期的に『営業職員チャネルは引き続き重要だ』といった趣旨の発言をして、営業職員の存在がいかに世の中の役にたっているか宣伝する。

『アフターサービスの手厚さ』などといったキーワードとともに。

本記事では、生命保険会社の『アフターフォロー』が高い保険料に見合ったものなのか考察する。

保険料が高い会社と安い会社の差はどれほどか

生命保険会社が『当社はアフターフォローに力を入れていて~』などという場合は、裏側には『ネット生保等はたしかに安いのは認める。だが、ネット生保ではアフターフォローが手薄で、その点では当社は優位性がある』という主張がある。

ならば、インターネット系生命保険と、営業職員を多く抱えるような会社の生命保険の価格差はアフターフォローの差であるべきである。

まずは、アフターフォローの価値を探るため、インターネット系生命保険と、割高な生命保険会社の生命保険とで、保険料を比較してみよう。

会社間の価格差を比較するならば、定期保険で比較するのが最もわかりやすい。

定期保険は『保障期間中に被保険者が亡くなった場合、保険金がおりる。そして、掛け捨て』という非常にわかりやすい商品だ。

医療保険のように会社によって『保障内容が微妙に違う』という複雑さもない。

以下では、ネット系生保と営業職員を抱える生保との保険料差の一例を示したものだ。

某生命保険会社では、ホームページ上でパンフレットを載せており、契約例が記載されている。

30歳・男性・保険期間10年・保険金額2000万円・月払保険料4,980円(2019年9月現在)

さて、いつものライフネット生命のホームページで同条件で試算してみよう。

30歳・男性・保険期間10年・保険金額2000万円・月払保険料1,886円(2019年9月現在)

差が3000円程度あるではないか。

断っておくがこれはどちらも定期保険だ。違いと言えば、某生命保険会社の定期保険は解約返戻金があるタイプだが、30歳男性が加入する10年定期保険で、解約返戻金など雀の涙もいいところだろう。少なくとも3000円の保険料差を埋める理由にはならない。

もちろん、保険会社・年齢・性別・保険期間・保険金額で、保険料差のパターンは色々あるが、このようなあからさまにおかしい保険料差が存在していることも事実だ。

まあ、この月払3000円の差が、営業職員をかかえる生命保険会社の言う『アフターフォローが手厚い』ということなのだろう。

生命保険会社の言うアフターフォローとはどのようなものか

さて、ネット系生保と営業職員を抱える生保の間で、ある程度の保険料差があることは理解できたと思う。

では、アフターフォローとはいったいどのようなことをしてもらえるのだろうか。

契約担当者が定期的に訪問してくれる

大手を中心に営業職員を多数抱える生命保険会社は、顧客が生命保険に加入すると、『契約担当者』として、特定の担当者がつくことになる。

その担当者とは要するに、生命保険セールスたちである。

そしてそれらセールスたちは、会社から指示され、あるいは自発的に、自分が担当する契約者に月1回などと頻度にバラつきはあるが、契約者宅を訪問したり、電話連絡したりしてくる。

用事は特にない。

キャンペーンやアンケートの案内だったり、新商品の情報だったりする。

保険金請求など諸手続きの際には担当者がフォローしてくれる

顧客としては、ケガや病気などにより、実際に保険金請求をする際には手続きの仕方がわからないことがほとんどだろう。

そんなときは担当者に連絡すれば、請求手続きを丁寧に教えてくれる。

保険金請求に限らず、住所変更から名義変更まできちんとフォローしてくれるはずだ。

アンケートやキャンペーンなどで景品をもらえる場合がある

生命保険会社は年中キャンペーンやアンケートを行っていて、景品付きの場合もある。

担当者が持ってくるそれらキャンペーンやアンケートに協力していれば、何かもらえる・・・かもしれない。

生命保険の見直しなど担当者にすぐ相談できる

顧客の生活環境や家族構成の変化により、生命保険の見直しが必要になった場合は、担当者に連絡すればすぐに自宅に来てくれる。

そして、見直しのやり方について相談に乗ってくれるだろう。

以上が、生命保険会社がアフターフォローと呼んでいるものの内容である。

先ほどの例でいけば、3000円(しかも毎月)の保険料差にふさわしいものだっただろうか。

ちなみに毎月3000円を10年払い続けると、36万円になることも覚えておいてほしい。

生命保険会社がアフターフォローと呼ぶものは無くてもまったく困らない

このようなものを『アフターフォローが手厚く安心』とか言ってしまうのだから、生命保険会社はどうかしているとしか思えない。

インターネットや通販系の生命保険会社のものに加入してもまったく困らないような代物ばかりだ。

保険金請求や諸手続きはコールセンター等に連絡したほうが、確実・正確・迅速に手続きできる

担当者がいると、諸手続きの際やり方をきちんと教えてくれ安心だ、などと言われるが、そんなことはない。

どこの生命保険会社も顧客サービス用のコールセンターを用意しており、そこで手続きのやり方を聞けば、懇切丁寧に即座に教えてくれるだろう。セールスが主体の担当者などより、連日手続きばかり対応しているコールセンターの人間の方が質が高いのは言うまでもない。

