20代から生命保険に入ると得だって言うけどいくら入ればよいのか?

『生命保険は若いうちから入ったほうが得ですよ』などという営業トークが展開されている。こんな詭弁がまかり通っているせいで、世間の理解も『生命保険は若いうちに入ったほうがよい』になってしまう。

生命保険セールス達がなぜこのようなことを言うのか教えよう。

表の顔『生命保険は若いうちから入ったほうが保険料が安くていいですよ』

裏の顔『それしか説得する材料がないんだから、これで推してくしかないよな・・・』

しかも、生命保険を若いうちに入るのは得でもなんでもないということをセールス達が理解していないからなお驚きである。

後の長文を読む前にこれだけ抑えれば十分

自分で長文を書いておいてそれを無にするような行為だが、事実だから仕方ない。そもそも『20代のうちから生命保険に入る』のが損であろうとそうでなかろうと、そもそも生命保険が必要なければ

『生命保険には加入しない!以上!!』

で話は終わりだ。

『20代は生命保険にいくら加入すればいいの?』という問いに答えると『必要なければゼロ!!』だ。

これが理解できればこの記事の目的の9割は達成した。加入しないという選択をしていれば生命保険の細かな仕組みなどどうでもよいのだ。あなたは航空機の整備士になるわけでもないのに、飛行機がどのように作られ、どのような部品が使われているかなど知る必要はないだろう。

ここから先の文章は、『若いうちから生命保険に入ると損ですよ』ということを熱心に解説しているに過ぎない。ああ・・・あなたがもし『自分にとって生命保険が必要かどうかわからない』というなら記事の最後に飛び、そこからリンクをたどるとよい。

もし本当に若いうちから生命保険に入るのが得だとしたら?

『20代のうちから生命保険に入ると保険料が安くて得ですよ』などというセールストークはまったく嘘だということがすぐに証明できる。生命保険を含んだ金融商品は基本的にゼロサムゲームといい、誰かが得をすると誰かが裏で損をしているという商品である。生命保険という商品はお金を集めてまた別の人にお金を移しているだけの取引なので、生命保険自体は何も価値を生み出していない。

さて、もし生命保険が『20代のうちから入るほうが得』な商品だったとしたらどうなるか。当然そのような生命保険会社に20代の加入者が殺到し、20代の契約者が得をしていく一方で、他の年代の契約者たちは損をする。損をするとわかっている契約者は当然解約していくだろう。すると20代の契約者ばかりになり、彼ら全員が得をするのだから、もはや損は生命保険会社が引き受けるしかなくなる。最終的にその生命保険会社はつぶれてしまうだろう。

このように本質的に『20代のうちに入ると得をする生命保険』を発売したら生命保険会社が潰れてしまうため、生命保険会社はそのようなことはできないのだ。誰が好き好んで自分は損失を垂れ流しながら他人にお金をあげるというのだろうか。せいぜいビルゲイツなどの慈善事業家くらいだろう。

生命保険に若いうちから入るのは得でもなんでもない

実際ネット系の生命保険会社のホームページで試算してみると、確かに若いうちに入ったほうが一か月あたりの保険料支払いは安い・・・ように見える。20歳から10年の期間で定期死亡保険に1000万円加入するのと、40歳から定期死亡保険1000万円加入するのでは2倍から3倍くらい保険料に差がある。

しかし、これは死亡率を考えれば当たり前の話で、保険料が安いということはそれだけ保険金が下りる確率は低いわけで、保険料が高ければそれだけ保険金がおりる可能性が高いということだ。
値段が1000円で、平均700円の当選金が期待できるくじと、値段が10000円で、平均7000円の当選金が期待できるくじを比較しているようなものだ。

若いうちから生命保険に入るのはむしろ損?

生命保険の価値を『保険金が平均どれだけもらえると期待できるか』と考えるだけで、安い保険料はそれなりだし、高い保険料もまたそれなりになる。若いからといって別に得でもない。
それどころか、必要もないのに若いうちから生命保険に加入すると、むしろ不利になる。

私たちが支払う保険料は、以下のように計算される。

生命保険の原価 + 保険会社の運営経費

生命保険の原価とは、契約者が『平均してもらえると期待される保険金』の金額に一致する。先の宝くじの例で言えば、1000円の宝くじの値段のうち、700円が宝くじの原価となる。宝くじの運営者はくじ1本あたり700円の当選金があたるのだから、当然その金額は値段に含めなくてはならない。そして宝くじを運営するための経費(人件費だとか販売手数料だとか)や利益を乗せて宝くじの値段が決まる。

生命保険もまったくこれと同様だ。

さて、どのような会社も運営経費というのは固定費部分と変動費部分がある。売上や活動の大小にかかわらずかかるお金が固定費で、売り上げの大きさによって変化する経費が変動費だ。

生命保険事業で言えば、契約1件あたりで、例えば紙代などは5000万円の契約だろうと1000万円の契約だろうと同じ申込書をするのであれば紙代は一定だ。システムに入力するのも1000万円という数字と5000万円という数字に労力の差はほとんどないだろう。一方契約が大きくなれば、それだけセールスに払う歩合給が増える。この部分は明確に変動費だ。

さて、若いうちから入ると、見た目の保険料支払いは安いが、保険料全体に占める固定費の割合が多くなることは分かるだろうか。

先の宝くじの例でいけば、どのような値段の宝くじを売っても固定費は50円だったとしよう。1万円の宝くじが売れればくじの値段の0.5%が固定費だが、1000円の宝くじであればその割合は5%に上がる。

一般に物の値段は安くなるほど、固定費の割合が増えて、事業者にとっても消費者にとっても旨くない話となる。

生命保険も当然このようになる。

実際の保険会社による生命保険の経費率を見てみよう

ライフネット生命という会社が、私たちが支払う保険料の経費率を公表している。

ライフネット生命の保険商品における保険料の内訳(https://www.lifenet-seimei.co.jp/about/detail/05.html)

それによると同じ定期死亡保険でも20歳で加入する場合と30歳の場合を比較すると、なんと若いうちに加入するほうが、支払う保険料のうち経費に回る割合が高いではないか。実際の保険会社が公表している情報からも確かに若いうちに入るほうが不利だと言っているのだ。

若いうちは生命保険に入らないほうがよいのか

これまで見たようにいかに若いうちに生命保険に入るのは損だとしても、必要に駆られれば入らなければならないのは言うまでもない。結婚して子供ができれば、20歳だろうが50歳だろうが、生命保険が必要になる可能性は高くなる。しかし例えばあなたが独身で、生命保険が必要ですらないのに『若いうちから入るほうが得』などというごまかしに乗せられて生命保険に加入してはいけないということがわかっただろう。

得だろうが損だろうが、必要もないのに生命保険に加入すること自体がそもそも論外なので、このようなことを気にする必要もないのだ。まあ、もし生命保険に入って得をする余地があるなら、必要がなくても加入する意味もあるのだろうが、今やその希望は完全に打ち砕かれた。一方必要となってしまったら、損だろうがなんだろうが加入せざるを得ない。

ここで問題になるのは、『生命保険が自分にとって必要かそうでないか』だ。ここは生命保険を検討するうえで最も大事な部分なので、メインコンテンツで解説している。気になる医療保険が必要かそうでないかもバッチリだ。

全て読むことであなたがセールスにいつの間にか騙されるということもなくなるだろう。