アクサダイレクト生命が2019年9月11日より引受基準緩和型終身医療保険『アクサダイレクトのはいりやすい医療』を発売した。
『はいりやすい医療』とはとても分かりやすい名前だ。誰でもわかる。妙な愛称をつけるよりよっぽど良いと言うものだ。
生命保険はこのような分かりやすさが最大限重要である。
問題は引受基準緩和型保険(要するに病気でも入りやすい保険)は比較的高齢者にニーズがある生命保険なので、インターネット主力であるアクサダイレクトの客層に合うのかどうかという点は気になる。
まあ、私はアクサダイレクトのマーケティングまで心配する立場にはないが。
『はいりやすい医療』は本当にはいりやすいのか
告知事項を見てみると、以下の3点しかない。
- 現在、入院をしているか、または最近3ヵ月以内に、医師から入院・手術・検査をすすめられたことがあるか
- 過去5年以内に、(別表)の病気やケガで、医師の診察・検査・治療・投薬を受けたことがあるか
- 過去1年以内に、入院または手術を受けたことがあるか
引受基準緩和型にはよくあるような項目だが、やや厳しめな水準か。まあ通常の医療保険よりは入りやすいことは間違いない。
*別表は以下(出典:アクサダイレクトの公式ホームページ)
アクサダイレクト『はいりやすい医療』の保障内容
基本の内容が、入院・手術を保障する「Ⅰ型」と、入院のみを保障する「Ⅱ型」がある。これも一般的な引受基準緩和型の医療保険と言える。
しかも1入院あたり60日限度もこれまた一般的。
はっきり言って、このままでは全く役に立たない。
引受基準緩和型医療保険に入るような人は、健康に問題がある人なわけだが、むしろ長期入院するリスクが高いのだから、そのあたりの保障がないと、意味がないのだ。
しかし特約でそれは保障できる上、なかなかに強力だ。それら特約の解説をしよう
アクサダイレクト『はいりやすい医療』の特約内容
①先進医療特約(緩和型)
役に立たない。給付金対象になる先進医療は望んで受けられるものではない。しかも実施例が少ないのだ。
②3大疾病保険料払込免除特約 (緩和型)
がん・脳卒中・心筋梗塞で入院したときに以後の保険料払込を免除するもの。保険料支払に余裕がある場合はつけるべき。ただし告知事項が増えるので、加入難易度が上がる。
③長期入院時一時金給付特約(緩和型)
はっきり言ってこれが目玉なんじゃないかと思えるほどの特約。61日以上入院すると、通常の入院給付金の対象外となる代わりに50万円給付するというもの。健康に不安のある人は長期入院のリスクが高く費用が莫大になり得るのだが、この特約でそうしたリスクを大きく低減できる。少ない負担で大きな保障という保険本来の役割を果たす特約で評価は高い。保険料次第ではつけるべき。
④入院時一時金給付特約(緩和型)
しょっちゅう入退院を繰り返す人には、1回入院ごとに5万円は魅力的かもしれないが、1年に2回が限度なので微妙。
⑤通院支援特約(退院時給付型)(緩和型)
入院し、退院した後の通院に対して給付金。通院もお金がかかるわけだが、正直5万円程度では焼け石に水。
⑥健康祝金特則(緩和型)
不要。祝い金とか言いながら、その分の保険料はきちんと乗せられるだけ。
⑦女性疾病入院特約(緩和型)
不要。日額給付はもはや時代遅れ。
問題は契約年齢が20歳から69歳までということだ。70歳以上が加入できるともう少し世間の役にたつのだが。
アクサダイレクト『はいりやすい医療』の保険料水準
アクサダイレクトという、保険料が安い水準である保険会社が発売する保険のため、他社の同条件の引受基準緩和型保険に比べ、割安であることが期待できる。
一般的に引受基準緩和型医療保険は加入する意味がほとんどない
保険という商品は生命保険だろうと、損害保険だろうと、『少ない負担で大きな保障』という保険に存在意義がある。
『保険料を90万円払って、高い確率で110万円もらえる』というようなレバレッジの効いていない保険は加入する意味がない。
預金しておいたほうが、手数料もかからないし、様々な事態に対応できるからだ。保険は『保険料は1万円で、低い確率だが1000万円もらえる』というような商品で、『普段は起こらないが、起こるととても困る事態』に備える時に意義があるのだ。
それは預金やその他金融商品では実現できないからだ。
引受基準緩和型保険は、要するに病気をする確率が高い人が入る保険なわけだが、それなりに保険料が高くなる。
つまり、通常の保険に比べて『高い保険料を払って、高い確率で少ない保険金をもらう』というレバレッジの効いていない保険ということになる。
わざわざ保険で準備する意味がないということだ。
アクサダイレクトが発売した『はいりやすい医療』も基本は全く同じだ。
唯一保険らしい部分は、長期入院時一時金給付特約だ。
これは長期入院という『確率は低いが起きると費用負担が莫大になる』という事態に備えるためのものだ。
この点では『はいりやすい医療』は評価できる。
もしこの特約をつけないのなら、他の雑多な引受基準緩和型保険と変わらないので加入する意味はまるでない。