個人年金保険は非常に有用な資産運用商品だ。
ただし、個人年金保険料控除を受けられる場合に限る。
個人年金保険料控除を受けるための条件を満たさない人や、所得控除するための所得額が少ないパートタイマーの主婦(主夫)や専業主婦(主夫)などは個人年金保険に加入する意味はない。
専業主婦(主夫)などが個人年金保険に加入する場合の注意点については『個人年金保険料控除を主婦が受ける際の注意点!旦那の控除に反映させるのは可能?』を参考にしてほしい。
また、個人年金保険料控除の枠は、掛金ベースで高々年間8万円(毎月6667円)だ。
毎月の保険料で6667円以上の個人年金保険に加入すると、6667円を超過する部分は個人年金保険料控除には貢献していない分となる。
その部分は事実上個人年金保険料控除がない個人年金保険ということになる。
これら、個人年金保険料控除が効かない部分の個人年金保険の加入はメリットが少なく、他の金融商品で貯蓄するのと大差がない。むしろデメリットばかり増えることに注意しなければならない。
※個人年金保険料控除の対象になる掛け金の部分とそうでない部分のイメージ
個人年金保険はいざというときに換金しにくい
個人年金保険に限らず生命保険は契約後しばらくの間は、解約した際に元本割れするのが当たり前だ。
昔のように予定利率が高ければ元本割れする期間も長くはないが、今のように低利率だと年金受取開始年齢が近くなるまで元本割れする可能性がある。
※個人年金保険の総払込保険料と解約返戻金の関係のイメージ
そのため、個人年金保険に入る場合は基本的に途中解約を考えるものではない。
何かで資金が必要になっても個人年金保険を解約して資金を準備することに躊躇してしまうだろう。
事実上、長期間にわたって一定の資金が拘束されることを意味する。
個人年金保険は長期の契約のためインフレに弱い
個人年金保険は20年、30年の契約期間となることが一般的だ。
その契約は基本的に固定金利の契約と言える。中には変額保険のように変動金利的な商品もあるがそれはそれで別の問題がある。
固定金利の場合将来物価が上がった場合に、実質的に使えるお金が減ることになる。もちろん逆にデフレになれば今契約する個人年金保険はお得な契約になるわけだが、どちらに転ぶかわからないのでは将来の計画など立てようがない。
『インフレになったら解約すればいいじゃないか』と思うかもしれないが、先ほども言った通り個人年金保険は特に短期間の解約の場合元本割れのリスクがある。
資金が自由に動かせないということがここでも響いてくるのだ。
貯蓄は基本的に急な経済変動があっても対応できるようにいつでも換金できる体勢にあることが重要だ。
その点で個人年金保険はデメリットが多い。
個人年金保険は個人年金保険料控除がある部分についてのみ他の金融商品より有利
このように個人年金保険は純粋な貯蓄だと思われがちだが、資金の出し入れの自由度が低いことがリスクだ。個人年金保険に加入すると将来にわたって資産運用方法が拘束されがちになるというのはあまりいいことではない。株価が安くなったから株式投資をしようと思った際に『今解約すると個人年金保険は元本割れするからやめよう』などということになると、貴重な機会を逃すかもしれない。
不用意に個人年金保険に加入してあなたの選択肢を狭めるべきではないということだ。
しかし、一方で個人年金保険料控除だけは魅力的だ。個人年金保険自体の運用益とは別に節税メリットがあるというのは他の金融商品にない大きな強みだ。
毎月6667円までの個人年金保険に加入するのは特別なリスクを取る資産運用(株式投資とか投資信託とか)をしない人にもオススメである。
逆に言うと個人年金保険は月6667円以上加入する意味がないとも言える。
それ以上はデメリットばかり一方的に増えるからだ。
貯蓄だと思って2万円も3万円も個人年金保険に加入しないようにしよう。