当たるか当たらないかわからないキャンペーンなど不要

担当者が定期訪問するようになると、色々なキャンペーンの案内をされ、景品付きだったりするが、これは内部で生命保険に加入する見込みが高い顧客に優先的に配られる。

誰に景品が渡るかは抽選などではなく、セールス側で恣意的に決めているのだ。

ゆえに、当たらない人は永遠に当たらない。

担当者に生命保険の相談をしなくても、無料で質の良い相談が他で受けられる

生命保険会社のセールスというのは、その会社の商品しか扱えないので、顧客が見直しをしたいと思っても、提案できる幅に限界がある。

どうせセールスを受けるのならば、顧客としては選択肢が広いほうがよいだろう。

よって、生命保険の見直しをしたくなったら、保険ショップやFPにでも相談したほうが、質が良いのだ。

生命保険会社のアフターフォローサービスの致命的な欠点

上記のように、アフターサービスの内容に価値がほとんどないことが分かったと思うが、とどめとなる事実を教えよう。

契約担当者がすぐ入れ替わる

これら契約担当者は生命保険セールスが担っているわけだが、生命保険のセールスというのはノルマが非常に過酷である。

入社から2年続くセールスなど1割か2割程度である。

当然、契約担当者は頻繁に入れ替わる。

生命保険セールスの教育担当だった頃は、新人セールスの顧客への挨拶訪問などに同行したりするのだが、1カ月前に訪問した顧客の自宅へ、異なるセールスを連れて挨拶訪問、ということがザラにある。

これほど担当者が頻繁に入れ替わるのに、長期契約たる生命保険の担当者として役に立つのだろうか。

いや、先ほども言った通り、アフターフォロー自体それほど価値がないのだから、問題ないのだが。

契約担当者として生命保険の知識がない

『もはや仕事としてどうなんだ』と思うが、生命保険セールスというのは生命保険の知識をほとんど持ち合わせていない。

原因は、生命保険セールスは基本的に、『生命保険セールスになりたい!』という人を採用するのではなく、『セールスをやりませんか?』と会社や既存のセールスからお願いしてなってもらうのが基本だ。

口の悪い生命保険会社の職員は『合法的なねずみ講』などと呼んだりする。

当然、生命保険の仕事に対する意識が低いので、知識の研鑽に消極的なことが多いし、来るもの拒まずで入社させてしまうので、学歴が低かったり、日本語能力が怪しいものもいる。

まともな人が契約担当者になることもあるが、先述の通り、担当者の入れ替わりが激しいので、まともな人もいなくなってしまう確率が高い。

災害時に強調されるアフターフォローの大切さ

大きな災害が起きると、『生命保険会社の担当者がいてよかった』などという話がクローズアップされる。

『保険金が迅速に支払われて助かった』などという話も美談として語られたりする。

災害時には生命保険会社の幹部がここぞとばかりに『担当者制度の重要性』を語り始める。

このような話を聞くと、『生命保険はもしもの時に必要なものなのだから、災害のときにきちんと役に立つように、担当者がいたほうが心強い』と思うかもしれない。

しかし、それは別に担当者などいなくともなんの問題もないのだ。

顧客側から必要があれば生命保険会社に電話すればよいだけである。

保険金請求には時効(保険事故が起きたときから3年)があるが、災害後、1年も2年も生命保険会社に電話できないということは考えにくい。

その程度の期間なら生命保険会社はゆっくり待っていてくれる。

災害時の担当者の役割については、高齢者などは特に助かるのかもしれないが、そのために、ネット・通販系の生保より明らかに高い保険料を支払い続けるのは疑問が残る。

生命保険は役に立つ機会の方が少ないのと同様に、大災害が起こる確率もかなり低いのだ。

災害時に周囲の助けをもらえるようにしておきたいなら、近所の人と仲良くしておくほうがよほど良いだろう。

生命保険会社のアフターフォローなどまったく価値なしという結論

結果、ネット・通販系の生命保険会社と、セールスを抱える生命保険会社の間の大きすぎる価格差を説明できるような価値が、『アフターフォロー』と呼ばれるものにないことが分かっただろう。

内容的にも代替が効く内容であり、アフターフォローを担う担当者が頻繁に変わり、知識もないのであれば、事実上、『アフターフォローが手厚い』などと恥ずかしくて言えないはずだ。

つまり、もしあなたが、生命保険セールスから生命保険を加入した・加入しようとしているなら、それは無駄な保険料を払っているということである。

即座に見直す必要があり、見直しをすれば、かなりの節約が見込めるだろう。

2千万円の10年定期などという単純な保険ですら、2000円弱で済むところを5000円も払っていたら嫌だろう。

あなたの加入経路を思い出して、それが生命保険セールスからのものであったら、すぐに下記記事を参考に、FPや保険ショップに相談に行くべきである。

『生命保険を見直し保険料を10,000円節約したい人は他にいますか?それも簡単に!』

彼らが内容がそれほど変わらず、もっと安い保険を組んでくれるはずだ。