全期前納しても個人年金保険料控除は受けられるのか

個人年金保険料控除は一般の生命保険料控除と違い、受けるためのややこしい条件が多い。

詳しい条件は『個人年金保険料控除を受けるための条件について徹底解説』を参照してほしい。

その中でも個人年金保険契約においてたまに利用される全期前納の場合の扱いについて説明しよう。

全期前納の契約でも個人年金保険料控除を受けることは可能

全期前納は契約者から見ると一時払い契約のように思えるかもしれないが、実際には異なる契約方法だ。

全期前納は実際には定期的に保険料を長期間支払っていく契約である。たいていは年払いの契約だ。ここでは仮に年払いの契約を想定する。

そして全期前納は、全期間の年払い保険料分の保険料を保険会社に『一時預かり』の状態にして、そこから年払い保険料を取り崩していく形だ。まだ取り崩されていない未払いのお金は、まだ契約者のお金である。

一方で一時払いは全ての契約にかかる保険料を契約時に全て保険会社に納めてしまう。この時点で保険料の全ては既払込保険料で保険会社の資産運用に回される。

この年払いか一時払いかで個人年金保険料控除を受けられるかが分かれる。

個人年金保険料控除を受けるための条件に『保険料払い込み期間は10年以上かつ定期的に支払われるものであること』という要件がある。一時払いはこの条件に合致しないが、年払いはこの条件に合致しうる。つまり年払い契約の前期前納契約ならこの要件を満たすことが可能になり、他の条件が合致すれば個人年金保険料控除は受けられる。他の条件は全期前納とは特別関係のない条件だ。

全期前納の個人年金保険契約はどのように利用されるのか

全期前納をするということは、前払いするだけのまとまった資金が必要だ。最低額の個人年金保険に加入するにしても百万単位の前払い保険料になるだろう。

よって、ある程度資金に余裕のある40代、50代くらいの人が利用することがある。あとは、親が子供のために全期前納して個人年金保険に加入する契約も見受けられる。しかし、親子の間では契約名義的に個人年金保険料控除が受けられないので、前払い保険料を親から子に贈与して子の名義で個人年金保険に入る必要がある。その場合は子の名義で控除が受けられるだろう。

もちろんその際には贈与税が発生することに注意が必要だ。

全期前納契約はお勧めできない

全期前納はまとまった資金を保険会社に一時預けする制度だ。つまりまとまった資金が拘束されることを意味する。よってその資金は他の運用方法に回すことができない。それは機会損失である。

一時預けした前払い保険料のほとんどが年払いの保険料に充当されるのをただ待っているだけだ。これは非常にもったいない行為なので、できれば全期前納は避けたほうが良い。

ほかにも個人年金保険料控除について知りたい人は『ここを読めば個人年金保険料控除についてなんでもわかる』を参照してほしい。