1000万円の生命保険に加入するなんて全くの無駄

生命保険のモデルプランや、『とりあえず』で加入するものとして、定期保険1000万円というものがある。

被保険者(保険の対象となっている人)亡くなった時に、保険金受取人に1000万円支払われるという単純な保険だ。

私たち消費者は生命保険のことがよくわからないため、『とりあえず1000万円?』などと加入金額の目安としてこの『1000万円』と言う数字がよく使われる。

しかし、実際に1000万円で生命保険に加入する場面などほとんど存在しない。

本当に生命保険が必要な人は1000万円ではとても足りない

生命保険に入らなければならない典型的なタイプは、小さい子供を持つ世帯だ。

子供が小さければ小さいほど、その必要性は高くなる。

一般的に、子供が小さい世帯ほど、貯蓄が少なく、将来的にかかるお金(生活費はもちろん教育費など)も多い。

この状態で、一家の収入の大黒柱が万が一亡くなったら、生活は直ちにたちいかなくなるだろう。

このような状態に備えて生命保険に加入するのだ。

さて、必要な保障額はどの程度必要なのか。

必要な保障額の計算には公的年金制度から出る遺族年金などを加味するのが通常だ。

このような場合、私は一つの目安として、サラリーマンなら生命保険で年額180万円、自営業であれば年額240万円の保障額が確保できれば十分な保障と考えている(もちろん個々の事情は加味されるべきだ)。

さて、仮にこの目安の金額がある程度正しいと仮定するなら、1000万円の生命保険では、サラリーマンであればせいぜい5年分、自営業であれば4年分しかカバーできない計算になる。

もし子供が3歳などと小さければ遠からず生活が破たんしてしまうだろう。

このように、大ざっぱな計算でも、生命保険が必要な世帯にとっては、1000万円程度では保障額として十分とはとても言えない。

生命保険は必要ない人はとことん必要ない

逆に、生命保険が必要ない人はとことん必要がない。

『生命保険が根本的にいらない理由とは』

独身の人を思い浮かべれば特にわかりやすいが、亡くなっても誰も経済的に困らないならば、生命保険など準備する必要がない。

『独身の人が今すぐ生命保険の見直しをしたほうがいい理由』

よく生命保険セールスは、『お守り代わり』とか『葬儀代のために』などとわけのわからないセールストークを使うが、お守りに毎月何千円も支払う人は聞いたことがないし、葬儀代に1000万円もかからない。ネットで探せば20万円でできる葬儀などがザラにある。

『ちょっと死亡保障が必要』などという事態は通常の個人レベルではほとんど起こりえない。

かなり特殊な経済事情(自分が亡くなって経済的に困る人はいるが、それでもある程度の固定収入がある遺族など)だろう。

保険金額1000万円は価格競争力を比較するには便利

一般の消費者や、実際に加入を検討する際には1000万円という数字などお呼びでないことは分かったと思うが、実は私のような重箱のスミをつつくようなタイプでかつ生命保険マニアな人間には有用な数字である。

逆に言えば、そういう人間でない場合は必要ではないとも言える。

1000万円という保険金額は先も言った通り、(実際に役に立たないが)典型的なプランなため、各保険会社がパンフレットに契約例として載せている金額だったりする。

そのパンフレットの契約例を利用して、保険会社間で保険料の比較をするのだ。

特に保険料が割高な会社は保険料の詳細な試算機能をホームページで備えていないことが多い(備えていたら、あまりにも割高なことがバレるからだろう)。

そこで、パンフレットの契約例を利用して、詳細な保険料試算機能がある保険会社で、同じ条件で試算してみるのだ。

例えば、A保険会社はホームページ内のパンフレットに契約例として『定期保険1000万円・30歳男性・保険期間10年』などと掲載してあり、その保険料が3000円だったとしよう。しかし、A保険会社は詳細な保険料試算機能をホームページに備えていない。

そこでインターネット系のB保険会社のホームページを見て、保険料試算機能で、同条件で試算をしてみるのだ(インターネット・通販系の生命保険会社はたいてい詳細な保険料試算機能を備えている)。

同条件で試算した結果、B保険会社は1500円だったとしよう。

ちなみに定期保険は『被保険者が亡くなったら受取人に保険金を支払い、保険料は基本掛け捨て』という最も単純な生命保険だ。保険料比較が最も簡単な保険種類である。

A保険会社とB保険会社を比べて、同じような商品かつ同条件で比べているのに、保険料の差が出たらそれはそのまま、保険会社間のコスト構造の差だ。

この場合、A保険会社はB保険会社より圧倒的に非効率な運営をしていることになる。

例えて言うならば、セブンイレブンでは『南アルプスの天然水2リットル(私がよく買うミネラルウォーターの銘柄)』が100円で売っているのに、隣のファミリーマートでは同じものが200円で売っているようなものだ。

『南アルプスの天然水』では現実には場所によってそこまで価格差はでないが、生命保険では現実的に存在している。

このように、暴利をむさぼっているか、非効率な運営をしている保険会社をあぶりだすのに、典型的な契約例である1000万円の定期保険というのは非常に便利である。

何度もいうが、1000万円という生命保険は、実際に加入するためのものとしては選択肢にものぼらない。

1000万円の生命保険を必要としている人がいない

結局、保険金額1000万円などという中途半端な金額の生命保険を必要としている人などほとんどいないことが分かるだろう。

必要な人にとっては少なすぎる金額であり、不要な人にとっては過剰すぎる金額である。

逆に言えば、今1000万円の死亡保険がついている生命保険に加入している人は、直ちに見直すべき生命保険であることがわかる。

終身保険ならまだわかる(それでも終身保険はいらないと思うが、加入済みなら払うしかない)。劣化した貯蓄商品であると同時に、死亡保障としても多少は役に立つからだ。

だが、掛け捨ての定期保険1000万円ならば、少なすぎるか、過剰かのいずれである可能性が高いのはこれまで書いてきたことを見ればわかるだろう。

万が一の際に困ったことになるか、保険料が無駄払いになっていることのどちらかになっているということだ。

もしあなたが、加入している生命保険の状況をみて、『定期保険1000万円』などという保険に入っていたら、一度FPなど専門家の意見を聞いたほうがよい。

消費者が1人で判断するのは、知識不足から判断を誤る可能性があるからだ。

ぜひ下記記事を参考に、FPへ相談し、保険の見直しをすると、あなたの生命保険はかなり適正な形になるに違いない。

『生命保険を見直し保険料を10,000円節約したい人は他にいますか?それも簡単に!』