個人年金保険料控除を受けることにデメリットはあるのか

個人年金保険料控除は非常にメリットのある資産運用方法だ。

控除になる額はそれほど大きくないが、ほとんどノーリスクで節税できるのだから。

とは言ってもやはり『個人年金保険料控除にもデメリットがあるのではないか』と思う人もいるだろう。

心配性なあなたの疑問に答えよう。(一般の個人にとって金融商品を検討するときに心配性なのは重要な才能だ。)

1  個人年金保険料控除を受けると発生するデメリット

個人年金保険料控除の制度にも一応デメリットは存在している。

しかし現在の経済環境ではあってないようなデメリットだ。

個人年金保険料控除を受けるには個人年金保険に『個人年金保険料税制適格特約』を付加する必要がある。

この特約を付加すると個人年金保険の契約に3つの制限がかかる。

  1. 個人年金保険料税制適格特約を付加するための条件を満たさなくなるような契約内容の変更
  2. 基本年金額を減額した場合の返戻金が発生する場合、返戻金として戻らず払い込み満了後の年金原資に充てられること。
  3. 契約者配当金がある場合、引出しはできず、払い込み満了後の年金原資に充てられること。

字面だけ見ると大事のように見えるがたいしたことはない。②は契約前にやや注意が必要か。

1-1  条件を満たさなくなる内容の変更

①に関しては、そもそも個人年金保険は契約内容を変更することは少ない。あるとしたら名義変更くらいなので、契約時に名義変更など必要ないような名義関係にしよう。基本は『契約者=被保険者=年金受取人』だ。年金額を増額したり、特約付加をしたりは個人年金税制適格特約上の制限はない。

1-2  減額した場合に返戻金が戻らず年金原資にあてられること

②に関しては若干注意が必要だ。『基本年金額の減額』とは要するに契約の一部分だけ解約するということだ。個人年金保険なので基本的にはその際に解約返戻金が発生するが、それは受け取ることができない。解約返戻金は年金受取開始時の年金額の増加に調整される。よって、解約返戻金がほしいなら契約全体を解約するしかないということだ。

この点は大口の個人年金保険に加入しなければよい。小口の個人年金保険なら一部分を解約するという選択肢は少なくなるだろう。

そもそも私は個人年金保険は『毎月6667円までの掛金』しか推奨していない。この程度の小口の保険なら一部分のみの解約と言う選択はなく、資金が必要なら全部解約だろう。

とは言うものの、個人年金保険料税制適格特約を付加する際に最も注意を払うべきデメリットではある。

1-3  契約者配当金の引き出し制限

③に関しては、利率が高いころはデメリットたり得た。平成バブルの頃までは、生命保険契約は放っておいても契約者配当金がどんどんついていた。特に個人年金保険に死亡保険や医療保険の保障性の特約を付けている契約は何十万単位で配当金がたまる契約も珍しくなかった。

個人年金保険料税制適格特約を付けた契約はそのような配当金の引き出しに制限がかかっていた。最終的に年金を受け取る際の年金原資に充てられることになっている。

しかし今では契約者配当金など付くことの方が珍しい。付いたとしても雀の涙で引出しを考慮するような額ではない。生命保険会社の運用環境が好転してくれば配当金がつくかもしれず、その時は引き出しに制限がかかるが、その期待も現状では薄い。

現状では心配するようなことではない。

このように個人年金保険料控除を受ける際の個人年金保険料税制適格特約自体にはたいしたデメリットはない。しかし主契約になる個人年金保険という商品自体にはデメリットがあるので注意しなければならない。個人年金保険は非常に長期の契約だ。個人年金保険自体のデメリットを知らないと、契約後10年後、20年後に『こんな風にしなければよかった』ということになりかねない。

個人年金保険に加入すること自体のデメリット

個人年金保険は長期の契約だ。しかもその契約内容は非常に固定的だ。長期で固定的な契約ということは外部環境の変化に対して非常に弱いということを意味する。具体的にどのようなデメリットを考慮しなければならないかは『個人年金保険に入ることのデメリットって知ってる?』を参照してほしい。

個人年金保険料控除を受ける際のデメリットはほぼないが、個人年金保険の入りすぎには注意しよう

基本的に推奨できる個人年金保険の契約は毎月6667円の掛金の契約だ。

これが最大限個人年金保険料控除のメリットを受けられる金額であり、それほど大口の個人年金保険の契約ではない。

これを超えるとメリットは増えないのにデメリットばかり大きくなるので、これ以上の積み立てをしたい場合は他の金融商品を検討すべきだ。

最後に気になるのは個人年金保険に加入する際、『どこの保険会社がもっとも利率が有利か』だろう。こればかりは実際に見積りをとらない限りわからない。しかも、一度に複数の見積りをとれることが必要だ。この点は生命保険を専門とするFPに相談することで解決できる。

申込時に生命保険の売り手に会わなければならないならば、生命保険会社専属のセールスは避けたい。彼らは自社の見積りしか出せないからだ。面倒を避けるために最初から複数の会社を一度に比較できる売り手が望ましい。実際に個人年金保険をFPと相談しながら比較検討したい人は『個人年金保険の利率比較ならFPに相談するのが最も簡単』を参考にしてほしい。