生命保険で10年定期は本当に悪いものなのか

生命保険セールスが顧客に生命保険の見直し(他社からの乗り換えを含む)を提案するときの、典型的なセールストークがある。

『更新型の生命保険は、更新時に保険料が一気に上がります。若くて保険料が安いうちに保険料がずっと変わらないタイプに見直しましょう』

思えば、私もよくこのようなセールストークを使ったものだ。

そして『生命保険は更新型は悪で、更新がないタイプは善』という誤解が広がってしまった。

これは、正しい時もあれば間違っているときもある。

ちなみに私が現在加入している生命保険は、がん保険の部分が10年更新型で、死亡保障の部分が50歳で満了するものだ。

なぜ10年定期の生命保険は悪者になったのか

生命保険が現在ほど競争が激しくない時代(今もまだまだぬるい環境で競争しているが)は、保険種類もそれほど多くなく、似たような商品ばかりだった(現在では複雑化し保険が余計わかりにくくなった・・・)。

一世を風靡した保険種類が、『定期保険特約付終身保険』という生命保険だった。

これは、終身保険を主契約とし、大きな死亡保障が必要な間、掛け捨ての定期保険を特約で上乗せするというものだった。

例えば、30歳で加入し、終身保険部分は保険金額500万円だが、60歳まで2500万円の定期保険特約を付け、事実上、60歳までの死亡保険金額は3000万円とし、60歳以降は終身保険部分の500万円が死亡保障が残るというものだ。

そして、定期保険特約部分は10年ごと、あるいは15年ごとに更新し、そのたびに保険料が再計算される。

もし、定期保険特約2500万円を同じ金額で更新すれば、保険料は間違いなく上がる。

昔はこのように、大きな死亡保障は更新型ばかりだった。

しかし、更新型は更新時に大きく保険料が上がるので、顧客にとって負担感が一気に上がる。ここをついて、更新時は『生命保険を見直しましょう』という営業攻勢を多くの生命保険会社がかけるものだ。

そのとき使われるのが冒頭のセールストークである。

このセールストークのせいで、『更新型は良くない』という印象がすっかり植えつけられてしまったのだ。

10年定期で更新しながら生命保険を組むより30年定期で組んでしまったほうが得?

同じ30年間の生命保険をかけるにしても、10年ごとに更新して30年の生命保険を組むより、『間に更新のない30年の契約』として組んでしまったほうが、総額で支払う保険料は安くなる。

イメージ的には以下のようになる。(厳密な保険料は保険種類、会社によってことなる。)

①30年定期

30年間ずっと毎月2万円の保険料(30年間で総額720万円支払う)

②10年更新型で30年間

最初の10年は毎月1万円の保険料、次の10年は毎月2万円の保険料、次の10年は毎月4万円の保険料(30年間で総額840万円支払う)

更新型がきれいに倍々で保険料が増えていくわけではないが、保険金額が途中で変わるなどしなければ、一般的に更新型のほうが、上記のイメージで支払う総額が多くなってしまう。

更新ごとに契約コストや人件費がかかることを考えても、更新型の方が消費者にとって損なのは確かだ。数字上は・・・

10年定期の生命保険は意外に便利

それでも私が加入しているがん保険は10年更新型だ。(私はがん保険は不要論者だが、やんごとなき大人の事情で加入しているものだ)

むしろがん保険に加入する場合は5年くらいの更新型でもよいと思っているくらいだ。

なぜか。

医療保険やがん保険は10年もすれば商品内容はかなり変わっている。

それは医療の進歩により求められる商品が変化するからだ。(私が医療保険やがん保険を不要と考える理由の一つともなっている。
例えば医療保険の例はわかりやすい。

古くは医療保険は20日以上入院しないと保険金がおりないという商品が多かった。(わたしはこの医療保険のほうが保険として良いものだと考えている)

それが、医療の進歩によって入院日数はどんどん短期化し、20日も入院しない人が増えたのだ。

そのため短期間の入院でも保険金が出るような商品が開発され、古い保険は発売停止になっていった。

このように医療が進歩すれば、求められる保険商品も変わる。入院・手術の保障などというのは、そのときの医療技術の状況をもろに受けるだろう。

今後、医療がさらに進歩すれば、入院日数はさらに減り、手術はどんどん行われなくなっていくかもしれない。

このようなリスクがある中、長期の保険を組むと、後々保障が役に立たなくなる恐れがある。

医療保険やがん保険などは、ある程度保険商品が変化し、見直し前提で考えるものだと思っている。

更新型は全期型より、総額で支払う保険料は確かに高いが、初期に支払う保険料は更新型のほうが安いのだ。

見直し前提ならば、更新型で初期に支払う保険料が安いほうがよいではないか。

まあ、そもそも医療保険やがん保険は、私のようにやんごとなき大人の事情がなければ不要なのだが。

10年定期では具合が悪いのが死亡保険

逆に死亡保険は医療技術が進歩しようとも、商品性は変わらない。

大きな死亡保障を必要とする年代の死亡率はそれほど大きく変化しないからだ。

よって死亡保障の場合は10年定期で更新型にすると、総支払額が大きくなってしまうデメリットが際立ってしまうのだ。

ゆえに死亡保険を組む場合は、あらかじめ必要な年数をきちんと決め、更新なしで組んでしまうとよい。

だから、私は死亡保障は加入した時(27歳で子供ができた)に50歳満了(ちょうど子供が22歳頃で経済的に独立する年齢)としてしまった。

この先子供が生まれたら、ただ死亡保険を足すだけで、すでに加入した契約をいじるつもりはない。

10年定期の生命保険は必ずしも悪いものではない

以上のように、10年定期を中心とした生命保険は必ずしも悪いものばかりではない。

医療保険を終身で組むほうがよっぽどリスクが高いと思える。

『掛け捨ての終身保障の生命保険に入る人は後先考えない人と判断できる理由』 『警告!生命保険は終身の保障に見直ししてはいけない!』

保険種類やあなたの価値観・財産状況により10年定期でよいのか、全期型でよいのか、相性の良し悪しがあることを忘れてはいけない。

私のように生命保険の専門家でも、使い分けをしているのだ。

死亡保険は全期型と相性がよく、医療保険やがん保険は更新型と相性がよいという考え方で一度見直しを検討してみてはどうか。

『保険の見直しどうすべきか分からない人はFPの無料相談をまず受ければ解決する』

少なくとも、医療保険を終身型で加入している比較的若い年代の人は、遠い未来まで見通せる超能力者でもない限り、『未来の状況は今と同じでなく変化する』という視点が欠けているようい思えるので、早めに見直したほうがよい。