個人年金保険料控除を受けるための特約を中途付加することは可能

なぜかわからないが個人年金保険に入ったのに個人年金保険料控除を受けられない契約をしている人がまれにいる。

個人年金保険料控除を受けるためには個人年金保険税制適格特約という特約が付加されていることが必要だが、それがついていないために個人年金保険料控除ではなく、一般の生命保険料控除の枠になってしまってせっかくの控除枠を無駄にしているのだ。

もしあなたが、そのような契約形態になっているのなら早急に直す必要があるだろう。

幸い個人年金保険に個人年金保険料税制適格特約を契約期間の途中で中途付加することは可能だ。

個人年金保険料税制適格特約を中途付加するための条件

ほぼありえないと思うが、契約している個人年金保険に条件を満たしているのにもかかわらず個人年金保険料税制適格特約が付加されていないのなら、手続きは簡単だ。

すぐに契約している保険会社に連絡し特約の中途付加の手続きを取ってもらえばよい。

問題は、条件を満たしていない場合だ。

個人年金保険料税制適格特約を付加できていないのは、2パターン原因がある。

契約の名義関係に問題がある場合

個人年金保険料税制適格特約を付加するための条件に契約者と被保険者と年金受取人の名義関係が重要になる。

年金受取人は契約者本人またはその配偶者でなければならないし、被保険者と年金受取人が同一である必要がある。

この形態を満たすのは下記4パターンしかない。

  • 契約者=被保険者=年金受取人=夫
  • 契約者=被保険者=年金受取人=妻
  • 契約者=夫、被保険者=年金受取人=妻
  • 契約者=妻、被保険者=年金受取人=夫

これ以外の名義関係の場合、個人年金保険料控除を受けることはできないのだ。親子間でもアウトなのだ。基本的に本人または配偶者しかダメだ。

これらの契約形態になっていない場合は、名義変更手続きを行うことで条件を満たすことができる。

例えば、以下のような契約形態を想定しよう。

契約者=父、被保険者=年金受取人=子

この場合は契約者を父から、子にしてしまえばよい。基本的に個人年金保険料税制適格特約は名義関係が全て本人であれば問題ない。もちろん保険料を名義変更後の契約者が負担できるのが大前提だが。

また、契約者と年金受取人が異なる契約(契約者=夫、年金受取人=妻、の場合など)だと年金受取開始時に贈与税が課されるので、その意味でも名義関係には注意を払おう。

名義変更手続きを終えたら、あるいは同時に個人年金保険料税制適格特約の中途付加手続きを行えばよい。

年金受取期間や年金受取開始年齢に問題がある場合

個人年金保険料税制適格特約を付加するための条件として、年金受取期間が10年以上であるか終身である必要がある。また年金受取開始年齢が60歳以上である必要がある。

個人年金保険には受取期間として『5年確定年金』というものがある。年金受取期間が5年のものだが、これでは条件を満たさない。

また、年金受取開始年齢が55歳など60歳以前である契約がまれに存在する。これも同様に条件を満たさない。

これらの場合は契約保全手続きで『年金受取期間を変える』『年金受取開始年齢を変える』という手続きができない。年金受取開始時に年金受取期間を変更できる場合はあるが、それでは手遅れだ。

その場合は対処方法として2つのパターンがある。

今ある契約を解約し新規で個人年金保険に加入する

条件を満たさない個人年金保険を解約し、新規で条件を満たす個人年金保険に加入すれば個人年金保険料控除を受けることが可能だ。
ただしこの場合は解約返戻金が既払い込保険料を下回ることがある場合があることと、解約前の契約と新規の契約では予定利率が変わる場合があることに注意が必要だ。

元本割れはもちろん注意しなければならないが、予定利率が変わることで運用商品としての魅力が下がることもある。控除を捨ててでも元の契約のほうが利率が良く結果的に有利なら、解約しない方がよい。現状ではほぼないが、今後予定利率が上がるようならあえて契約変更もありだとは思う。予定利率は消費者にとっては低いより高いほうが有利だ。

今ある契約を契約転換制度を利用し個人年金保険にする

これは裏ワザだが、保険会社に勤めているときに一度だけ取り扱ったことがある。個人年金保険を転換し個人年金保険にするという技だ。契約転換制度を利用すると新しい契約はまた新しい条件を設定することができる。5年確定年金を10年確定年金にすることも可能だ。そうすれば個人年金保険料税制適格特約を付加できる契約にできるだろう。解約して新規に入るのと効果は変わらないが、契約転換制度の方が解約返戻金などの資金のやり取りがなく面倒が少ない。

ただし解約して新規に入るのと同様、予定利率が変わるのでその点は注意を払う必要がある。予定利率が有利になるならすぐにでも転換してもよいのだろうが、2019年の現状そのようなことはないだろう。

個人年金保険料控除を受けられるのに、受けないままでいるのは非常にもったいない。控除を受けるための契約にするのはそれほどハードルは高くないので、名義関係や契約形態に問題がある人は早めに見直すことをお勧めする。

ほかにも個人年金保険料控除について知りたい人は『ここを読めば個人年金保険料控除についてなんでもわかる』を参照してほしい。